コーディアル人事労務オフィス

『同一労働同一賃金』を前に企業が取り組むべきことは?

20.02.10
ビジネス【労働法】
dummy
2020年4月から、いよいよ働き方改革の一つである『同一労働同一賃金』が適用されます(ただし、中小企業は2021年4月から適用)。 
この法律は、同じ企業の中で働く無期雇用の正社員と有期雇用契約者・パートタイマーとの不合理な待遇差を解消するためのものです。 
そのため、各企業は、法改正に備えて賃金や福利厚生などの体制を整える必要があります。 
そこで今回は、改正法の施行を前に企業が取り組むべきことを解説します。
dummy
同じ仕事の正社員と非正社員が同一賃金に

『同一労働同一賃金』とは、その名前の通り、正社員か非正社員(有期契約、パートタイマー)かを問わず、同一の価値のある仕事をしている限り、同じ賃金を支給するという考え方に基づいたものです。
賃金の面だけではなく、休暇や施設利用などの福利厚生、教育訓練を受ける機会、さらには、各種手当なども改善対象となっています。

ここでは、主に賃金について説明しますが、それだけにはとどまらないことを理解しておきましょう。

これまでは、正社員と呼ばれる正規雇用労働者と、いわゆるパートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用労働者の間には、待遇差が存在しました。
しかし、働き方改革の一つである『同一労働同一賃金』では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者が同じ仕事をしている限り、待遇差があるのはおかしいという考え方をベースに、同一の仕事であれば、同一の賃金を払うように定めています。

厚生労働省でも、『同一労働同一賃金』について、『同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです』と説明しています。

『同一労働同一賃金』の施行によって、雇用形態による待遇差がなくなるのは、非正社員にとっては、大きなメリットです。
また、企業側にとっても、非正社員のモチベーションやスキルアップによる業績の向上が期待できるというメリットがあります。
また、なかには、非正社員の待遇が悪いために、働いていなかったという人たちもいます。
制度によって、こうした人たちが労働に参加することで、労働参加率の上昇も期待できるといわれています。
企業側にとっては、人手不足解消になるでしょう。

一方で、企業は正社員と同じ仕事をしている非正社員の賃金をアップしなければいけません。
これによって、人件費の高騰が考えられます。
これは企業にとってはデメリットといえます。
厚生労働省のガイドラインによれば、同一賃金を実現させるために正社員側の賃金を下げて、同一化を図るのは好ましくないとされており、基本的には、非正社員の賃金をアップすることで、待遇差の解消を行うように指導しています。

また、非正社員間で賃金の格差が出てくることが懸念されています。
つまり、これまでは待遇によって賃金に差がついていたのが、これからは仕事内容によって賃金に差がつくことになるわけです。


『同一労働同一賃金』に備えよう
 
まずは、正社員、非正社員にかかわらず、社内の全ての業務内容を洗い出す必要があります。
誰がどんな仕事をしていて、それに見合った対価を得ているのかを明確にしなければなりません。
そのうえで、全社員と洗い出した内容を共有し、同じ仕事をしているにもかかわらず、正社員と非正社員で賃金などに差がある場合は、非正社員の賃金をアップすることで、待遇差の解消を図ります。
また、そのための人件費も確保する必要があります。

まずは業務内容の洗い出しによって、社内にどれくらい待遇差があるのかを可視化したうえで、賃金アップによってどのくらいの人件費が必要なのかを算出します。
そして、算出した金額を金融機関などから調達したり、経費や人件費削減などで抽出したりする必要があります。

また、都道府県労働局では、正社員と非正社員との間の待遇差の解消を行う事業主に対して、『キャリアアップ助成金』を用意しています。

さらに、新設された『働き方改革推進支援センター』では、同一労働同一賃金に取り組む事業主に対して電話相談を受け付けたり、訪問による支援を行ったりしています。
こうしたサポートは無料で利用できます。
何から手をつけていいのかわからなかったり、途中で行き詰まったりした場合は相談してみるとよいでしょう。

さまざまなメリット・デメリットを理解しながら、企業側は『同一労働同一賃金』に備えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。