コーディアル人事労務オフィス

改めて問われる“労働者”の意義

17.11.10
ビジネス【人的資源】
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昨今、フランチャイズ業界で、“加盟店であるフランチャイジーが本部であるフランチャイザーの労働者に当たるのか?”ということが問題となっています。

これを肯定する東京都労働委員会の命令等が出たこともあり、改めて“労働者”の意義を見直す必要があります。

今回はこの点について基本的なことから説明します。
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代表的な判例 

【最判平成8.11.28「個別的労働関係における労働者」】 

■事案 
自己所有のトラックを訴外A社の横浜工場に持ち込むという形態をとっている運転手Xが、同工場の倉庫内で、運送品をトラックに積み込んでいる最中に足を滑らせて転倒し負傷した。Xが労災不支給処分を受け(Y労基署長による)その取消訴訟を提起した事案。 
ポイントは、Xの業務状況及び報酬等の状況。 

① Xの運転業務は全てA社の運送計画に組み込まれ、同社の運送係から指示を受け、これを拒否する自由はなかった。 
②A社→Xへの指示は原則として運送物品、運送先及び納入時刻に限られ、運転経路、出発時刻、運転方法等には及んでいない。 
③毎日の始終業時刻は、A社の運送係から指示される運送先に納入すべき時刻や運送先までの距離等によって決まっていた。しかし、実際の時間的拘束はあるものの、一般従業員ほど厳格ではなかった。 
④運送業務を他人に代替させることは明文で禁止されてはいない。しかし、実際には代替させていない。 
⑤報酬はトラックの積載可能量と運送距離によって定まる運賃表による出来高払であった。 
⑥トラック購入代金、ガソリン代、修理費、運送時の高速道路料金等は全てXが負担した。 
⑦Xへの報酬の支払いに当たっては、所得税の源泉徴収及び社会保険・雇用保険の保険料控除はされず、Xは報酬を事業所得として確定申告していた。 

■判旨 
・労働者性を否定する方向に働く事実 
⑥ 
②(配送という業務の性質上必要とされる運送物品、運送時及び納入時刻の指示しかしておらず、業務遂行上特段の指揮監督がされていない) 
③の後半部分 

→これらをもって、指揮監督関係がないと判断。 
そして、⑦からも、Xが労働基準法上の“労働者”に該当すると解するのを相当とする事情はないとした。 

・労働者性を肯定する方向に働く事実 
専属的かつ①、③(毎日の始終業時刻がA社の運送係から指示される運送先に納入すべき時刻や運送先までの距離等によって“事実上”決定されていること)、⑤の運賃表の運賃が、トラック協会が定めるものより1割5分安いこと等を考慮。 

・結論 
Xは労基法上の“労働者”でなく、労災法上の“労働者”でもないとした。 


労働者性の判断はあくまで客観的 

労働者性が肯定されるか否かの判断は客観的にされます。
当事者がどう思っているかはほとんど関係しません。 

よく問題になるのは、カメラマンやメイクアップアーティスト等自らの負担で機材等を購入している方に請負的な形で依頼するときです。 
例えば、スポットで人を使った時に事故が起きた場合は労災支給をしなければならなくなるかもしれません。
このようなリスクを避けるため、基本的には、時間や場所の指示をし過ぎないよう留意してください。 

また、ある人材を業務に組み込んでしまった結果、その方に諾否の自由がなくなると、労働者と認定され、雇用主には労基法や労災法の規制がかかってきます。
そのため、スポットで使う人材には、ある程度作業手順等につき裁量を与えておくことで、労働時間規制や労災問題のリスクを軽減することが可能です。 

なお、諾否の自由が認められる事案であっても、時間的場所的拘束性が高い映画撮影業務に従事していたカメラマンについては、労働者性が肯定されています(東京高判平成14.7.11)ので、あくまでも総合的に判断されることには注意が必要です。 



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