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歯科医師が『歯科恐怖症』の患者に寄り添うには

25.04.01
業種別【歯科医業】
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「歯科恐怖症(デンタルフォビア)」とは、歯科治療に対して強い恐怖や不安を感じる恐怖症の一種で、「歯医者が苦手」というレベルを超え、パニックを引き起こしたり、気絶してしまったりする患者もいます。
公的な調査が行われたわけではないものの、日本では約500万人が歯科恐怖症に該当するともいわれています。
では、歯科医師は歯科恐怖症の患者にどう向き合えばよいのでしょうか。
歯科恐怖症の症状や原因、治療を行う方法や克服に向けた歯科医師によるサポートなどについて解説します。

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歯科恐怖症になってしまう原因とその影響

歯科治療に忌避感を持つ歯科恐怖症は、世界保健機関(WHO)でも恐怖性不安障害の一種に分類されており、人によっては日常生活に支障をきたすほどの強い恐怖を感じる場合もあります。
歯科恐怖症の症状は軽いものから重いものまで人によってさまざまですが、重症であれば「歯科医院の前を通るだけで動悸や吐き気を感じる」「歯科治療中に呼吸困難やパニック発作を起こす」という人もいます。

また、たとえクリニックで定期的に治療を受けていたとしても、「予約日が近づくとなんだか不安を覚える」「治療後もなぜだかしばらく恐怖感が続く」などの症状が現れる人は歯科恐怖症かもしれません。

歯科恐怖症の原因は人によって異なりますが、一般的には過去の歯科治療でのトラウマ体験や、「歯医者は怖い・痛い」というイメージの刷り込みなどが考えられます。
ほかにも、歯科治療に対する知識不足や、閉鎖的な空間での治療に対する不安なども、恐怖感を増幅させる要因となります。
口を開けたまま動けない状況へのストレスや口腔内の状態を見られることへの羞恥心なども、歯科恐怖症になる原因といわれています。

歯科恐怖症の患者は歯科治療を避ける傾向があるため、虫歯や歯周病が悪化しやすく、最終的には歯を失ってしまう可能性もあります。
虫歯や歯周病にもかかわらず歯科治療を受けられないという心理的な負担は、社会生活にも悪影響が出てしまいます。

患者と二人三脚で克服するという姿勢を示す

歯科恐怖症を克服するためには、患者自身の努力も必要ですが、歯科医師側のサポートが必要不可欠です。
では、歯科恐怖症の患者に対して、歯科医師は何ができるのでしょうか。

まずは、来院した患者に歯科恐怖症の傾向があれば、その人の不安や恐怖の原因をしっかりと聞き取りましょう。
話を聞くことで、患者の気持ちを理解し、信頼関係を築くことができます。

歯科医師とのコミュニケーション不足も歯科恐怖症が引き起こされる要因の一つです。
「子どもの頃に歯科医師に叱られた」「治療に関する説明をしてもらえなかった」といった体験により、歯科恐怖症になってしまう人もいます。
特に初診の患者に対しては、治療内容を具体的に説明するなど、丁寧にコミュニケーションを取り、相手に「信頼できる先生だな」と思ってもらうことが大切です。

また、実際に歯科恐怖症の患者を治療する場合は、麻酔や鎮静法などを用いて、治療中の痛みを最小限に抑えるといった方法があります。
クリニックによっては、局部麻酔だけではなく、点滴で薬剤を静脈内投与することにより鎮静状態で治療を行う「静脈内鎮静法」や、笑気ガス(亜酸化窒素)を低濃度の酸素と共に吸入させる「笑気吸入鎮静法」などを導入しているところもあります。

局部麻酔を用いて治療する場合は、「少しでも痛みを感じたら手をあげてくださいね」と優しく伝えましょう。
「治療の邪魔になるから」と、麻酔の効きが甘くても、遠慮して手をあげない患者は少なくありません。
痛みは歯科恐怖症の大きな原因になるので、できるだけ生じさせない工夫が大切です。
そして、こうした声かけは、不安を取り除く一助になります。
治療中は患者に「大丈夫ですよ」「頑張りましょう」などと励まし、治療が終わった後には、「よく頑張りましたね」と褒めてあげましょう。

ほかにも、待合室や診療室の雰囲気を明るくしたり、リラックスできる音楽を流したりするのも効果的ですし、アロマテラピーを取り入れたり、ぬいぐるみや絵本を置いたりするのもおすすめです。

歯科恐怖症の患者は、歯科治療に対して強い不安や恐怖を感じています。
歯科医師として適切にサポートすることで、歯科恐怖症の患者でも安心して治療を受けられるようになります。
信頼関係を築きながら、共に歯科恐怖症を克服するという姿勢を示すことが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。