社会保険労務士法人村松事務所

飲食店の経営者が知っておくべき経費と税金の知識について

20.12.01
業種別【飲食業】
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飲食店を経営していると、経理作業の際にさまざまな疑問が生まれることもあるでしょう。
飲食店では個人営業と法人営業で課せられる税金の種類が違います。
さらに、まかないの税務上の取扱いや軽減税率の適用範囲など、細かいルールも色々と存在しているので、経理作業にあたって、これらをおさらいしておいても損はありません。
ここでは、飲食店にまつわる税金の基本について、確認していきます。
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個人と法人で、かかる税金の種類が違う

飲食店の所得にかかってくる税金は、個人と法人で種類が違います。

【個人事業主の場合】
●所得税・復興特別所得税
●個人住民税
●個人事業税

【法人企業の場合】
●法人税
●地方法人税
●法人住民税
●法人事業税

以上のような種類があります。
そのほか、個人・法人どちらも課税事業者に該当する場合には消費税がかかり、不動産関係や金銭の貸し借りの契約書、5万円以上の売上代金の領収書などの課税文書に対しては、印紙税が課税されます。
また、土地や家屋、償却資産を保有する場合の固定資産税の負担や、さらに、従業員に給与を支払うときには、源泉徴収を行う義務が生じます。

ほかにも、税金や許認可の申請手数料など、飲食店の経営においてはさまざまな細かい税金があるので、注意が必要です。


意外と知られていない経費の常識

もう一つ、押さえておきたいのが、経費についての常識です。
よく『経費で落とす』というフレーズを耳にしますが、経営側にとって経費とは、『増えると、差し引きで所得額が少なくなるので、課税額が減る』という出費です。
仮に、1年間で1,000万円の売上があり、100万円の利益になったとします。
この場合、利益の100万円が丸ごと所得になったと仮定すると、法人税が約30%課税されるので、約30万円を納税することになります。
一方、備品などで経費20万円を使った場合には、経費が増えて920万円となり、所得は80万円となるので、法人税は約24万円です。
このように、事業に必要なものを20万円分購入することで、感覚的には6万円の節税になります。

では、飲食業で計上できる経費は、細かく見ていくと、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的には

●食材、商品などの仕入代金
●事業税、収入印紙、固定資産税などの租税公課
●商品の発送などで梱包に使用した段ボールや、運送費などの荷造運賃
●水道料金、電気料金、ガス代などの水道光熱費
●広告やWebページなどの作成費用にかかる広告宣伝費
●損害保険料
●店舗や、配達車両の車検代などの維持のための一定の修繕費
●清掃用品やトイレットペーパー、割りばしなどの消耗品費
●什器などの固定資産の減価償却費
●事業主が負担した従業員の社会保険料や保健衛生関連費用などの福利厚生費
●従業員の給料賃金
●借入金の利子割引料
●店舗家賃や駐車場代などの地代家賃
●店内で流すBGMの有線契約料など、ほかの経費項目に該当しない雑費
●個人事業者で、生計一の親族が専ら事業に従事している場合、青色事業専従者に支払った一定の給与・賞与、または、事業専従者控除額

などがあたります。

ちなみに、従業員に『まかない』を提供している事業者も存在しますが、このまかない代は、金銭以外で支払われる『現物給与(つまり給与の一部)』であり、源泉所得税の課税対象となります。
ただし、これを福利厚生費(経費)とすることも可能です。
その条件とは、食事の価格の半分以上を役員または従業員自身が負担していて、経営側の負担が月3,500円(税抜)以下であることです。
条件を満たさないと給与となり源泉所得税の課税対象になりますので、気をつけましょう。


テイクアウトで適用される軽減税率について

2019年10月1日より消費税率が10%に引き上げられましたが、一部の軽減税率の対象品目では8%の据え置きとなっています。
飲食店では、テイクアウトや宅配が対象となり、また、有料老人ホームなどで提供される飲食料品のうち一定の基準を満たすものがその対象です。
一方で、店の敷地内で飲食する場合や、ケータリング、酒の販売には消費税率10%が適用されるなど、ボーダーラインは意外と複雑になっています。

軽減税率が適用される食品は、あくまで食品表示法で『食品』とされているもので、その規定の範囲内であれば軽減税率対象となります。
しかし、一部の栄養ドリンクが含まれる『医薬部外品』は、それに該当しないため、店内で販売しているペットボトルの清涼飲料は税率8%でも、栄養ドリンクは税率10%だったということもあり得ます。

また、酒類の消費税率は原則10%となっていますが、商品名にアルコールと付く飲み物やカクテルでも、アルコール度数が1%未満であれば、酒類に分類されず、軽減税率の対象となります。
仮に、バーがテイクアウトで、アルコール度数が0.9%のカクテルAと、1.1%のカクテルBを販売していたならば、味覚では区別ができなくても、Aは8%、Bは10%の消費税がかかってくるのです。

また、店内で食事をして、残った料理をパックに移して持ち帰る場合は、料理に関しては軽減税率の対象とはなりません
しかし、パック詰めされた料理の販売はテイクアウト商品とみなされるため、税率8%となります。
もし、店内で飲食をし、それとは別に持ち帰り用の注文も受けていた場合には、店内での飲食代は10%、持ち帰り商品は8%の消費税を加算することになります。

少々特殊な例ですが、最近ではペット同伴可能な飲食店もあり、ペットフードを提供している飲食店もあります。
材料費となる食料品は8%ですが、家畜飼料やペットフードなど、人の食用ではないものについては、一律10%の税金がかかるため、会計の際には注意が必要です。

このように、飲食店の経費の扱いや税率には、さまざまな決まりごとがあります。
正しく申告するためにも、正しく理解していることが大切です。


※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。