コーディアル人事労務オフィス

増えるカスタマーハラスメント! 介護事業所がとるべき対応は?

20.02.04
業種別【介護業】
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顧客による従業員への暴言、土下座の強要、インターネット上での誹謗中傷の書き込みなど、過剰で悪質なクレームや迷惑行為を『カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)』といいます。
近年、こうした『カスハラ』が増加し、社会的な問題となっています。
介護・福祉業界も例にもれず、この問題が深刻化しているという報告が相次いでいます。
今回は、介護・福祉業界における『カスハラ』の実態と対策について考えていきましょう。
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利用者やご家族からのハラスメントの実態

厚生労働省が2019年4月に発表した『介護現場におけるハラスメントに関する調査研究 報告書』(株式会社三菱総合研究所)においても、介護施設等に勤務する職員のうち、利用者やその家族から身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどのハラスメント行為を受けた経験がある職員の割合が明らかになっています。
それによると、『利用者から受けたことがある』と回答した職員は、介護老人福祉施設で70.7%と最も多く、次いで認知症対応型通所介護で64.3%。
最も低かった訪問リハビリテーションでも38.8%となっており、サービス種別による差はあるものの、ハラスメント行為を受けたことがある職員は少なくありません。
また、『利用者の家族等から受けたことがある』と回答した職員は、居宅介護施設で29.7%と最も多く、どのサービス種別においても10~30%を占めていました。


具体的なハラスメントの内容とは?

厚生労働省の同調査において、ハラスメントの内容をみると、訪問介護や居宅介護支援などの訪問系サービスでは『精神的暴力』、介護老人福祉施設や小規模多機能型居宅介護などの施設系サービスでは『身体的暴力』が最も多いという結果となっています。
なお、具体的なハラスメントの内容としては、次のような行為があげられています。

(1)身体的暴力
●コップなどを投げつける
●叩かれたり、ひっかかれたりする
●つばを吐かれる

(2)精神的暴力
●怒鳴られる 
●威圧的な態度で文句を言われる
●理不尽な要求をされる
●土下座などの謝罪を強要される
●嫌がらせをされる

(3)セクシュアルハラスメント
●必要もなくさわられる
●服に手を入れられる
●性的な話をされる


職員を守るため、『カスハラ対策』の構築を

このような『カスハラ』が介護現場で横行している原因としては、『認知症などの病気によるもの』、『利用者や家族が介護サービスの範囲を理解していないこと』、『利用者や家族が介護サービスに対して過剰な期待をしていること』などがあげられます。
一番の問題は、実際の行為がハラスメント行為にあたるのかどうかを判断することが非常にむずかしいということです。
その場を収めるために介護職員が我慢せざるを得ないというケースが多くなっている現状があります。

こうしたハラスメント行為が介護職員の大きなストレスとなり、うつ病などの精神疾患に陥ってしまったり、退職に追い込まれてしまったりするケースも増えているため、介護事業所としては早急な対応が必要となります。
具体的な取り組みとしては、まずハラスメント行為を見極められるよう『ハラスメント防止マニュアル』を策定し、管理者や職員に周知徹底することが求められます。
また、利用者や家族に対しては、契約時などにサービスの業務範囲を理解してもらえるように説明を徹底することや、理不尽な要求に対しては介護事業所として拒否する姿勢を示すことが重要になります。

安心できる介護サービスを提供するには、介護職員の力が必要不可欠です。
介護職員の尊厳や心身を守るためにも、介護事業者は利用者や家族からの無理な要求を拒否できるよう『カスハラ対策』を構築し、職場環境を整備することが求められているのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。