4.3 21世紀の3大課題:脱炭素・循環経済・生物多様性(第2部・第4章・第3節)
永続を目指し続ける~非上場・中堅・中小企業のための「持続可能な経営の設計技法」~
今回は、青字の部分です。
第2部:4バリュー実現のための経営技法(各論)(ToDo)
4. 健全な環境
4.1 「経営課題」としての環境問題
4.2 基本の環境マネジメント:法令遵守・負荷軽減・公害防止
4.3 21世紀の3大課題:脱炭素・循環経済・生物多様性
※本記事の無断引用・転載・複製・配布等はご遠慮ください。
※予告なく記事内容の訂正・修正・補足等を行うことがあります。
4.3 21世紀の3大課題:炭素中立・循環経済・自然再興
基本の環境マネジメント:法令遵守・負荷軽減・公害防止が行われていることを前提とした上で、現時点において重要度の高いテーマとなっているのが、炭素中立・循環経済・自然再興です。
たとえば令和5(2023)年版環境・循環型社会・生物多様性白書のテーマが「 ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現に向けて~環境・経済・社会の統合的向上~」でした。
条約・国内法・SDGsとの対応付けを簡単に整理すると以下のようになります。
---
炭素中立➡気候変動(気候変動枠組条約・地球温暖化対策推進法)
SDGsゴール13:気候変動に具体的な対策を
循環経済➡天然資源(循環型社会形成推進基本法)
SDGsゴール12:つくる責任・つかう責任
自然再興➡生物多様性(生物多様性条約・生物多様性基本法)
SDGsゴール14:海の豊かさを守ろう
SDGsゴール15:陸の豊かさを守ろう
---
何気なく並んでいるように見えるSDGs17ゴールですが、実は、ゴール12-15は地球環境問題をテーマとしているのですね。そのほか環境に関連するゴールとしては、
SDGsゴール3:すべての人に健康と福祉を➡公害防止を含む
SDGsゴール6:安全な水とトイレを世界中に➡公害防止・公衆衛生を含む
SDGsゴール7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに➡再エネ・省エネを含む
が挙げられます。
さて、炭素中立・循環経済・自然再興の3大課題は、それぞれ独立のテーマではなく、リサイクルにより再生資源の利用を増やすと、天然資源投入量を減らすと同時に資源採取・精製・製造等のエネルギー消費削減を通じて脱炭素になる、また、資源採取に伴う自然破壊を抑制し生物多様性保全につながる、といった形で、相互に影響しあっています。
令和7(2025)年版環境・循環型社会・生物多様性白書より
(1)炭素中立(カーボン・ニュートラル:CN)
日本の場合、温室効果ガス排出の86%がエネルギー消費由来のCO2です。多かれ少なかれ、事実上、すべての会社がCO2の排出源になっているといってよいでしょう。
企業経営においては、省エネ推進・再エネ導入による温室効果ガス排出削減(社会的責任)、また、それに資する製品・サービスの開発・製造・販売といったビジネスのに取り組むこと(事業化)、となります。
温室効果ガス排出削減は、大きく、
・運用改善:現状設備を前提として、使い方を工夫して省エネする
・調達変更:同じ使い方でも、電力契約などを見直す(再エネ電力等)
・設備投資:現状設備の入れ替えや新設の際に脱炭素型の設備を導入する
のいずれか(またはこれらの組み合わせ)となります。
事業活動においてCO2を排出するのは、突き詰めれば、固定資産です。工場・商業施設・倉庫・ビル・住宅等の建築物・工作物およびこれらの「いれもの」に設置されている設備機器(照明・空調・昇降機等)の固定排出源、そして自動車・飛行機・船舶などの移動排出源。
これらの固定資産のストックを脱炭素性能の高いものに入れ替えていくことが社会全体として必要ですが、企業経営においては、設備投資なので、お金がかかる話になります。
そこで算盤の出番です。削減コストと投資額を比べて、投資回収年数<耐用年数であれば経済的にも投資したほうが合理的です。
この、投資回収年数を短縮するのに有効なのが補助金や税制優遇措置といった公的支援制度です。補助金の場合、補助金額だけ投資額が軽減されるので、投資回収年数は、1/2補助なら1/2、1/3補助なら2/3になります(ただし、補助金は営業外利益として課税対象となるので要注意、また消費税は補助対象外)。税制優遇措置の場合、軽減される税額分だけ税引後利益が増加し、結果として投資額が軽減されたのと同様の効果となります。
脱炭素目的の公的支援制度は年々拡充されていますが、なかなか検索しずらいので、国の施策についてあげておきますので、ご興味がある方は覗いてみてください。
・環境省HP:令和8年度予算 及び 令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧
・経済産業省HP:中小企業等のカーボンニュートラル支援策
(※執筆時点のURLです。予告なく変更されリンク切れになることがよくあります)
都道府県・市町村独自の予算については、それぞれ所在地の自治体のHPで探してみてください。
なお、補助金の場合には公募時期・期間があり、公募が始まってからの準備では間に合いません。また、税制(特例措置)の場合には期限があるので、いつまでに完了するかも大事です。今年度応募できなくても、導入設備の選定・仕様検討・参考見積の取得等を進めておくことで、来年度活用できる可能性が高まります。
(2)循環経済(サーキュラー・エコノミー:CE)
令和8(2026)年版環境・循環型社会・生物多様性白書では、「循環経済(サーキュラーエコノミー)で日本列島を強く豊かに」をテーマに掲げています。
