コーディアル人事労務オフィス

飲食店ならではの『ダイナミック・プライシング』とは?

22.03.01
業種別【飲食業】
dummy
フードロス削減のため、コンビニ大手では時間帯により割引を実施するなど、需要と供給に応じて価格を変える動きが進んでいます。
また、飲食業界でも、シーズンや時間帯によってメニュー料金を変える店舗が登場しつつあります。
このように条件によって商品やサービスの価格を変動させる仕組みのことを、『ダイナミック・プライシング』といいます。
今回は、飲食店が“利益の最大化を図るため”の有効な手段のひとつである、ダイナミック・プライシングについて説明します。
dummy
価格を適宜調整して戦略的に利益を上げる

コンビニやスーパー、衣料品店などの小売業に限らず、航空券やホテルの旅行業など、需給により価格が変更するサービスはさまざまあります。
賞味期限が近づいてきた食品を安く売ったり、人の移動が増えるGWや年末年始に旅行代金の価格を上げたりなど、需要が多い時期かどうかによって、価格設定を変えることは珍しくありません。

この価格戦略は、『動的価格設定』『変動料金制』『価格変動制』などと呼ばれ、ダイナミック・プライシングといいます。

最近では、テレワークの定着を受けて、大都市圏の鉄道会社も曜日や時間帯で変動料金制を取り入れる検証に乗り出しています。
しかし、飲食業界においては実施例が少なく、導入に踏み込むまでの決め手に欠ける部分もあります。
企業にとって“お得なシステム”であるという認識がある一方、顧客満足度を下げるリスクがあることから、安易に取り入れられないというのが現状のようです。

たとえば海外では、『DiscoEat』『eatigo』『delinski』などといった、レストラン専用サイトから予約すると、時間帯に応じて大幅にディスカウントされた料金で食事ができるサービスもあります。
来店する側だけでなく、店舗にとっても仕入れた食材を計画的に消費できたり、混雑タイミングを均等化できたりとさまざまなメリットがあります。
このような仕組みを、自社が利用している予約サイトのシステムに取り入れてみてもよいでしょう。

ただし、ダイナミック・プライシングを導入する場合は、どんなデメリットが考えられるかも事前に想定しておかねばなりません。
当日来店の割合が多い飲食店では、客の多いランチタイムに割高価格を設定したとしても、実際の来店客が少なければ損失が発生してしまいます
また、メニュー数が多い店舗では、すべてのメニューをバラバラに変動させた場合、売上計算も複雑化して手間がかかり、逆に管理コストが上がる可能性もあります
頻繁に価格が変わったり、その振れ幅が大きかったりすると、顧客心理としてリピートしづらくなることも考えられるでしょう。

一方、完全予約制やコースのみを提供する店舗では、予約する時に料金をアナウンスできるため、デメリットをコントロールしやすいといえます。
高い価格設定でも予約によって来店が確定されれば、来店数の少ない日の食材の仕入れ費や人件費を考慮したとしても、トータル的な利益向上につながるかもしれません。


価格変動を応用した“三密回避”で印象UP

『ダイナミック・プライシング』を採用すると、利益向上が見込めるだけでなく、コロナ禍において徹底すべき密状態の回避もできます。

たとえば、11:30~15:00のランチタイムのメニュー料金を

11:30~12:00→1,100円
12:00~13:00→1,300円
13:00~13:30→1,100円
13:30~14:00→1000円

と、時間帯ごとに分けることも考えられます。
「価格が分かりにくい」という意見もあるかもしれませんが、店内座席数を保ったまま、三密を避ける工夫ができるかもしれません。

そもそも座席数が少ない店舗では、コロナ対策とはいえテーブルと座席を減らすことに、経営的側面から抵抗があるかもしれません。
座席数を減らすのではなく、時間ごとの来客数を均一化して、人が薄い時間帯を作らなければ、無駄なく店を回せることになるのです。

さらに、SNSなどを使って価格変動について告知をすることで、割安な値段で自店の料理を食べたい人を誘導するだけでなく、空いていそうな時間に来店したいお客も誘導することができます。

また、ランチタイムなどの食事メニューに価格変動制を用いることが難しい場合は、ドリンクメニューだけ切り替えるという方法もあります。

BARなどでは、17時~19時などでアルコール類が割引になる“ハッピーアワー”を設けている店舗も多いですが、これも一種の『ダイナミック・プライシング』です。
ハッピーアワーは、1920年代アメリカに起源があるといわれ、“需要の少ない時間帯に客を取り込むこと”を目的に始まりました。
それと同じく、アイドルタイムと呼ばれる飲食店における閑散とした時間帯に、ドリンク一杯無料やお代わり自由などのお得なサービスを付加すれば、少しでも利益と回転率を上げることができるのではないでしょうか。
まずは、メニュー全ての価格を変動させるのではなく、利益を上げられる見込みのあるメニューと時間に的を絞ってから、試験的に導入してみてもよいでしょう。

飲食業界では、まだ浸透していないといえる『ダイナミック・プライシング』ですが、今後注目度は高まると予想されます。
安定した集客を狙うために、自店でどんな工夫と取り組みができるのか、考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。