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『2割』から『3割』へ! インボイスの負担軽減措置が変更&延長

26.04.07
ビジネス【税務・会計】
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2023年10月にスタートしたインボイス制度には、制度の定着などを目的とした負担軽減措置が設けられていました。
売り手側の負担を軽減する「2割特例」と、買い手側の「8割控除」は、本来であれば2026年秋に終了、あるいは縮小される予定でした。
しかし、「2026年度与党税制改正大綱」では、これらの措置が改変されたうえで延長されることが公表されました。
措置が打ち切られるのではなく、期間が延びたことは、多くの事業者にとって朗報といえそうです。
事業者であれば知っておきたい改変の中身や延長の期間などを説明します。

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「2割特例」と「8割控除」をおさらい

インボイス制度(適格請求書保存方式)では、それまで免税事業者だった多くの個人事業主やフリーランス、小規模法人が、取引先からの要請やビジネス上の判断によって、課税事業者へ転換しました。

消費税の納税義務が新たに生じることは、資金繰りに直結する大きな負担となります。
そのため、制度導入にあたっては、急激な環境変化による経済的ダメージを緩和するための「経過措置」がいくつか用意されました。

その一つである「2割特例」は、免税事業者がインボイス登録を行なって課税事業者になった場合、消費税の納税について、売上税額の2割を納めるだけでよいという売り手側の特例です。
通常、消費税の計算は、売上で受け取った税額から仕入れで支払った税額を差し引く「本則課税」や、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を用いる「簡易課税」で行いますが、2割特例はこれらよりも計算がシンプルで、多くのケースで納税額を低く抑えることができました。

また、買い手側(課税事業者)に対しても、免税事業者からの仕入れについて、その税額相当額の8割を控除できる「8割控除」の措置が講じられていました。
インボイス制度の導入後、課税事業者は免税事業者からの仕入れについては、適格請求書が発行されないため、支払った消費税額が控除対象外となりますが、一定の期間までは、仕入税額相当額の8割を仕入の税額として控除できるというものです。

本来であれば、「2割特例」も「8割控除」も時限的な措置で、予定では2026年の秋に大きな節目を迎えるはずでした。

2割特例の適用期間の延長と割合の変更

当初のスケジュールでは、2割特例の適用期限は2023年10月1日から2026年9月30日を含む課税期間までとされていました。
つまり、2026年10月1日からは、特例を適用してきた事業者は「簡易課税」や「本則課税」へと移行し、税負担が増加することが予想されていました。
また、買い手側の8割控除についても、2026年10月1日からは控除率が5割へと縮小される予定であり、免税事業者との取引継続を危ぶむ声もあがっていました。

こうした状況のなか、「2026年度(令和8年度)税制改正大綱」において、近年の物価高騰や小規模事業者の経営環境の厳しさを考慮し、2割特例の廃止や8割控除の縮小を見送ることが示されました。

では、具体的に負担軽減措置はどうなるのでしょうか。

今回の改正の目玉の一つは、個人事業者に限り、2割特例が割合を「3割」に変更されたうえで、さらに2年間延長される点です。
これにより、2027年および2028年に含まれる各課税期間は、売上にかかる消費税の3割を納付する「3割特例」として運用されることになります。

対象となるのは、これまでと同様に免税事業者がインボイス登録を行い課税事業者となっており、かつ基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主です。
すでにインボイス登録をしている事業者はもちろん、これから新たに登録する事業者も対象に含まれます。

8割控除は段階的な割合の引下げを実施

一方、「8割控除」についても、変更が行われました。
税制改正大綱では、当初予定されていた2026年10月からの「5割への縮小」を、より細かな段階を設けるかたちに変更する方針が示されています。

具体的には、現在の「8割控除」が2026年9月30日で終了した後、同年10月1日からは「7割控除」として2年間継続される予定です。
その後、2028年10月1日から2年間が「5割控除」、2030年10月1日からの1年間が「3割控除」と、数年かけて段階的に引き下げられることになります。
最終的に、免税事業者からの仕入れについてまったく控除ができなくなるのは2031年10月1日以降になるというスケジュールです。

この変更は、企業間の取引関係においても大きな意味を持ちます。
買い手側にとっては、コスト増のペースが緩やかになるため、免税事業者の取引先に対して性急な値下げ要求や取引停止を迫る必要性が低くなります。
売り手である免税事業者にとっても、インボイス登録を検討したり、価格転嫁の交渉をしたりするための十分な準備期間が確保されたことになります。

ただし、今回の延長もあくまで時限的なものだと理解して、将来的な事業体制を整備しておくことが重要になります。
たとえば、2割特例を受けている個人事業主であれば、消費税の納税額が3割に上がることでキャッシュフローがどの程度圧迫されるのかを事前に試算しておく必要があります。
特例が終了する時期を理解したうえで、簡易課税制度の届出なども検討しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年4月現在の法令・情報等に基づいています。