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相続人が認知症のときの相続不動産の所有権移転登記手続き

18.12.04
業種別【不動産業(登記)】
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厚生労働省が2018年7月に公表した『平成29年 簡易生命表の概況』によれば、日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳と、過去最高を更新。
ますます高齢化が進むなか、高齢者同士の相続も増えてきています。 
そこで問題となってくるのが、相続人のなかに認知症になった人が含まれているケースです。

今回は、認知症の人の相続に関する登記の手続きについてご紹介します。
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認知症の相続人がいると、登記手続きが複雑になる理由は? 

人が亡くなると、その方の財産は相続人が相続します。 
この相続がどのように執り行われるかについては、 

(1)被相続人が遺言書を遺した場合 
(2)遺言書がなく、法定通りの割合で遺産分割を行う場合 
(3)遺言書がなく、相続人全員で話し合って相続財産の割合を決める場合 

の3つのケースに分かれます。 

財産が不動産の場合は、手続きとして相続人に不動産の名義を変更する『所有権移転登記』を行います。 
所有権移転登記には、亡くなられた方の出生から亡くなるまでのすべての戸籍・除籍謄本、相続人の戸籍謄本と住民票、そして話し合いをした内容がわかる遺産分割協議書などを作成し、法務局に登記申請を行う必要があります。 

しかし、相続人の中に認知症の人がいる場合はこの手続きが煩雑になります。 
その理由は、認知症の方には法律行為をするために必要な『意思能力が欠けているからです。 
意思能力が欠けている人は、契約書に署名・押印をすることもできません。
すなわち、相続の際の遺産分割協議に参加することができないのです。 

認知症の相続人がいるとき、この(1)(2)(3)において、登記手続きの方法はどのように変わってくるのでしょうか。 
それぞれ見ていきましょう。 


(1)被相続人が遺言書を遺した場合 

被相続人が遺言書を遺していて、相続人が遺言書の通りに遺産分割を行うときは、相続人のなかに認知症の方がいても、所有権移転登記の手続きは煩雑にはなりません。 
なぜなら、遺産分割協議をする必要がないからです。 
遺産分割協議を行ったうえで不動産の所有権移転登記をするときには、法務局には遺産分割協議書を持って行かなければなりません。 
しかしこの場合は、遺言書を持って行けばよいことになります。 


(2)遺言書がなく、法定相続分の遺産分割協議をする場合 

法定通りの割合で遺産分割協議をするときにも、所有権移転登記手続きは比較的スムーズです。 
このケースでの所有権移転登記手続きの方法は二つあります。 
一つは、認知症の相続人以外の相続人が『保存行為』として認知症の相続人の分まで所有権移転登記手続きを行う方法です。 
もう一つは、認知症の相続人に『成年後見人』を立て、この人が登記移転の手続きを行う方法です。 
ただ、保存行為で所有権移転登記をした場合、認知症の相続人が相続する不動産については登記識別情報が出ません。この点は注意しておきたいところです。 
相続手続き後に不動産を売却しようと考えている場合は、成年後見人を立てて登記手続きを行ったほうがスムーズです。 


(3)遺言書がなく、相続人全員で話し合って相続財産の割合を決める場合 

この場合は、誰がどの財産を相続するのかを遺産分割協議で決めることになるため、認知症の相続人は単独で遺産分割協議に参加することができません。 
そこで成年後見人を立てることになります。 
成年後見人を選ぶときに重要なポイントは「利益相反(りえきそうはん)に当たらないか」ということです。 
たとえば、父親が被相続人、母と娘が相続人のとき、母と娘とでは利益が相反しています。 
もしも娘が母の成年後見人になるのなら、後見人の事務を監督する『後見監督人』、もしくは、さまざまな理由で当事者が本来の権利を行使できない場合にその職務を代わりに行う『特別代理人』を、家庭裁判所に申し立てて選任する必要があります。 
これらの人たちはいずれも被後見人の利益のために動かなければならないため、成年被後見人が分け与えられる相続財産が、法定相続分より低い割合で合意することは認められません。 
この点さえクリアすれば、不動産の所有権移転登記自体には大きな手間はかかりません。