有限会社 サステイナブル・デザイン

会社の「社会●●性」こそが持続可能な経営の本質(第1部・第2章・第3節)

26.03.29
4バリュー経営
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永続を目指し続ける~非上場・中堅・中小企業のための「持続可能な経営の設計技法」~
今回は、青字の部分です。

第1部:永続戦略としての4バリュー経営モデル(総論)(Plan)

1.非上場・中堅・中小企業にこそ必要・重要な「リスクと機会」のマネジメント

2. 会社の「社会●●性」が存続可能性を左右する
・「倒産理由第1位=販売不振」は本当か?

・CSR(企業の社会的責任)のC(コーポレート)の意味

・会社の「社会●●性」こそが持続可能な経営の本質

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2. 3 会社の「社会●●性」こそが持続可能な経営の本質

 個人は会社の仕事を通じて社会の役に立つ、そのとき、個人の価値観・考え方・生き方と会社の仕事の間に矛盾やジレンマを感じることがないのが理想です。
 その一方で、会社と社会がぴったり重なる「コーポレート・ソサエティ・フィット(CSF)」の状態が維持されていれば、社会-会社-人生に一貫性があります。この三位一体の状態を会社の「社会適合性」と呼ぶことにします。

 パナソニックの創業者、松下幸之助さんの「企業は社会の公器」という言葉があります(今でも、パナソニックグループの経営基本方針として掲げられています)。
 社員は会社に貢献する、会社は社会に貢献する、結果、社会は向上発展し人々の物心両面の幸福が実現する、このスパイラルを動かす原動力が会社だ、という考え方だと理解しています。
 1965年5月の電波新聞掲載、松下幸之助名「儲ける」と題する意見広告がパナソニックグループのHPで紹介されています。ぜひ、リンクを開いてご一読いただきたいのですが、その中ほど(3段落目)に次の一節があります。

 

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利益を軽視することは 企業を私有化し商いの口銭を私的処分の面からだけ考える 非常に狭い経営観であり 大変に間違ったことだと申せましょう。
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 なぜなら、利益から税金が納められ、その税金で道路が作られたり、全国民が恩恵を受けるからだ、ということが前段に書かれています。
 「この大事なことを もう一度 真剣に考えてみましょう」という副題がついていますが、この大事なこととは、「利益」です。

 この5年後、1970年に発表されたミルトン・フリードマン「企業の社会的責任は利益を増やすこと」(1970)という論稿があります。こちらの論稿のタイトルも、利益についてですが、中味は「公論」とは対極です。
 CSRとか会社は誰のものかという議論になると、必ずと言っていいほど、引き合いに出されるものですが、ニューヨークタイムズに掲載されていたんですね。今回、私も改めて原文を読んでみました。

 それなりに長い英文なので細部まで正確に読み取れてはいませんが、、、重要な前提は、そもそも責任を負えるのは人間だけだ(Only people can have responsibilities)という考え方です。
 そこから、社会的責任についても、それは個人が負うもので、企業(ビジネス)が負うものではない(the social responsibilities of individuals, not of business)という考え方が出てきます。

 その前提で、
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■投資家/オーナーから企業を預かっている経営者が、経営者個人の考えで社会的責任のために会社のお金を使うのはおかしい、経営者が責任を負うのは社会に対してではなく投資家/オーナーに対して
■投資家/オーナーがそうしたいなら自分個人のお金でそうすればよい、経営者がそうしたいなら自分個人のお金でそうすればよい
■経営者が会社(投資家/オーナー)のお金ですることではない、経営者はあくまで投資家/オーナーの代理人(agent)なんだから
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といった主張が展開されていきます。

 利益至上主義だから、というよりは、バーチャルな存在である法人(フリードマンの表現ではartificial person)における経営者の責任論を理詰めにしていったら、そうとしか考えられなかったのではないかな、という気がします。
 投資家は、利益を求める投資家/オーナーのために利益を最大化せよ、投資家/オーナーはそのお金を好きに使いたまえ。


 ところで、もし、投資家/オーナーが、会社のお金を社会的責任のために使いたい場合、経営者はあくまで投資家/オーナーの代理人(agent)だという前提では、どういう結論になるのでしょうか?

 1970年当時は、「そんなこと、あるわけないだろ!」で門前払いだったかもしれませんが、今はどうでしょう。

 2000年代~CSRが重視されるようになり、2004年に提唱されたESGの考え方によって一定程度浸透し、長期的利益の観点からESG投資を行う投資家/オーナーが増えています(その代表例がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です)。
 2019-2020年にかけて、「ステークホルダー資本主義」という考え方が打ち出されました。

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「企業はステークホルダー資本主義を受け入れなければなりません。つまり、収益の最大化だけでなく、官民連携および市民社会との協力を通じて、企業が持つ能力とリソースをこの10年間の課題にそそぐ事で、より持続可能で結束した世界を築くのです」(2020年1月ダボス会議「ステークホルダー資本主義:持続可能で団結力ある世界を築くための宣言」)
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 つまり、結局は「企業は社会の公の器」ということではないでしょうか。 松下幸之助さんの意見広告は今から61年前、ダボス会議のステークホルダー資本主義宣言の55年前、フリードマン論稿の5年前、慧眼というほかありません。

 社会から会社がお預かりした経営資源を使って事業を行い、適正な利益を出して、税金を納めて社会に返す。会社がなかった場合より、あった場合の方が社会がよくなるようにする、そこに会社の存在意義があります。

あなたの会社が「あってよかったこと」は何ですか?

 経営資源をお預かりする会社は「コーポレート・ソサエティ・フィット」(CSF)で組織としての「社会適合性」を高め、事業活動においては「プロダクト・マーケット・フィット」(PMF)によって製品・サービスの「市場適合性」を高める。これが永続企業への道と思います。

 抽象論はこのあたりまでにして(というより私も限界!)、次の章から、非上場・中堅・中小企業のための「持続可能な経営の設計技法」の本体、4バリューを実現する経営計画の作り方に入っていきたいと思います。

※本記事冒頭の3つの渦が1つの中心をめぐって回っている図は、「トリスケル」という古代ケルトの紋様で、、三位一体の象徴だそうです。社会-会社-人生の三位一体を表現するのにもぴったりかな、と思いました。