社会保険労務士法人村松事務所

違反すれば罰則も! 知っておきたい歯科医師法

19.12.03
業種別【歯科医業】
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医師と歯科医師では、医療行為を行うことができる範囲や内容が異なっています。
両者の業務の範囲や義務は、法律によって定められています。
そのことを理解していないと、医師法違反や歯科医師法違反で罰則を受けることにもなりかねません。
そこで今回は、歯科医師法のなかで歯科医師が押さえておきたい部分をピックアップしてご紹介します。
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歯科医師法における歯科医師の義務

歯科医師が患者に対して行うことができる業務の範囲や内容について定めている『歯科医師法』では、歯科医師の義務について次のように書かれています(第19条~23条)。

(1)診療や治療について、正当な理由なく拒むことができない(応招義務)
(2)診療後に診断書の交付を求められた場合、正当な理由なく拒むことができない
(3)自分が診療せずに治療をしたり、診断書や処方箋を交付したりしてはならない
(4)治療する上で薬剤の投与が必要だと判断したときには、原則として処方箋を交付しなければならない
(5)診療した患者本人、または家族に対して療養方法などを指導しなければならない
(6)診療したときは診療録に記載しなければならない

また、刑法では守秘義務が課されているほか、個人情報保護法によってカルテの開示義務についても定められています。

もしも歯科医師法に違反してしまったら、違反した歯科医には罰則が科されることがあります。
特に無免許で歯科医業をした場合には3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科され、さらに無免許にもかかわらず歯科医師と名乗ったような場合には、3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科されます(第29条)。
また、自分が診療せずに治療や診断書の交付を行った場合や、カルテの記載や保管を怠ると、50万円以下の罰金が科されます(第31条の2第1項)。


悪質クレーマーに対する治療の義務

歯科医師の義務のなかで問題になりやすいのが(1)の『応招義務』です。
歯科医師法によれば、診療や治療を求められたら正当な理由がない限り拒めないとされています(第19条1項)。
では、悪質なクレーマーに対して治療を拒むことはできるのでしょうか。
その場合『正当な理由』が何を表すのかが問題となります。

厚生労働省は、正当な理由について『それぞれの具体的な場合において、社会通念上健全と認められる道徳的な判断によるべき』という見解を取っています。
クレームの内容が正当で常識の範囲内であれば、クレームがあることを理由に診療を拒むことは難しいといえるでしょう。
その一方で、近年問題視されているような『土下座を強要する』『言いがかりをつける』『執拗にクレームを繰り返す』などのモンスタークレーマーに対しては、その行為を理由に診療を拒むことができる可能性があります。


歯科医師はどこまで医療行為を行える?

口に起きる疾患は虫歯や歯周病などに留まりません。
口の中にできたガンや口の付近にまで及んだ骨折などは、歯科医師として治療してもよいのでしょうか。
1996年に行われた『歯科口腔外科に関する検討会』では、歯科口腔外科の診療領域として以下のようにとりまとめられました。

・歯科口腔外科の診察領域
標榜診療科としての歯科口腔外科の診療領域の対象は、原則として口唇、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前3分の2、口腔底、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部位とする。

・歯科口腔外科の診療領域における歯科と医科との協力関係
『歯科口腔外科の診療の対象は口腔における歯科疾患が対象となるが、特に、悪性腫瘍の治療、口腔領域以外の組織を用いた口腔の部分への移植、その他治療上全身的管理を要する患者の治療に当たっては、治療に当たる歯科医師は適切に医師と連携をとる必要がある。』(第2回『歯科口腔外科に関する検討会』議事要旨より引用)

口の中にできているがんの治療、さらに口の中を原発とするがんについては医師との連携が不可欠という見解を取り、口からほかの部位に転移したがんについては歯科医師の業務範囲外という見解を取っていることになります。

日々業務を行っていると、つい認識が甘くなってしまうこともあります。
この機会に、改めて確認してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。