社会保険労務士法人村松事務所

ハラスメント対策を法制化!『女性活躍・ハラスメント規制法』とは

20.08.25
ビジネス【労働法】
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職場におけるパワハラやセクハラの根絶を目的とした『女性活躍・ハラスメント規制法』(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律)の施行に伴い、2020年6月1日から、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました。
これにより、企業にはハラスメント対策の推進が義務づけられます。
今回は、改正法のポイントとともに企業が行うべき対策について考えてみましょう。
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増加傾向にある職場のハラスメント

近年、ハラスメントに関する相談件数は増加傾向にあります。
厚生労働省が2020年7月に公表した『令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況』によると、民事上の個別労働紛争の相談件数(27万9,210件)のうち、職場の『いじめ・嫌がらせ』に関するものは8万7,570件(前年度比5.8%増)と過去最高を記録しました。

陰湿なパワハラやセクハラによって退職に追い込まれる人も多く、対策が急務とされています。
このような背景を鑑みて成立したのが、女性活躍の推進拡大やハラスメント対策の強化を柱とする『女性活躍・ハラスメント規制法』です。
これにより、2020年6月1日から、事業主にハラスメント防止措置を講ずることが義務づけられました

ただし、中小企業については当面は努力義務とし、2022年4月1日から義務化されます。
この規制法では、『職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進』(ハラスメント対策)が明記されています。
つまり、これまでは“社会のルール”として禁止されていたハラスメントを、初めて法律で明確に禁止した形となります。
現時点ではハラスメント対策を怠った企業への罰則規定などはありませんが、労働局が対象企業への是正勧告ができるようになったほか、勧告に従わず、改善が見られない場合には企業名を公表できるようになりました。


企業に対して義務づけられること

この規制法においては、企業に対して以下の措置義務が制定されています。

●事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
職場におけるハラスメントについて、その内容を明確に線引きし、禁止することを労働者に周知します。
また、ハラスメントを行った従業員を厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定し、労働者に周知します。
具体的には、ハラスメントに該当する言動と処分の内容を直接対応させた懲戒規定を定めることなどがあげられます。

●相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
ハラスメントの相談窓口を設け、労働者に周知しなくてはなりません。
また、相談窓口担当者が、相談に対して適切に対応できるようにすることも重要です。
相談窓口については、社内に担当者を定めるほか、外部の機関に対応を委託するなどの方法も考えられます。

●事後の迅速かつ適切な対応
ハラスメントがどのように行われたのか、事実関係を調査し、再発防止に向けた措置をとることが求められます。
事実が確認できた場合には、行為者に対して適正な措置を行う必要がありますし、ハラスメント被害者・行為者のプライバシー保護も考えていかなくてはなりません。
ほかにも、社内の人間だけではなく、社外の労働者からハラスメントを受けた場合や、逆に社外の労働者にハラスメントを行った場合の対応についても、明確化が求められます。
さらに、従業員が事業者にハラスメントに関する相談をしたことなどを理由とする解雇や懲戒処分などの不利益な取り扱いを禁止しています。


どのような行為がハラスメントにあたる?

では、いったいどのような行為や言動が『ハラスメント』に該当するのでしょうか。
厚生労働省は現在、以下のような『ハラスメントの類型と種類』を公表しています。
現状では、これらの事例を参考に適切な対応を取ることになりますが、2020年内には『ハラスメントの類型と種類』に基づく指針が発表される予定であり、発表後は、その指針も踏まえてハラスメント対策を推進していくことになります。

【パワハラ】
●殴打、足蹴り、物を投げつけるなどの『身体的な攻撃』
●人格否定や必要以上の厳しい叱責などの『精神的な攻撃』
●特定の人間を業務から外したり、別室に隔離したりする『人間関係からの切り離し』
●必要な教育を行わないまま達成できないレベルの業績目標を課す『過大な要求』
●退職させることを目的に仕事を与えない、簡単な雑務を行わせるなどの『過小な要求』
●職場外での監視や拘束、本人の了解を得ずに個人情報を暴露する『個の侵害』

【セクハラ】
●事業者や上司から性的な関係を要求され、それを拒否したことで解雇などの不利益を被る『対価型セクシュアルハラスメント』
●職場内で男性社員から体を触られたりするなどの『環境型セクシュアルハラスメント』

【マタハラ】
●出産・育児・介護に関連する制度利用を阻害する『制度等の利用への嫌がらせ』
●出産・育児による就労環境を害する『状態への嫌がらせ』

これらはハラスメントのなかでもあくまで代表的な事例というだけで、ほかにも状況に応じて多様なケースが考えられます。
企業は個別の事案について、さまざまな要素を総合的に考慮して、適切な対応を取らなくてはなりません。
従業員全員がいきいきと働くためにも、事業主が『女性活躍・ハラスメント規制法』の中身を理解し、遵守していくことは不可欠です。
ハラスメントが起きた際の対応策はもちろん、どうしたらハラスメントが起きないかを考え、防止のための取り組みを実践していきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。