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配置転換に注意が必要な、勤務場所を限定した労働条件とは

22.04.26
ビジネス【労働法】
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昨今では、転勤がなく、同じところで勤務を続ける『地域限定社員』が増えています。
基本的に、従業員の配置転換・転勤については、会社側に大きな裁量権が認められています。
しかし、採用時に「勤務場所を限定する」と取り決めていた場合は、その従業員を勝手に、別の事業所に異動させることができず、従業員の合意が必要になります。
そこで今回は、従業員とのトラブルになりやすい勤務場所を限定した労働条件について解説します。
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勤務地限定の従業員に転勤命令は出せない

使用者である会社側は、原則的に、配置転換を命令する権利が認められています。
命令の有効性は、会社の作成した就業規則や労働契約書などを根拠としており、労働者側はこの命令に従わなければなりません。

ただし、配置転換命令が従業員の生活に著しい不利益を与える場合や、業務上の正当な理由がない場合は、命令が無効になることもあります
たとえば、辞めさせたい従業員に嫌がらせを目的とした配置転換を命じることは、認められていません。

そのほか、従業員と労働契約を結ぶ際に、勤務地の限定に合意していた場合は、本人の同意なく配置転換を命じることはできません
たとえ就業規則に『勤務地を変更する可能性あり』と記載していたとしても、労働契約のほうが優先されるため、やむなく配置転換を命じる場合であっても本人の同意を得る必要があります。

勤務地限定の合意は、口約束でも効力が発生します
トラブルを避けるためにも、会社としてあらかじめ、雇用契約書や労働条件通知書に勤務地限定の約束があるのか、そうでないかの旨を記載しておきましょう。


勤務地限定の合意があったとされるケース

では万一、会社側におぼえがないのに、雇用契約書や労働条件通知書に記載しておらず、従業員から「勤務地限定の合意があった」と主張された場合、どうすればよいのでしょうか。
そのようなときは、それぞれ個別の現状を鑑みて、合意が認められるかどうかを判断します。
各地に支社があり、実際に多くの従業員が転勤命令に従っているなどの事実がある場合は、従業員から「採用時に勤務地限定の合意があった」と主張されても、ただちに合意があったとは認められないことがほとんどです。

また、別のケースとして、現地採用の従業員として採用されたことや、労働契約通知書に勤務場所の記載があったことを根拠に「勤務地限定の合意があった」と申し立てる従業員がいた場合、この訴えは、ほぼ認められることはありません。

労働契約通知書に記載された勤務場所は、雇用された直後の勤務地を指しているだけであり、配置転換を行わないという意味ではないからです。

一方、「勤務地限定の合意がある」とみなされやすいケースとしては、その会社にもともと転勤制度がなく、生活の基盤がその土地に固定されていることを前提とした雇用がなされている場合があります。

勤務地限定の契約をしている従業員を、遠くの事業所に配置転換することはできませんが、一方で、配置転換をしない条件のもとに行なう募集には、いくつかのメリットもあります。
勤務地を限定することで、家庭の事情などで転勤が難しい状況に置かれている優秀な人材を採用できる可能性が増えます
さらに、転勤をきっかけとした離職もないので、長期的な雇用も見込め、より会社を安定した状態で運営していくことができるでしょう。

また、勤務地限定制度を短時間勤務制度などと組み合わせることで、従業員の働き方の自由度も上がり、ワークライフバランスの実現につながります
求人市場においても『転勤無し』は大きなアピールポイントになるのです。

このように地域限定社員には、会社にとっても働く人にとっても、さまざまなメリットがあります。
会社の業態によっては、勤務地を限定した採用を考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。