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消費者の無意識を分析する『ニューロマーケティング』とは?

20.05.26
ビジネス【マーケティング】
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マーケティングにおいてもっとも大切なことの一つに、『消費者の心理を知ること』があります。 
そのためにアンケートやインタビューを実施する企業も多くありますが、統計データはとれても、消費者の本音を引き出すという意味ではむずかしいのが現状です。 
そこで今、大きな注目を集めているのが、脳科学を活用して、消費者が無意識的に行っている消費行動を分析する『ニューロマーケティング』という試みです。 
今回は、その内容と活用方法について考察していきます。
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消費者の行動を予測したマーケティング

商品を売る際には、消費者が何を考え、どのように行動するかを予測することが大切です。
一般的には、そこに市場の状況や経済の動きなどを加味して、販売計画を立てることになります。

しかし、市場や経済は流動的であり、消費者の行動原理もあくまで仮定に過ぎません。
こちらが消費者の行動を予測し、その予測に沿ってマーケティングを行うのが常例といえるでしょう。

そこで近年、ニューロマーケティングという手法が台頭してきました。

ニューロマーケティングとは、いわば消費者の頭の中を見ることができるマーケティング手法といえます。
すでに大学や研究所では研究が進められており、これまでの統計やヒアリング調査などにはない確実性を持つ新たなマーケティング方法として、世界的に注目を浴びています。

ニューロマーケティングが話題となりはじめたのは、2004年、科学雑誌に掲載されたコカ・コーラとペプシコーラの比較実験に関するレポートが発端でした。

実験の内容は、コカ・コーラが好きな被験者に『コカ・コーラ』というブランド名を伏せた場合と伏せなかった場合について飲用中の脳の活動を計測した結果、ブランド名を伏せなかった場合にだけ前頭葉に活発な動きが見られたというもの。このことから、研究者は『ブランドイメージが消費者の行動に影響を与えることがある』と結論づけました。

この実験により、商品の価値がどうあれ、ブランディングや広告によって人の脳に刺激が与えられ、購買意欲に影響を与えることが証明されたのです。


表情筋、皮膚、脳波などからデータを収集

現在では、ニューロマーケティングの研究も進み、より具体的に消費者の脳を可視化する方法が生み出されています。
その一つに、『アイトラッキング』という技術があります。

アイトラッキングとは、消費者の視線がどこに集中しているのかを追う技術で、消費者が無意識的に何を見ているのか、何に興味を持っているのか、という情報を得る方法です。

たとえばこの技術からは、スーパーの棚に並んだ商品について、消費者がどこを重点的に見て、どんなパッケージに興味を引かれているのかがわかります。
これらの情報をもとに、製品の改善や広告の出し方などを考えていけばいいわけです。

また、『fMRI(functional magnetic resonance imaging)』という技術では、実際にMRIを使い、脳の神経活動を可視化することで、意思決定のプロセスを分析することができます。
脳の活動を直接チェックすることで、消費者の無意識的な感情に触れることができるのです。
脳研究に付随する倫理的な問題、コスト面や技術面でもまだまだ問題はありますが、今後のマーケティング活動の中心になるであろうと期待されています。

ほかにも消費者の表情筋から感情を読み取る『表情認識』や、脳波から生体情報を収集する『脳波測定』、皮膚を流れる微弱な電流から感情の変化を分析する『ガルバニック皮膚反応』など、さまざまなニューロマーケティングに関する新しい技術が生まれています。

これらの技術と分析がさらに進めば、消費者自身も気がついていない深層心理をデータ化し、客観的な視点でマーケティング活動を行うことができるでしょう。

実際に日本酒メーカーの白鶴酒造は、インタビューとニューロマーケティングを組み合わせた施策を行っています。
2015年にリニューアルした商品のCMやパッケージを消費者に見てもらい、その際の脳波を測定し、課題を洗い出すことでマーケティングに役立てました。

また、自動車メーカーのボルボでは、消費者にヘッドセットをつけてもらったうえでいくつかの写真を見てもらい、前頭葉の状態を観測。
これによって、どのようなデザインの車が人々の感情に訴えかけるのかを調べました。

ニューロマーケティングを取り入れている企業は増え続けています。
今後、さらに開発が進んでいくであろうニューロマーケティングについて、今から勉強しておくのもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。