社会保険労務士法人村松事務所

「組織原則が組織運営の問題を解決する」編 

17.03.28
ミニコラム
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<教える社員が一番成長の法則>

20数年前のバブル崩壊によって、成果主義という言葉が日本に入ってきました。
成果主義とは、成果の高い社員に高い賃金を出すという考え方の賃金制度です。

しかし、この成果主義の採用により、日本で当たり前のようにあった組織風土が
壊れることになりました。
農耕民族である日本人は一緒に良くなることを望んでいます。水の使い方についても
収穫についてもあらゆる作業をお互いに協力し合って一緒に良くなろうとする生き方
だったと思います。

これが企業の組織の中においても、同様に言えます。何らかの縁で一緒に入った
この会社で教え合う、学び合う、成長し合うというのはほぼ当然のことでした。
1から教えなくてもそういう組織風土の中で学び合ってきました。

ところが成果主義、つまり利己主義のように自分の成果を上げて、自分だけ昇給・賞与
が多くなれば良い。賃金が絡むために短期間で大きく考え方を変動させてきました。

教える人間がいて、教えられる人間がいる。会社の中での高い成果を上げているやり方を、
まだ成果の低い社員に教えることによって、すべての社員が高い成果を上げることを
実現してきました。
 
つまり、すべての社員が高い成果を上げることによって業績を向上してきたのです。
 
しかし、成果主義によってこれが崩れました。教えないことによって、高い成果を
上げている社員は自分の高い評価を獲得し、そして高い賃金を得ることができるようになったのです。

この教えない道を選んだ社員は、ある大きな問題に直面することになりました。教えない
ことを心ひそかに決断する。とても残念な心の在り方の社員が高い評価を得る。

それに満足したが故に、その優秀な社員はもうそれ以上成長することはなくなりました。
多くの企業でチャレンジする優秀な社員が育ってこなかった原因がそこにあります。

もっとも企業において、この教えることを実践しているのは経営者です。経営者は
尋ねてきた社員に対して惜しみなくあらゆることを100%教え続けたでしょう。

では、教えた経営者が社員と同じレベルになったことはあるかというと、不思議な
くらいにありません。
 
教えた経営者の中には、また新しい情報が入ってきます。入ってきたその情報を活用
することによって、さらに経営者は優秀になっていきました。

プレーヤーという範囲に限定してお話しても、経営者が現場でプレーヤーの仕事を
している限りは、なかなか社員がそれを追い抜くことはできないという事実は、
このことを意味しています。
 
これを他の社員にもさせて、昔のように優秀な社員を育てる必要があります。
それが成長基準の5点に他の社員に教えていたことを盛り込むことでした。

これがあることによって、今まで評価されないと考えていた(※成果主義では教えること
を評価することはない)社員も、どんどんその教えることを始めました。

教えたことによって、教えられた側から「ありがとうございました」と感謝の言葉を
受けることは、教えた側にとってみればとても大きな喜びとなります。

「また何か分からないことがあったら、いつでも聞いてください」と発言することになるでしょう。
 
この社員がその教えることによって、あるとき気が付くことがあります。それは今まで
自分のやっていたそのやり方によって成果を上げていた以上に、様々なアイディアや
ヒントが浮かんでくることです。

「もう少しこのようにしてみたらどうだろう。こんな改善はどうだろう」。次から次へ
と不思議なくらいにアイディアが生まれてきます。

そして、教えたことで今まで出していた成果以上に新しいやり方を実行し、今まで以上
の高い成果を上げることができるようになっていきます。

教えることができる社員は、ますます成長していることが現実としてあるのです。
教えることによって成長し、高い成果を上げます。そしてさらに組織の中で尊敬されていきます。

あの人に教えてもらったお蔭で、私は成果を上げることができるようになった。
このように感じている社員は何を思うでしょうか。

あのような人が私たちの上司になってくれたら、どんなに組織は上手に回るだろうと
考えているタイミングでその人が上司になるのです。これが今までの日本の組織でした。
 
教える社員が成長する。そのことをこの組織の中で証明することでまた新しく教える社員が生まれてきます。

教えることは自分にとっては損な道。そんな道を歩むことが決して本当の損ではなく、
その社員の新たな大きな成長をもたらすことを実例として組織の中に示す必要があります。
   
   = この続きは、来月またお送りいたします。 =