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役員は労災保険の対象外!? 適用されるケースとは

22.09.13
ビジネス【労働法】
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労災保険とは、業務中や通勤中に発生した労働者の負傷や疾病、障害や死亡に対して、本人や遺族に保険料の給付を行う保険制度です。
正式名称を『労働者災害補償保険』といい、給付は労働者災害補償保険法に基づいて行われます。
労災保険の対象は労働者なので、取締役や監査役、会計参与などの役員は、原則として対象外となりますが、例外的に、労災保険が適用されるケースもあります。
今回は、役員に労災保険が認められる要件について説明します。
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役員が労災保険の適用外になる理由

労災保険は、すべての労働者に適用され、業務・通勤中にケガや病気、障害などを受けた場合に給付が受けられる制度です。
正社員のほかパートやアルバイトにも適用され、派遣社員は派遣元の会社の労災保険が適用されます。
もし、労働者が怪我や病気、または死亡した場合、会社側が労働基準監督署に必要書類を提出することで、労働者や遺族に対して保険料の給付が行われます。
給付には、療養のための費用である『療養補償給付』や、療養中の賃金補償である『休業補償給付』などがありますが、これらの給付を受けられるのは、あくまで労働者だけです。
役員になると、使用者側に回るため、労災保険の適用外になり給付を受けることができません
役員が業務災害によって怪我や病気をしても労災保険はおりないため、治療費は基本的にすべて自己負担になり、休養中の補償もありません。

多くの会社は、賃金を支払う立場にある使用者と、労働の対価として賃金を受け取る労働者で構成されています。
使用者には、労働者の安全を守る義務や、職場環境を保全する義務などがあり、労働災害補償も義務の一つです。
労働基準法26条では、『使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない』と定められています。
しかし、休業が長期に渡ったり、手当が高額になってしまうと、会社の負担が増え、継続的な補償が難しくなってしまいます。
労災保険には、被保険者が労働災害にあった際の会社の負担を減らし、労働者を保護する目的があるため、補償する側である使用者は適用外になるというわけです。

一方で、使用者である役員も、労働者と変わらない労働実態があれば、労災保険の適用が認められることがあります。
たとえば、取締役であっても法令や定款等の規定に基づく業務執行権を持たず、ほかの業務執行権を有する取締役や理事の指揮監督下にある役員は、実質的に労働者とみなされ、労災保険が適用されます。
また、監査役や監事の肩書きがついていても、一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は労働者として扱われます。
逆に、業務執行権を持っていなくても、実質的に業務執行権があると認められる場合は、労働者ではなく使用者として取り扱うことになります。

近年はCEOやCOOの執行役員や、使用人兼務役員など、役員の役職も増えてきており、適用できるかどうか判断が難しくなってきています。
迷った際には、専門家に相談してみましょう。


フリーランス・個人事業主も加入できる『特別加入制度』

さらに、労働者でなくとも、労災保険に加入できる『特別加入制度』があります。
業務の実態や災害の発生状況などから、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種は、この制度によって労災保険に加入することができます

特別加入制度の対象範囲は年々拡大しており、2021年4月には芸能関係作業従事者やアニメーション制作作業従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づき事業を行う者が追加され、同年9月にはITフリーランスと、自転車を使用して貨物運送事業を行う者が追加されました。
2022年4月にはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が、同年7月には歯科技工士が追加されています。
この特別加入制度を使用して労災保険に加入するには、特別加入申請書を労働局長に提出する方法と、労働保険事務組合に労働保険事務を委託する方法があります。
業種によっては、健康診断が必要になる場合があるので、都道府県の労働局や管轄の労働基準監督署に確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年9月現在の法令・情報等に基づいています。