一度聞いたら忘れない!?『ソニックブランディング』の効果とは
音を使ったブランディング手法である『ソニックブランディング』が注目を集めています。
近年は広告だけではなく、スマートフォンの起動音や電車の発車メロディー、スーパーマーケットの店内BGMなど、生活に根ざしたかたちでソニックブランディングが広まっています。
こうした音はブランドや企業が意図的に作り出した音であり、ユーザーの感情や行動に影響を与えることを目的としています。
音声技術の進化や音声コンテンツの普及に伴い、重要性が高まりつつあるソニックブランディングについて解説します。
『いつもの音』で親しみを感じさせる
ソニックブランディングとは、音を通じてブランドイメージを構築することで、ユーザーとのエンゲージメントを高めるマーケティング手法です。
たとえば、テレビCMやラジオCMで流れるサウンドロゴやCMソングは、代表的なソニックブランディングの一つです。
短い時間でブランド名をユーザーの記憶に残し、商品やサービスのイメージを印象づける狙いがあります。
ブランドの価値観や個性を音で表現し、顧客の記憶に残すという意味では、店舗のBGMや店内アナウンスも、ソニックブランディングといえます。
よく足を運ぶスーパーマーケットの店内で流れているBGMが、耳から離れないという経験をした人も多いのではないでしょうか。
店舗に合わせた音楽を流すことで、購買意欲を高めたり、滞在時間を長くしたりといった効果があるといわれています。
また、スマートフォンの起動音やアプリの通知音、電子マネーの決済音などもソニックブランディングの活用例です。
製品やサービスの個性を音で表現することにより、ユーザーに対して親しみを持たせることができます。
このようなソニックブランディングが普及した背景には、音楽配信サービスやショート動画など、音声コンテンツの利用の拡大が大きく影響しています。
特にTikTokの世界的な流行は、音声や音楽に対する人々の関心を高めることになりました。
ほかにも、AIによる音声合成技術や3Dオーディオ技術など、音に関するデジタル技術が進化したことで高品質な音を手軽に活用できるようになったのも、ソニックブランディングが広まった一因です。
ブランドイメージ構築に役立つ独自サウンド
印象的なサウンドロゴやブランドミュージックは、一度聞いたら忘れられない効果があり、その結果、ブランドの認知度の向上に一役買います。
その企業ならではの独自の音は競合他社との差別化を図ることにもなり、実際に多くの企業がソニックブランディングに力を注いでいます。
たとえば、Netflixの「ダダーン」というオープニング音や、PayPayの「ペイペイ!」という決済音などは、有名企業によるソニックブランディングの代表例といえるのではないでしょうか。
企業がソニックブランディングに取り組むには、まず自社のブランドイメージを明確にし、そのイメージをどのような音で表現したいかを検討します。
同時に、ターゲット顧客の好みやライフスタイルを分析し、どういった音に共感するのかを考える必要があります。
音の制作には音の専門家や音楽制作会社の協力が欠かせません。
チームで力を合わせながら、ブランドイメージやターゲット顧客に合った音を作り込んでいきましょう。
注意したいのは、ブランドのターゲット層に合わない音楽やサウンドを選ぶと、違和感を与えてしまう可能性があるということです。
たとえば、高級感を打ち出したいのにポップでカジュアルな音を使ってしまうと、ブランドイメージを崩してしまい、ソニックブランディングの効果を得られません。
また、短期的な流行に流されすぎると、数年後には時代遅れになり、ブランドのリブランディングが必要になる可能性もあります。
長く使えるサウンドを考え、時間が経っても効果を発揮するものを選びましょう。
さらに、オリジナルのサウンドを制作するのであれば問題ありませんが、既存の楽曲を使用する場合は著作権や商標権に注意が必要です。
商標に関しては、メロディーやハーモニー、リズムやテンポなど、音楽的要素のみからなるサウンドだけでも「音商標」として、商標の登録が認められています。
ちなみに、音商標はほかの商標権と同じく、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で確認することができます。
音声技術の進化や音声コンテンツの普及に伴い、ソニックブランディングの重要性はますます高まっていきます。
自社でソニックブランディングに取り組む際には、どのような形がふさわしいのか、考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。