KUMA Partners株式会社

個人開業医でも設立が可能!『MS法人』のできること

26.02.03
業種別【医業】
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クリニックを運営するうえで、「経営の多角化」を考える院長は少なくありません。
しかし、医療法人は非営利性が求められるため、一般企業のように自由に事業を展開することがむずかしいという側面があります。
そこで注目したいのが「MS法人(メディカル・サービス法人)」という形態です。
「MS法人」とは、医療機関のパートナーとして機能する一般法人のことを指します。
医療法人化していない個人開業医でも設立が可能であり、経営の自由度を高めるMS法人について、その仕組みやメリット、注意点などを解説します。

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医療経営を支える「MS法人」という選択肢

「Medical Service(メディカル・サービス)法人」の略である「MS法人」は、法律で独自の法人格が定められているわけではありません。
株式会社や合同会社として設立された一般法人のうち、医療機関と業務提携を行い、医療経営をサポートする業務を主に行う法人を指します。

医療法や医師法の下で運営される医療法人は、業務範囲が「医業」および「附帯業務」に厳格に限定されています。
たとえば、不動産投資を行なったり、営利目的でサプリメントの物販を大規模に行なったりすることは原則として認められていません。

一方で、MS法人は一般の会社と同じ扱いであるため、法人それ自体は医療法の規制を受けません。
そのため、医療法人本体では手がけられない業務をMS法人が請け負うことが可能になります。
具体的には、診療所の土地・建物の賃貸管理、医療機器のリース、リネンサプライ、院内の清掃業務、さらには窓口業務の委託や、給食業務、レセプト請求事務の代行などがあげられます。
つまり、医療行為そのものは医療法人で行い、それ以外の経営・管理・雑務といった間接部門をMS法人が担うという形を作ることで、機能を明確に分けることができるということです。

開業医がMS法人を開設するメリットとデメリット

個人開業医や医療法人の理事長が、あえて別の法人を立ち上げるメリットはどこにあるのでしょうか。
最大のポイントは「所得の分散」と「事業の多角化」による経営基盤の強化にあります。

個人の開業医として高収益を上げている場合、医師個人の所得税率は累進課税により高くなる傾向があります。
ここでMS法人を設立し、配偶者や親族を役員に就任させ、診療所からMS法人へ業務委託費を支払う形をとれば、診療所側では費用を経費計上できるため所得を圧縮できます。
その一方で、MS法人側では家族に役員報酬を支払うことにより、世帯全体としての所得税負担を平準化できる可能性があります。
もちろん、法人税率と所得税率の差を利用した税負担の調整余地も期待できます。

ただし、「税務否認リスク」には注意する必要があります。
診療所とMS法人の間でやり取りされる「業務委託費」や「賃料」などの金額設定は、あくまで「適正価格」でなければなりません。
利益を移したいからといって、相場よりも著しく高い賃料をMS法人に支払ったり、実態のない業務に対して委託費を支払ったりすることは、税法上問題となりうる場合があります。

また、法人が増えるということは、それだけランニングコストも増えるということです。
法人設立費用に加え、赤字であっても発生する法人住民税の均等割、社会保険の加入義務、二つの法人分の決算を行うための税理士報酬などが発生します。
節税効果よりも維持コストが上回らないよう、収益規模に見合ったタイミングでの設立を考えなければいけません。

その他、医療機関は消費税の非課税取引が多いのに対し、MS法人の売上は基本的に課税取引になりやすいため、消費税の納税義務についてもシミュレーションしておく必要があります。

医療経営に強い専門家のサポートが成功のカギ

節税効果のほかに、事業の自由度もMS法人を立ち上げるメリットの一つです。
前述の通り、医療機関では制限される「営利事業」が可能になります。
たとえば、患者向けに開発したオリジナルの化粧品や健康食品の販売、あるいは介護施設の運営や、将来的な不動産運用の受け皿として活用するなど、医療以外の収益の柱をつくることができます。

重要なのは、医療と経営の境界線を明確にし、第三者が見ても合理的な取引関係を構築することです。
そのためには、医療業界特有の税務や法務に精通した専門家のサポートが不可欠となります。
設立から運営までをトータルでアドバイスできるパートナーを見つけることが、MS法人運営を成功させる大きなカギといえます。

MS法人の運用には透明性と適法性が強く求められ、安易な設立は税務リスクを招くことにもなりかねません。
もし、MS法人の立ち上げを考えているのであれば、まずは医療経営に強い専門家へ相談してみることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2026年2月現在の法令・情報等に基づいています。