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医療機関の倒産が増加! 経営危機に直面する前にやっておきたいこと

25.04.01
業種別【医業】
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ここ数年、病院や診療所の倒産および休廃業が相次ぎ、各医療機関の経営状況はますます厳しさを増しています。
2024年もその傾向は変わらず、多くの医療機関が経営危機に直面しました。
その背景には、医薬材料費の高騰や恒久的な人材不足などがあるとされています。
医療機関の経営者は常に危機感を持ち、経営状況を把握しながら適切な対策を講じなければいけません。
医療機関の倒産が増加している現状を踏まえ、その要因や予兆、倒産を防ぐための方法などについて解説します。

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医療機関の倒産や休業が過去最多を更新

調査会社の調べにより、2024年の医療機関の倒産件数は64件、休廃業・解散が722件だったことがわかりました。
倒産と休廃業・解散の件数はどちらも過去最多を更新し、その数は増加の一途を辿っています。

倒産件数が増えた要因はさまざまですが、なかでも新型コロナウイルス感染症の影響は無視できません。
コロナ禍以降、患者数の減少や感染対策費用の増大により、多くの医療機関が経営難に陥っています。
加えて、コロナ禍で受けた融資の返済が始まり、資金繰りが厳しくなったことも要因の一つとなっています。
医療機関だけではありませんが、コロナ関連融資を受けた企業のうち13%が返済に不安を感じているという調査結果もあります。

また、診療報酬の引下げや算定要件の厳格化による収益の減少、医師や看護師などの人材不足による人件費の高騰、さらに、医薬品や医療材料費の高騰なども、医療機関の経営に深刻な影響を及ぼしています。

地方の医療機関では医師不足や患者数の減少が特に深刻となっており、経営状況は常に厳しい状況にあります。
一方、都市部の医療機関でも、競争激化や人件費の高騰などにより、収益の圧迫が進んでいます。

ただし、厳しい状況に置かれながらも、順調に業績を上げている医療機関もあります。
倒産に至る医療機関では、経営戦略の欠如やコスト管理の不徹底など、経営管理体制の甘さが指摘されるケースもあります。

自力で改善する方法と外部の力を借りる方法

多くの場合、倒産する医療機関には、何かしらの予兆が見られます。
競合する医療機関の増加や患者ニーズの変化などに対応できず、患者数が減少していき、結果として経営危機を招いてしまう医療機関も少なくありません。
借入金の返済や仕入代金の支払いが滞ると倒産も間近になってしまいます。

また、経営状況や労働条件の悪化により、従業員の士気が低下し、スタッフの流出につながるケースもあります。
優秀な医師や看護師の退職は経営不振の証です。
離職率の高い医療機関では、医療の質も低下してしまい、患者離れを引き起こします。

大切なのは、患者数の減少や資金繰りの悪化、スタッフの流出といった予兆が見られたタイミングで、適切な対策を講じることです。
倒産を防ぐためには、そのような予兆が見られた段階で、早急に経営戦略の見直しを行わなければいけません。
経営理念やビジョンを明確にし、病院経営に関する専門家やコンサルタントの意見なども参考にしながら、長期的な経営戦略を策定しましょう。
患者のニーズを把握したうえでの医療サービスの提供はもちろん、競合医院との差別化を図り、独自の強みを打ち出していくことが大切です。

また、資金繰りが悪化しているのであれば、収益の改善も進めていく必要があります。
新規患者の獲得やリピート率の向上のほか、自費診療や予防医療といった新たな収益源の確保も欠かせません。
基本ではありますが、診療報酬の算定漏れを防ぎ、適切な請求を行うことも資金繰りの改善には重要です。
状況によっては、人件費や材料費などのコストを見直し、無駄な支出を削減する必要もあるでしょう。

さらに、経営状況によっては、直接的な対応策が必要になるケースもあります。
たとえば、経営難に陥った医療機関が別の医療法人の支援を受けることで、資金援助や経営ノウハウを提供してもらいながら、立て直しを図るという方法があります。
別の医療法人による支援は、その医療法人のブランド力を活かした集患が可能で、経営の安定化も期待できます。
一方で、医療機関としての独立性が失われ、経営戦略の変更を余儀なくされる可能性もあります。

ほかにも、医療業界に特化した投資ファンドから資金提供を受けて、経営再建を図るというのも方法の一つです。
投資ファンドによる資金提供は、短期間で経営の立て直しが可能で、経営に関するアドバイスを受けられるというメリットがありますが、短期間での収益改善が求められるなど、シビアな面も多々あります。
いずれにせよ外部の力を借りる場合は、慎重な判断が求められます。

医療機関の倒産は患者や地域医療に大きな影響を与えます。
倒産を防ぐためにも常に危機感を持ちながら、経営状況を把握し、適切な対策を講じることが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。