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廃墟探検に要注意!『軽犯罪法』に抵触するおそれあり

25.03.25
ビジネス【法律豆知識】
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YouTubeなどの動画サイトでは、廃墟になったホテルや旅館、病院や住宅などに侵入した様子を配信する廃墟動画や心霊スポット動画などが人気です。
廃墟探検は非日常感やスリルはもちろん、そこで暮らしていた人の営みを想像したり、放置された建物が朽ちていく様に美しさを感じたりといった楽しみがあります。
しかし、廃墟探検にはさまざまなリスクがあり、許可なく他人の建物の中に入ると、軽犯罪法に抵触してしまう可能性もあります。
廃墟に興味がある人に向けて、廃墟探検の際の法的なリスクについて、解説します。

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ロマンあふれる廃墟探検が不法侵入に?

廃墟には人々の暮らしが刻まれており、朽ちた建物の中を探索することで、その歴史に思いを馳せることができます。
しかし、非日常的な体験が味わえる廃墟探検は、同時にさまざまな危険が伴います。
老朽化した建物はいつ崩壊してもおかしくありません。
実際に廃墟探検中に建物が崩壊して、怪我をしたという事例もあります。
さらに、廃墟には不法侵入者や不審者が潜んでいる可能性もあり、特に人通りの少ない場所にある廃墟は、犯罪の温床となる危険性もあります。

そして、何より廃墟探検の際に注意しなければならないのが、法的なリスクです。
たとえば、誰も住んでいない朽ちた建物でも、個人の所有物である可能性は非常に高く、もし正当な理由なく、無断で他人が所有する建物の中に入ってしまった場合には、刑法第130条に基づき、「建造物侵入罪」が成立します。
また、現在も人が住んでいる場合は、「住居侵入罪」に問われる可能性があります。

利用している形跡のない廃墟であっても、建物の入口が施錠されていたり、立入禁止の表示があったりする場合は、管理されている可能性があるため、立ち入ってはいけません。
建造物侵入罪や住居侵入罪などの不法侵入の刑罰は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられる場合があります。

管理されていない廃墟への侵入は軽犯罪法違反に問われる?

管理されている廃墟がある一方で、所有者の行方がわからず、管理がされていない廃墟もあります。
所有者が亡くなったものの、相続登記がされていない建物や、会社名義の建物だったが会社の倒産・解散により、処理されずに放置されている建物などは、誰も管理していない廃墟だといえます。
では、このような廃墟であれば、勝手に中に入ってもよいのでしょうか。

実は、管理者や所有者がいない廃墟であっても、許可なく侵入すると、軽犯罪法違反に問われてしまうかもしれません。
軽犯罪法とは、社会の迷惑になるような軽微な行為を取り締まるための法律で、廃墟に侵入した者は、軽犯罪法第1条1号に規定されている「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者」に該当する可能性があります。

「看守」とは事実上管理・支配することで、軽犯罪法の規定によれば、施錠されていなかったり、立入禁止の表示がなかったりする建物でも、公的機関からの依頼や業務などの正当な理由がなければ中に入ってはいけないことになります。

もし、廃墟に侵入しているところを近隣の住民に目撃されて通報された場合は、警察官が駆けつけます。
その場合、警察官から職務質問を受けることになることがほとんどでしょう。
このときに、身分を明かさなかったり、反抗的な態度を取ったりした場合、逮捕される可能性があります。
特に、警察官に暴行または脅迫をした場合は「公務執行妨害」で現行犯逮捕されます。
軽犯罪法違反の罰則は、拘留または科料と定められており、拘留は1日以上30日未満の拘留場へ拘置して自由を制限する罰、科料は1,000円以上10,000円未満の金銭罰です。
一方、公務執行妨害は、3年以下の懲役または禁錮、または50万円以下の罰金と、軽犯罪法違反よりもはるかに重い罰則が科せられる可能性があるので、注意しましょう。
また、廃墟に侵入するだけではなく、廃墟内で物を盗んだり、壊したりすると窃盗罪や器物損壊罪に問われることもあります。

このように、廃墟探検は法的なリスクを伴うものですが、所有者の許可を得ている場合や、公共の施設として開放されている場合など、ケースによっては建物の中に入れることもあります。
近年は文化財として登録された廃墟や、オフィシャルツアーを開催している廃墟などもあります。
廃墟探検を体験するのであれば、こうした法的にも問題のない廃墟を選びつつ、安全に配慮し、無理のない範囲で楽しむようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。