社会保険労務士法人村松事務所

不動産の贈与と相続、何が違う? 登記にかかるコストもチェック!

19.06.04
業種別【不動産業(登記)】
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親から子どもに不動産を譲り渡す方法には、相続や生前贈与、遺贈などがあります。
いずれにしても気になるのが、“どの方法が最も節税対策になるのか”という点ではないでしょうか。
そこで今回は、相続と贈与の違いにスポットを当て、どちらのほうがお得で活用しやすいのかについてご紹介します。
また、不動産の譲り渡しには不可欠な“登記にかかる費用”についても解説します。
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不動産の贈与と相続、どちらがお得? 

・配偶者に自宅を残したい場合 
相続を考えるときによくあるのが、残された配偶者に自宅不動産を残そうというケースです。 
この場合、贈与税の配偶者控除(夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除)は、婚姻期間が20年以上であれば、暦年贈与の110万円の控除のほかに最高2,000万円まで控除が可能になります。 

一方、相続税の配偶者控除は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までの財産について、不動産に限らず相続税はかかりません。 
また、相続の場合は『小規模宅地の特例』を使うことができます。 
『小規模宅地の特例』とは、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合に評価額を減額するという特例です。
これにより、自宅土地の評価額は20%にまで縮小されます。 

・子どもたちが家を買うときにサポートしたい場合 
子どもたちがこれから家を建てる、家を買う際に資金面でサポートする方法としては、“両親から資金を贈与する方法”と、“両親名義で家を建てておき相続のときに譲り渡す方法”の二つがあります。 

前者の資金贈与の方法で、子どもたちの名義で登記をしておけば、相続時に両親から登記名義を移転する必要はありません。 
また、要件を満たせば『住宅取得等資金贈与の特例』の適用を受けることもできます。
『住宅取得等資金贈与の特例』とは、父母や祖父母など直系尊属からの贈与が、家の新築・購入・増改築などのための資金であったときに、その一部の贈与税が非課税になる制度のことで、適用を受けられれば、最大で3,000万円の贈与が非課税になります。 

では、後者のように“自宅不動産を子どもに譲り渡したい”というときにはどうなるのでしょうか。 
生前贈与の場合、『相続時精算課税の制度』を活用すれば、贈与額の総額から2,500万円までが非課税となりますが、贈与者が死亡し相続税を計算する際に、贈与した財産を加算して相続税を計算します。 
注意したいのは、適用の届出を税務署に提出した場合、以降は暦年贈与への変更ができない点です。 

また、このとき気にしておきたいのが、不動産の取得にかかる費用です。 


不動産を取得するときにかかる費用 

・登録免許税 
相続や贈与で不動産を譲り受け、登記をする際には『登録免許税』がかかります。 
土地および建物の所有権の移転登記については、相続の場合は『不動産の価格の4/1,000』ですが、贈与の場合は『20/1,000』となっています。 
単純に計算すると、もしも3,000万円の土地を登記するとした場合、相続では12万円で済みますが、贈与となると60万円がかかってしまうことになります。 

・不動産取得税 
不動産を取得したときには『不動産取得税』が発生します(税率は3~4%)。 
ただし、この税金は相続のときには発生しません。 

これらを考えると、不動産を取得するときのコストは贈与よりも相続のほうが低いことがわかります。 


相続を贈与と間違われないように注意 

さらに、不動産を相続、贈与する際には法務局で『所有権移転登記』を行うことになりますが、この登記の方法にも注意が必要です。 
たとえば、遺産分割協議がまとまるのに時間がかかりそうだということで、まず法定相続割合通りに登記をしておき、その後遺産分割協議に従って登記をし直すこともあるでしょう。 
しかし、この方法は税務署から“贈与”とみなされてしまう恐れがあります。 

遺産分割協議がまとまれば不動産の所有者が確定し、それから正しい登記をしたのだから問題ないようにも思えます。 
しかし、遺産分割協議後に再分割が行われた場合、相続による所有権移転が終わった後で再分割しているため、税務署に“贈与”として取り扱われてしまうことがあり、そうなると贈与税がかかる可能性が高くなってしまうのです。 
できるだけ無用な課税をされないよう、専門家に相談しておくべき事案だといえるでしょう。 

不動産を家族に譲り渡したいとき、贈与税や相続税のほかに押さえておきたいのが、相続と贈与の“登記費用の違い”です。 
税金の差にばかり目が行きがちですが、不動産の譲り渡しには登記の問題もついてきます。 
ぜひこの機会に、不動産の登記についても理解を深めてみてはいかがでしょうか。 


※本記事の記載内容は、2019年6月現在の法令・情報等に基づいています。