2024年8月の第5次循環型社会形成推進基本計画で循環経済が国家戦略と位置づけられて以降、2024年12月に循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行加速化パッケージ、2026年4月に「循環経済行動計画」と、環境政策としても、経済安全保障政策としても、重要度が高まっています(ということは、この分野には政策的背景から商機あり!ではないでしょうか)。
企業経営においては、購入した原材料・物品等をできるだけ長く使う、不要になった場合にはリユース・リサイクルに回すことで、廃棄物としての排出量を最小化すること(3R)、また、再生資源の使用率の高い原材料・物品等を積極的に購入すること(グリーン購入)、となります。
1995年の容器包装リサイクル法を皮切りに、家電・建設・自動車・食品等のリサイクル法制が整備されてきて20-30年経過します。「リサイクルならやってるよ」という会社は多いと思いますが、産業廃棄物も一般廃棄物も、ひところから比べれば減ったとはいえ、まだまだ「ゼロ」には遠いですね。
ところで、循環型社会と循環経済とは、どう違うのでしょうか?循環型経済という表記を使う人もいたりして、なまじ字面が似ているだけに、混乱するかもしれません。
前提としては、20世紀後半の、大量生産・大量消費・大量廃棄を特徴とする使い捨て型の経済のことを「リニア経済」と呼びます。リニアというのは直線のことですから、資源を採取してから捨てるまで一直線!というイメージです。
この「リニア経済」の一方通行の流れを、どうにかして逆方向に戻す循環の流れをつくろう、というのが「循環型社会」です。しかし、それは経済的合理性ではなく、法規制(強制力)と税金とボランティア(無償の善意)により実現されているものなので、循環「型社会」となります。
これに対し、経済合理性に基づいて資源が循環し、天然資源の投入量をできるだけ少なくしよう、というのが「循環経済」です。前提として、不要になったモノにも価値があり、その価値に価格がつくことが必要です。身近な例は、リユース市場が成立し普通に流通している住宅・クルマ・古本など、あるいは、段ボール古紙や鉄・アルミ・銅などのスクラップのリサイクルです。
循環経済は、捨てる立場だけでも、一社だけでもできないことなので、複数業界・業態の協業によるバリューチェーンのイノベーションが必要です。
(3)自然再興(ネイチャー・ポジティブ:NP)
人間社会・経済活動の発展とともに、自然が破壊され失われてきたことは明らかです。それに歯止めをかけて、損失を回復し、さらには増やそう、というのがネイチャーポジティブの考え方です。
気候変動枠組条約と同じ1992年に成立した生物多様性条約では、遺伝子・種・生態系の多様性の、3つの多様性の保全を掲げていますが、結局のところ、生物種は生態系の中に組み込まれて存在し、遺伝子は生物種の中での多様性ですから、生態系そのものを守らなければ、生物多様性は守れません。
ただ、どの企業もエネルギーを使ってCO2を排出し、どの企業も何らかの資源を使って廃棄物を排出しているのにくらべて、こと生物多様性やネイチャー・ポジティブとなると、自社の事業活動との接点、さらには管理可能性をイメージするのが難しいかもしれません。
農林水産業やその加工品である飲食料品や木材関連製品を扱う企業や、建設・土木工事を行う企業、あるいは開発行為を必要とする事業(リゾート施設や太陽光発電など)であれば、その事業活動が自然環境に何らかの影響を与えていることは理解しやすいでしょうし、自社の事業活動や調達を変えることで、影響度合いをコントロールできる(管理可能性がある)面も考えやすいでしょう。
しかしたとえば当社のように、事務所で、無形商材(コンサルティング・教育研修)の提供を行っているだけの会社の場合は・・・かなり想像力を働かせる必要があるかもしれません。
ただ、事業活動そのものではなかなか難しいとしても、事業活動に付帯する物品・サービス購入等で調達を変えることで、間接的にネイチャー・ポジティブに関わることは可能です。ちなみに当社の場合、コピー用紙は「古紙30%配合のFSC認証用紙」を購入しています(かつてと比べて使用量は1/10以下になっていると思います)。この「FSC認証」の部分が、森林の環境保全に寄与しています。
私が理事を務めるグリーン購入ネットワーク(GPN)では、「エコ商品ねっと」により、環境配慮型製品・サービスの情報提供を行っています(商品によっては通販サイトへのリンクも貼ってあります)ので、調達の参考にしていただくのもよいかもしれません。
また、新事業の一つとして「ガラパゴス原産地認証付きコーヒー」※の販売事業を構想していますが、、、これが実現した場合は、現地コーヒー農家の支援を通じて、絶滅危惧種スカレシアという植物の保全に貢献することができます。
※NPO法人日本ガラパゴスの会で限定販売していますので、詳しくはそちらをご覧ください!
ーーー
炭素中立・循環経済・自然再興、それぞれにリスクの側面と機会の側面があります。リスクの側面に着目すれば環境マネジメントで回避・軽減を図る対応となります。一方で機会の側面に着目すれば、新事業・イノベーションの着眼点となります。
2021年8月~noteでデイリーSDGsニュースを続けてきて、今月で59ヶ月目に入っています。その中で、様々な新事業も取り上げてきました。それぞれのテーマでの新事業例をピックアップしてご紹介する回を作ろうと思っています。
あなたの会社は、CN/CE/NPにどんな機会を見出すことができますか?