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歯科診療報酬改定で示された『う蝕の重症化予防の推進』とは

24.10.01
業種別【歯科医業】
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「令和6年度歯科診療報酬改定」では、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の廃止と新基準への変更や、口腔機能管理の推進などが盛り込まれました。
そのなかの一つである「う蝕の重症化予防の推進」についても、歯科医師は理解を深めておく必要があります。
う蝕の重症化予防の推進とは、予防歯科の観点から、フッ化物歯面塗布処置の見直しを行うと共に、エナメル質初期う蝕および初期の根面う蝕に係る管理料を新設するというものです。
推進の背景と共に、具体的な改定の内容について説明します。

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なぜ高齢者の「う蝕有病率」が上昇しているのか

う蝕(むし歯)に関連する傷病の患者数は、全体的に減少しているものの、一部の年代では増加傾向にあります。
たとえば、65歳~74歳のう蝕有病率は1993年時点で76.9%だったのに対し、2022年には96.6%と大きく増加しました。
さらに、75歳~84歳では1993年時点で54.5%だったのが、2022年には88.4%に、85歳以上では1993年時点で39.4%だったのが、2022年には83.8%と、65歳以上のいずれの年代でも大幅にう蝕有病率が増加していることがわかります。

若い世代のう蝕有病率が下がっているのとは対照的に、高齢者のう蝕が増えているのは、高齢者になっても多くの歯が保たれていることが要因の一つとされています。
「8020運動」などの推進によって、日本では80歳になっても20本以上自分の歯を保っている人の数は2022年の時点で5割を超えているといわれています。
とてもよいことではありますが、昔よりも自分の歯が保たれるようになったことで、全体のむし歯の本数も増えていると考えることができます。

日本は、2007年に65歳以上の人口の割合が全人口の21%を超える「超高齢社会」に突入しました。
高齢化率はさらに上昇し、2040年には65歳以上の人口の割合が約35%に達するといわれており、今後、ますます高齢者のう蝕に関連する傷病の患者数は増えていくことが予想されます。

一方で、歯科診療所の数は増えていません。
1990年時点で5万2,216施設あった歯科診療所は、2010年には6万8,384施設と、20年間で大幅に増加しました。
しかし、近年は増加数が横ばい傾向にあり、2022年時点で6万7,755施設に留まっています。

こうした歯科治療の需要と供給の変化や人口構成の変化、歯科疾患罹患状況の変化などに伴い、従来の歯の形態の回復を主体とした「治療中心型」だけではない歯科治療の必要性が増してきました。

う蝕の重症化予防の推進の具体的な内容

今後は、う蝕や歯周病などの歯科疾患に対する「治療中心型」の歯科治療と共に、歯科疾患の早期発見や重症化予防などを目的とした「治療・管理・連携型」の歯科治療が重要になります。

こうした変化を受けて、「令和6年度歯科診療報酬改定」では「う蝕の重症化予防の推進」が盛り込まれました。
具体的には「フッ化物歯面塗布処置の見直し」と「かかりつけ歯科医機能の評価の見直し」が行われました。

「フッ化物歯面塗布処置の見直し」は、フッ化物歯面塗布処置について、「う蝕多発傾向者」に「歯科訪問診療を行う患者」が追加され、それに伴って、これまでの歯科疾患管理料や歯科特定疾患療養管理料に加え、「歯科訪問診療料」を算定している患者に対しても月1回算定できるようになります。

また、「初期の根面う蝕に罹患している患者」および「エナメル質初期う蝕に罹患している患者」に対して実施する場合の処置の点数も見直されることになります。
初期の根面う蝕に罹患している患者の場合は110点から80点に、エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合は130点から100点に改定されました。
それに伴って、根面う蝕管理料(30点)とエナメル質初期う蝕管理料(30点)が新設され、これらの管理料の算定が、フッ化物歯面塗布処置の「初期の根面う蝕に罹患している患者の場合」と「エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合」の算定要件となりました。

う蝕や歯周病は、歯科診療所で適切な管理を継続的に行えば、重症化を防ぐことができます。
これまで、う蝕は不可逆的に進行するもので、一度なってしまうと回復は困難なものだと考えられてきました。
しかし、初期のう蝕であれば、フッ化物歯面塗布などで再石灰化を促すことで、健全な状態まで回復する可能性があることがわかっています。

う蝕の重症化予防の推進が「令和6年度歯科診療報酬改定」に盛り込まれたことを受け、各歯科診療所では、より一層う蝕や歯周病の重症化予防に力を入れていく必要があります。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。