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顧客情報を守る! 中小企業が知るべき個人情報保護法対策

25.05.13
ビジネス【企業法務】
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改正個人情報保護法により、すべての事業者が個人情報保護法の適用対象となり、中小企業や個人事業主も対応が必須となりました。
近年、個人情報漏洩事件が多発し、企業の信頼を揺るがす重大な問題となっています。
個人情報の適切な取り扱いは、顧客との信頼関係を維持するだけでなく、企業の存続にも関わる重要な課題です。
本記事では、改正個人情報保護法のポイントと、中小企業がすぐに取り組むべき具体的な対策について解説します。

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個人情報保護法の重要ポイント

個人情報保護法は、2005年の全面施行以来、デジタル化の進展や個人情報の利活用の変化に対応するため、これまでに3度の大きな改正が行われてきました。
特に重要な転換点となったのが、2017年の改正です。
それまで「5,000件以上の個人情報を取り扱う事業者」のみが本法の対象でしたが、この改正により取り扱う個人情報の件数にかかわらず、すべての事業者が適用対象となりました。
つまり、小規模な中小企業や個人事業主も例外なく、個人情報保護法を遵守する必要があるのです。

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの、または個人識別符号を含むものを指します。
具体的には、氏名、住所、電話番号、メールアドレスといった基本的な情報に加え、顔認証データ、指紋などの生体情報、購買履歴と紐づいた会員ID、SNSのユーザー名なども個人情報に含まれます。

2020年の改正(2022年施行)では、個人情報の漏洩が発生した場合の対応が厳格化されました。
要配慮個人情報の漏洩、1,000件を超える個人データの漏洩、不正アクセスによる漏洩などが発生した場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられています。
また、個人情報の安全管理措置として、以下の4つの対策が求められています。

(1)組織的安全管理措置:責任者の設置、取扱規程の整備、委託先の監督など
(2)人的安全管理措置:従業員への教育、秘密保持契約の締結など
(3)物理的安全管理措置:入退室管理、盗難防止策、機器・記録媒体等の廃棄など
(4)技術的安全管理措置:アクセス制御、不正アクセス防止、データの暗号化など

漏洩が起きた場合のリスクとしては、信用の失墜による顧客離れや、行政処分(勧告・命令)のほか、命令違反の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性もあります。
加えて、漏洩による損害賠償請求のリスクも考慮する必要があります。

今日からできる! 具体的な対策ステップ

続いて、中小企業がすぐに取り組める個人情報保護対策について解説します。
まず重要なのは、自社の個人情報取り扱い状況を明確に把握することです。
社内の各部門で取得・利用している個人情報を洗い出し、取り扱い種類、取得経路、利用目的、保管場所・方法、保管期間、アクセス権限者などをリスト化しましょう。
この作業により、自社の個人情報の取り扱い状況を「見える化」し、リスクの高い部分を特定できます。

次に、個人情報の漏洩リスクを低減するための安全管理措置を見直しましょう。
組織的対策としては、個人情報保護の責任者と担当者を明確に定め、情報漏洩時の対応手順を文書化します。
人的対策では、従業員への教育・研修の実施や、秘密保持誓約書の取得が効果的です。
物理的対策としては、個人情報を含む書類や記録媒体の保管場所に施錠し、不要データは適切に廃棄します。
技術的対策では、アクセス権限の制限やウイルス対策ソフトの導入を徹底しましょう。

また、自社の個人情報の取り扱い方針や手順を明文化した「個人情報保護規程」の作成も重要です。
すでにある場合は、最新の法改正に対応しているか見直します。
規程には、基本方針、取得・利用・提供ルール、安全管理措置、従業員の役割、委託先管理、本人からの請求対応などを含めるとよいでしょう。

Webサイトやアプリ、店舗などで個人情報を取得する企業は、プライバシーポリシーの整備も欠かせません。
利用目的や第三者提供の有無、開示請求や訂正・削除請求など本人が有する権利、問い合わせ窓口などを明記し、顧客が確認できる場所に掲載します。
さらに、個人情報に関する問い合わせや苦情対応の窓口を設置し、利用者が相談しやすいようにしておくことも重要です。
開示請求や訂正・削除請求の依頼があった場合の対応手順も、事前に決めておきましょう。

最後に、個人情報保護対策は定期的な点検と見直しが必要です。
年に1回程度は、取り扱い状況の変化や安全管理措置の機能性、法改正への対応などを確認し、必要に応じて改善していくことが大切です。

個人情報保護法への対応は、顧客との信頼関係を維持し、事業を守るために不可欠です。
紹介した対策を実施することで、法律違反のリスクを低減し、顧客からの信頼獲得にもつながります。
自社の状況に合わせた取り組みを進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。