コーディアル人事労務オフィス

年俸制の平均賃金の計算、賞与は含める? 含めない?

18.09.25
ビジネス【労働法】
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相談内容
社内でパワハラの訴えがあり、調査の結果、加害者と判断された部長・課長に減俸処分を科すことになりました。
当社では、部長は年俸制の対象者ですが、『年俸制の場合、賞与も含めて平均賃金を計算する』という話を聞いた記憶があります。
しかし月給制の課長と比べると、減俸額が大きくなりすぎる気もします。
問題ないのでしょうか?
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結論
年俸制の定義はあいまいなため、年俸制適用労働者の賃金総額の算出には、『毎月払い分と賞与分の合計額』とする場合もあれば、『支払いの合計額から賞与分を除いた額』とする場合もあります。
まずは社内の年俸制に対する取り決めを確認した上で、減俸処分の仕方を考える必要があります。


月給制・年俸制、それぞれの賃金計算の違い

減給の制裁は、1事案について平均賃金の2分の1を上限とします(労基法91条)。
平均賃金は、原則として『発生した日以前3カ月間の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で除して算定』します(同12条1項)。
賃金の総額には、『臨時に支払われた賃金、3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金』などは算入しません(同条4項)。
『3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金』の代表例が、夏冬に支払われる賞与です。
相談のケースでは、課長の平均賃金に関しては、賞与を除き3カ月の給与総額を暦日数で除して平均賃金を計算します。

一方、部長ですが、年俸制適用労働者については『割増賃金および平均賃金の算定方法』を定めた解釈例規が存在します(平12・3・8基収78号)。
ここでは『賞与とは支給額が予め確定されていないものをいう』(昭22・9・13発基17号)という過去の解釈例規を引用しつつ、『年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は“賞与”に該当しない』という考え方を示しています。
これに基づいて考えれば、部長の平均賃金を算定する際は、『毎月払い分と賞与分の合計額』を基準とするという結論になります。


社内での年俸制の規定をもう一度確認

ただし注意が必要なのは、すべての『年俸制』にこの解釈が適用されるわけではない点です。
本来、年俸制というからには、最初に年間の総支払額を決定し、それをたとえば16分割し、各月にはその16分の1、夏冬の賞与時期にそれぞれ16分の2を支払うというケースが多くみられます。
しかし、年俸制には法的な定義がないために、解釈の基準はあいまいなことも多く、『予め年俸額が確定』していない場合もあり得ます。
月払いの金額の12倍を『年俸』として定め、それとは別に査定による変動幅の大きい『業績賞与』を組み合わせるタイプも、広い意味での年俸制と呼ぶことがあります。
このような仕組みを採っている場合は、年俸制対象者の賃金総額の算出は『支払いの合計額から賞与分を除いた額』が基準となります。
まずは会社の『年俸制』が、賞与を支給する形態の場合に、その賞与額が当初から確定しているのか、それとも予定賞与という形態で、評価等によってその金額が変動する可能性があるのかによって異なりますので、どのような規定(仕組み)になっているのか確認してみてください。



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