コーディアル人事労務オフィス

腰痛、手荒れ、腱鞘炎 美容師の職業病とその対策

21.10.05
業種別【美容業】
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美容師業は決して楽な仕事ではありません。
ヘアスタイリングに関するクリエイティブなセンスのほかに、技術や、体力も要求されます。
また、一生懸命に働いているうちに、職業病といわれる『腰痛』『手荒れ』『腱鞘炎』などになってしまうこともあります。
このような職業特有の症状は、本人の意識やケアだけでは改善できない場合もあり、退職や転職につながってしまうこともあります。
今回は、美容院経営者が知っておきたい、よくある職業病とその対策についておさらいします。
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スタッフの体力的な“働きやすさ”を守る

美容師なら、立ちっぱなし、薬剤をたくさん使う、ハサミを長時間使う、といった状況は、避けては通れないものでしょう。
身体にとっては負担になりますし、長く働いているうちに慢性的な不調となって現れてしまうこともあります。
こうした、多くの美容師が悩んでいる職業病には、以下のようなものがあります。

●手荒れ・薬剤アレルギー
シャンプーやトリートメントの後、仕上げにスタイリング剤を使った後など何度も手を洗うため、皮膚の水分保持量が減ってしまい、手が乾燥しがちです。
美容師になったばかりの頃は、特に洗髪をする機会が多く、手がカサカサになったり、指先がひび割れたりした人も多かったのではないでしょうか。
さらに、カラーやパーマに使われる薬剤は素肌には刺激が強く、抵抗力が低くなった皮膚に化学的な成分が浸透して、アレルギー症状を引き起こします。
手の皮がむけ、湿疹が出ることが長期間続くと、仕事を長期間休まざるを得ないことにもなるため、なるべく薬剤を触らないようにする、手袋をするといった対策を早めに行う必要があります。

●腰痛
腰痛の原因はさまざまですが、美容師に多い症状といえます。
たとえば、フロアにいる間は、カット以外にも、掃除や消毒、レジ管理などの立ち仕事が多く、座れるのは休憩中のほんの一瞬だけ、という日もあります。
また、カット中は中腰などの不自然な体勢を続けることもあり、背筋の緊張が取れなくなり、血行が悪くなって腰痛を発症してしまうケースも見られます。

腰痛は、放っておくと坐骨神経痛や椎間板ヘルニア等になる場合もありますし、骨格のゆがみが神経系の病気を引き起こすこともあります。
同じ姿勢を続けたあとは、こまめにストレッチをするなど、慢性化しないような対策が大切です。

●腱鞘炎
腱鞘炎も、美容師に多い症状です。
シャンプーやカラーリングでは指や手首に負担がかかりますし、カットでは腕から手先までを細かく動かすため、バネ指や手首痛といった症状になることもあります。
腱鞘炎は、深刻化すると手術が必要になるので、手や腕の使い方を変えるなど、なるべく負担がかからないような工夫をしましょう。

ほかにも、慢性的なむくみや、トイレに行くのを我慢したゆえの膀胱炎、ヘアアイロンやドライヤー等による火傷なども美容師の職業病といえます。
これらのリスクは避けて通れないもののようにも見えますが、適切なケアを推奨したり、休憩の取り方を変えたりすることで改善が可能です。


具体的に何ができるか

せっかく雇った従業員が、職業病のつらさに退職してしまうこともあります。
そんな事態を防ぐためにも、日ごろからしっかり目配りをして、過度の負担がかからないように注意しましょう。
職業病予防のために、一例として次のような対策ができます。

●『カット用スツール』で腰の負担を軽減
腰痛軽減のために、スツールを利用している美容師もいます。
前後左右に動けるキャスター付きのスツールに座れば、カットの際の不自然な姿勢が解消できることもあり、立ちっぱなしの疲労も軽減できるからです。
古くからの考えで「背中を丸めた姿勢が、礼儀としてよくない」という意見もありますし、「美容師は立ったまま体を曲げてカットするもの」と思っている顧客もいるかもしれません。
しかし、座って作業することでお客と同じ目線の高さで接客できますし、立ちっぱなしの疲労や、腰をかがめるなどの負担を軽減できます。

また、襟足まわりのカットをよく見ることができるのも利点でしょう。
仕上がりの確認がよりスムーズになる効果もあります。

●手袋をつける
パーマ液やシャンプーなどに素手で触れ続けていると、手のカサつきが長引いたり、アレルギー症状が重くなったりします。
「美容師が手袋をつけてお客の髪に触れるのは失礼」という考えの人もいますが、やはり、手荒れを防ぐことが優先です。
肌の弱い人はゴムアレルギーを発症する可能性もあるので、プラスチック製のものにするなど、素材を選ぶことも大切です。

●作業導線を改善する
作業導線とは、作業する人や物が移動する際の経路のことです。
経路が短く単純なほど作業能率がアップするため、店舗内の作業導線を見直してみるのも一つの手です。
美容機器の配置やタオルなど備品の収納場所を、互いに邪魔せず、効率的な配置になるように工夫してみましょう。
作業時に負担の少ない作業導線をつくることによって、仕事の効率も高まります。

少しの痛みや疲れでも、スタッフがつらさを訴えてきた時には、我慢させず、しっかりと対策を考えることが大切です。
オーナーが現場に出ない店舗であれば、実際に作業しているスタッフにヒアリングをして改善するなど、今までのやり方を見直すきっかけを作りましょう。
職場をよりよくし、従業員に元気に働いてもらうことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年10月現在の法令・情報等に基づいています。