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実は違法だらけ!? 裁量労働制の正しい知識を学ぶ

18.10.29
ビジネス【労働法】
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裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる働き方です。
日本では、マスコミ業界やIT企業、業務が長期間にわたる開発・研究者に適用されることが多いようです。 
しかし、裁量労働制を適法に導入・運用するにはさまざまなハードルが存在します。 
導入する際の注意点と、うまく取り入れることでどのような効果があるのかをみていきましょう。
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裁量労働制のメリット・デメリット


裁量労働制とは、通常の労働時間制度と異なり、労働時間を実際に働いた時間ではなく、労働者と使用者の間の協定で定めた一定の時間だけ働いたとみなす制度です。
労働者側にとっては、ライフスタイルに合わせた働き方ができるというメリットがあります。
給与はみなし労働時間を計算して支給している企業が多いので、必要業務が時間内に終わり早く帰ってしまっても、減額されません。
また、雇用者側にとっては、労使間で1日8時間以内と定めれば、残業代を支給する必要がないため、人件費の管理・削減に大きなメリットがあるとされています。

デメリットとしては、勤務時間が明確でない場合が多く、残業という意識のないまま長時間労働を課せられたり、企業側が実際の勤務時間を把握しきれないなど、オーバーワークになって過労問題が発生するという点があります。
また、みなし労働時間で給与が支給されているため、労使協定で決めた時間を越えて働いても、残業代を支給する必要はありません。


裁量労働制には2種類あった

裁量労働制は、決められた業務にしか適用されず、その業務は、『専門業務型』と『企画業務型』の2種類に分かれます。
『専門業務型』は以下の19種類に限定されます。

(1)新商品・新技術の研究開発や人文化学・自然科学の研究
(2)情報システムの分析または設計
(3)取材・編集
(4)デザイナー
(5)プロデューサー・ディレクター
(6)コピーライター
(7)システムコンサルタント
(8)インテリアコーディネーター
(9)ゲームソフトの創作
(10)証券アナリスト
(11)金融工学の知識を使う金融商品の開発
(12)大学での教授研究
(13)公認会計士
(14)弁護士
(15)一級・二級建築士・木造建築士
(16)不動産鑑定士
(17)弁理士
(18)税理士
(19)中小企業診断士

また、導入するには、会社側と労働組合又は労働者代表との間で、それぞれの業務、その業務に必要な1日のみなし労働時間を定めた労使協定を締結して、これを労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

一方、『企画業務型』は、企画・立案・調査・分析などの業務が対象で、会社の大きなプロジェクトの企画を考えたり、舵取りをしたりするような重要な業務が対象となります。
導入する場合は、使用者や事業所の労働者を代表する者がメンバーに入った労使委員会を設置して、その労使委員会で決めたことを労働基準監督署へ届け出る必要があります。
また、『専門業務型』とは異なり、本人の同意も必要になります。


裁量労働制でも残業代が出る!

裁量労働制を導入していても、残業代が発生するケースがあります。
まず、みなし労働時間が8時間を超えて労使協定が締結された場合は、その超過分の残業代が発生します。
例えば、1日のみなし労働時間を9時間と定めた場合は、1時間分の時間外労働割増賃金が発生することになります。
ただし、この場合で9時間以上、例えば10時間働いたとしても残業代は1時間分になります。

次に、深夜勤務(22時~5時)の時間帯に労働があった場合は、裁量労働制を導入しているか否かにかかわらず、深夜の割増分(時間給の25%増し)の支払いが必要になります。
そして、法定休日に従業員を働かせた場合は、裁量労働制であっても休日手当の割増分(時間給の35%増し)の支払いが必要になります。

裁量労働制は、さまざまな企業で導入されていますが、適法に導入・運用されているケースは多くないといわれています。
従業員との無用な紛争を防ぎ、会社のイメージを守るためにも、導入に際しては、法令に従った適正な手続きを行いましょう。
導入後は、定期的に専門家に相談しながら適切な運用に努めてください。