コーディアル人事労務オフィス

子会社を作るメリットと登記上の注意点とは

21.03.02
業種別【不動産業(登記)】
dummy
会社の経営が軌道に乗り、複数の事業を展開する段階になると、子会社を作ることが視野に入ってきます。
子会社を設立する方法としては、新たな事業を立ち上げるため、別会社を設立したり、既に存在する会社の一部門を別会社として独立させたり、他社の株式を買い取って子会社化させたりといった、様々な方法があります。
では、子会社を作るとどのようなメリットがあるのでしょうか?
また、子会社をつくる手続はどのようになるのでしょうか?
今回は、子会社を作ることのメリット、そして子会社を新規設立する場合の登記手続について解説します。
dummy
子会社を作るメリットとは

親会社と子会社について、会社法では以下のように定義しています。

【親会社】
株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの。
【子会社】
会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社が、その経営を支配している法人として法務省令で定めるもの。

たとえば、A社がB社の株式の過半数を保有している場合、A社が親会社、B社がA社の子会社ということになります。
子会社は親会社とは別の法人となるため、子会社を設立すると、以下のようなメリットが得られます。

●節税につながる
子会社を作り、それぞれの会社の規模・利益を小さくすると、節税につながります。
たとえば、法人税の税率は通常なら23.2%ですが、一定要件を満たす中小企業であれば、課税所得のうち年800万円以下の部分について、15%の税率に減額されます(中小企業者等の法人税率の特例)。

また、資本金1,000万円未満の法人は、会社設立後、最大2年間は消費税が免除されます。
この節税効果は一度きりのものとはいえ、大きなメリットではあります。
ただし、親会社及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者の、基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超える場合は、この制度は適用されないため、注意しましょう。

●フレキシブルな人材配置ができる
役員や役職に就くことができる人数にはどうしても限りがあるため、優秀な人材がいても、長期間ポストが空かず、適切な待遇を用意できないことがあります。
自分の能力に見合わないポジションに長い間置かれることは、モチベーション低下を招きますし、最悪の場合、競合他社にヘッドハンティングされてしまうことも考えられます。
しかし、そういった人材を子会社の役員などに据えられれば、彼らのモチベーションを保つことにつながります。

●経営の自由度が増す
親会社の事業を切り離して子会社を作れば、その事業に特化した経営を自由に行うことができるようになります。
組織が小さくなることで、意思決定のスピードが上がり、社員一人ひとりの責任感が増すことも期待できるでしょう。

もちろんデメリットもあり、親会社と子会社との間で損益通算ができないこと、会社を運営・維持するための費用が別途かかることなどは、踏まえておかなくてはなりません。
また、100%完全支配関係の場合は、グループ法人税制(令和4年4月1日以降はグループ通算制度へ移行)の適用対象となります。


子会社を新規設立する場合の登記手続の流れと注意点

前述のとおり、子会社をつくると言っても様々な方法が存在し、それぞれで手続が異なります。
そこで、以下では、子会社を新しく設立する場合について解説します。
この場合の登記手続の流れは、以下のようになります。

1.会社の目的や役員などの基本的な内容について決定する
2.定款の作成・認証
3.資本金の払込
4.登記申請書類を準備し、登記申請を行う
5.税務署や都道府県税事務所、労働基準監督署などに設立届などを提出する

概ね、個人事業主が法人成りする場合と同様ですが、『親会社が発起人となるとき』には注意すべきことがあります。
通常、会社を設立するときには事業目的を定めなければなりませんが、法人が子会社の発起人になるときには、親会社と子会社の事業目的に少なくとも一つは共通性があることが求められます。

子会社を運営することが、会社の事業目的の範囲内にあることを明確にする趣旨です。
事業目的は定款に記載され、公証人によって定款認証の手続きをすることが必要となりますので、この点を忘れないようにしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。