車での通勤途上において、配偶者を勤務先に送る途中で起きた負傷は、通勤災害になるのか?
Q. 私は車で通勤していますが、妻の勤務先が私の勤務先の500mほど先にあるので、毎朝妻を勤務先まで送り届けた後に、私の会社に向かっています。
先日妻を送り届けた後、会社に向かう途中に自損事故を起こし負傷してしまいました。
妻の勤務先に行くために迂回しているので通勤災害が認められるか心配です。
A. 多少の迂回であれば合理的な経路とされ、通勤災害になる
通勤災害が認められるには合理的な経路で住居と就業の場所を往復していることが要件になりますが、この合理的な経路は、必ずしも最短距離の経路のみではなく、一般に利用することが考えられる経路であれば合理的な経路として認められます。
奥様の勤務先が同一方向で、質問者様の通勤経路からさほど離れていなければ、奥様の勤務先を経由することは通常行われることであり、合理的な経路であるといえます。
多少の迂回というのが問題になりますが、同じようなケースで1.5km(迂回距離3km)離れた妻の勤務先に妻を迎えにいく(妻の勤務先は自宅とは反対方向)経路上の災害は、合理的な経路とされず、通勤災害と認められなかった事例があります。
また、迂回距離が2.5kmであっても、夫婦共稼ぎのうえ山間部で公共交通機関の利用では始業時刻に間に合わないようなケースでは合理的な経路とした事例があります。
このケースと同様ではありませんが、子供を保育園に送る場合の通勤災害について、行政解釈で「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が、託児所、親戚宅等に子供をあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となる」としています。
ただし、通勤に支障をきたす程度に著しく遠回りであるとか、通勤のタイミングと合わない時間に保育園に向かった場合には、合理的な経路と認められない可能性があります。
同じようなケースで、介護が必要な家族を介護施設に送る場合の通勤災害については、他に介護をする者がいないなど、出勤前に介護施設に送らざるを得ない事情があり、また、経路が著しく遠回りでない場合には、子供を保育園に送る場合と同様に、自宅と介護施設との間の経路についても合理的な経路に該当し通勤災害として認められる傾向にあります。
なお、介護に関しての通勤災害について、仕事を終えて介護のため義父宅に立ち寄り、義父宅から帰宅途中の災害を通勤災害と認めた判例があります。