社会保険労務士法人村松事務所

「組織原則が組織運営の問題を解決する」編

19.01.28
ミニコラム
<部下指導はチャレンジの原則>

日本では欧米とは異なり、社員がマネジメントをできるかどうかを確認して
中堅職にステップアップさせることは基本的にはありません。経営者は、
一般職層を卒業した社員を中堅職にステップアップさせ、活躍してもらう
ことを期待します。

つまり、一般職層でプレーヤーとして自分で仕事をして成果を上げて一般職
層を卒業し、中堅職層にステップアップして初めて部下指導という仕事を
するようになります。
ステップアップしたばかりですから、部下指導の成長基準は当然1点です。
「部下指導をやっていない」。ここからすべての中堅職の社員はスタート
します。

そして部下指導という重要業務もそれこそ10年や15年掛けて、優れたやり方
でできるようになります。そして他の中堅職の仲間に教えることができるよ
うになっていって、次は管理職層にステップアップすることができるように
なります。

中堅職層の社員にとってみれば、この部下指導はできないところからスタート
し、これからチャレンジしていくことです。ですから最初はできない、1点
であることを明確に伝え、理解してもらう必要があります。

この段階でしばしば、なかなか仕事ができなかったり、失敗が多かったり、
またはお客様からクレームをもらったり、1から教えなければならないような
社員が入ることがあります。そうすると中堅職になったばかりの社員は残念
そうな顔をして、「自分には仕事ができない部下がいる」と嘆きます。

しかし、仕事ができない部下のやることを嘆いてはいけないのです。なぜなら、
仕事ができない部下がいることによって、部下指導という重要業務が遂行でき
るようになるからです。

最初から5点を取れる部下はいません。仮に最初から優秀な部下しかいなけ
れば、残念ながら部下指導という重要業務は遂行できるようにはなりません。
必要がないからです。
 
できない部下がいるからこそ、その部下指導が必要になります。指導をし、
部下の成長点数を伸ばすことができて初めて、部下指導という重要業務が遂行
できるようになったことに、いつか気がつくでしょう。

部下の立場で考えれば、これから部下指導を学び始める4等級の社員よりも、
すでに部下指導ができる6等級の上司の部下になりたいと思います。しかし、
これから部下指導をする上司の元に、部下として配属されてくれているのです。

これから部下指導に取り組む上司には、必ずこのことを教えてください。そう
して中堅職になりたての上司に、部下指導について、部下の問題で苦しませな
いようにしてください。

また、部下指導というのは中堅職になってから初めて取り組むことですが、成長
シートを活用している会社であれば、中堅職になる前から部下指導へ挑戦し始め
ていることに気がついていると思います。

それは一般職層で部下の関係がないにもかかわらず教えるという行動を始める
ということです。重要業務や知識・技術の成長基準に「他の社員に教えている」
という言葉が入っているためです。

このことによって、上司でもない社員が仲間に教えるというとても難易度の高い
仕事に取り組むことになります。その段階から徐々に教えることの難しさ、大変さ、
そして喜びや楽しみを知っていきます。一般職層は中堅職層で初めて取り組む
「部下指導」の助走段階と言えるのです。

これを伝えておけば、中堅職層に成長したい社員は、先を見据えて一般職層で
成長基準の5点「他の社員に教える」ことに取り組むことになります。
ますます組織運営は盤石になっていくでしょう。

   = この続きは、来月またお送りいたします。 =