KUMA Partners株式会社

会社が所有する『棚卸資産』の種類と評価方法を理解する

26.03.24
ビジネス【税務・会計】
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財務担当者の重要な業務の一つが、「棚卸資産」の管理です。
一般的には「在庫」とも呼ばれる「棚卸資産」ですが、税務会計上はもう少し広い意味を持ち、会社の利益を左右する大切な要素として扱われます。
仕入れた商品も売れるまでは「原価」にならず、会社の「資産」として手元に残り続けます。
この資産が原価に変わるタイミングとルールが、決算書の数字や納める税額に影響を与えます。
会社を運営するうえで押さえておきたい棚卸資産の基礎と、評価方法について解説します。

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「棚卸資産」を正確に把握すべき理由

棚卸資産は、将来的に販売することを目的として一時的に保有している資産のことです。
法人税法上は、仕入れた「商品」や自社で完成させた「製品」はもちろん、製造過程にある「半製品」や「仕掛品」も棚卸資産です。
半製品はそれ自体で販売可能な状態のもの、仕掛品はまだ加工の途中で、そのままでは売れないものを指します。
さらに、製品をつくるための「主要原材料」や、接着剤やネジなどの「補助原材料」、パンフレットや伝票、切手、事務用消耗品などの「貯蔵品」なども、棚卸資産として扱われます。

これらは、会社がキャッシュを支払って手に入れた資産が、一時的にモノの姿になって倉庫に眠っている、いわば「形を変えた現金」だといえます。
この棚卸資産が販売されて初めて、会計上は「売上原価」という原価になり、会社の利益を計算する際のマイナス要素としてカウントされます。

そして、多くの企業では、決算前に保有している棚卸資産の実数を数えて、帳簿上の数と差異がないか照合する「棚卸」を行います。
なぜ手間や時間をかけて棚卸を行い、棚卸資産を正確に記録するのでしょうか。
その最大の理由は、棚卸資産の金額が会社の利益に直結するからです。

会社の売上総利益を計算する式は「売上-売上原価」ですが、この売上原価は「その期に売れた分だけの仕入代金」でなければなりません。
つまり、「期首にあった在庫+今期仕入れた額-期末に残った在庫」という計算式で算出されます。

ここで期末の在庫を間違えて、本来よりも少なく見積もってしまうと、その分だけ「原価(売上原価)」が膨らみ、利益が少なく見えてしまいます。
逆に期末の在庫を多く見積もりすぎると、当期の原価計上が少なくなり利益が余計に計上され、税負担が増えてしまうことになります。

このように、棚卸資産は損益計算を正しく行う役割を果たしているため、税務署も非常に厳しくチェックする項目となっています。
正確な棚卸は、自社の正確な収益力を把握するのはもちろん、適正な納税のためにも欠かせない作業といえます。

棚卸資産における2つの評価方法

棚卸資産の実数を数えたら、次はその価値を算定しなければいけません。
評価方法には、大きく分けて「原価法」と「低価法」の2つがあります。

「原価法」は、仕入れた時の価格をベースに評価する方法で、さらに以下の6つの計算手法に分かれます。

最終仕入原価法
期末に最も近い時期に仕入れた単価をすべての在庫に適用する方法で、税法上の「法定評価方法(届け出がない場合に適用される方法)」となっています。

個別法
一つひとつの商品に対して、実際に仕入れたときの価格を紐付ける方法で、宝石や不動産など、個別性が高いものに適しています。

先入先出法
古いものから順に売れていくと仮定して計算する方法で、実際のモノの流れに近いという特徴があります。

総平均法
期中の仕入総額を総数量で割って平均単価を出す方法で、計算は楽ですが、期末にならないと単価が確定しません。

移動平均法
仕入れるたびにその都度平均単価を出し直す方法で、常に最新の原価が把握できるものの、計算の手間がかかります。

売価還元法
売価に一定の原価率を掛けて算出する方法で、取扱商品が多岐にわたる小売業などで採用されています。

一方、「低価法」は、原価法で出した価格と、期末時点の時価(売り値)を比べ、どちらか「低い方」を採用する方法です。
流行遅れや劣化で価値が下がった場合に、早めに損失を計上できるというメリットがあります。

こうした棚卸資産の評価で最も注意すべきは、一度決めた評価方法は「継続して使い続ける」ということです。
利益が出そうだからといって、勝手に計算方法を変えることはできません。
評価方法を変更したい場合は、新しい事業年度が始まる前日までに、税務署へ届出書を提出する必要があります。

棚卸資産の評価一つで、決算書の内容が変わり、納める税金の額も変動します。
「自社に最適な評価方法」や「棚卸のやり方」などを定期的に見直すことは、健全な財務体質を築くための礎になります。
在庫管理をただの事務作業と考えるのではなく、経営戦略の重要な一部としてとらえ直してみましょう。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。