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「ESG評価」は、「リスクと機会」の着眼点リスト(第1部・第1章・第3節)

26.03.03
4バリュー経営
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永続を目指し続ける~非上場・中堅・中小企業のための「持続可能な経営の設計技法」~
今回は、青字の部分です。

第1部:永続戦略としての4バリュー経営モデル(総論)(Plan)

1.非上場・中堅・中小企業にこそ必要・重要な「リスクと機会」のマネジメント
1.1リスク回避と機会追求こそ、経営者の仕事
1.2「プリズム」としての「リスクと機会」分析
1.3「ESG評価」は、「リスクと機会」の着眼点リスト

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1.2「ESG評価」は、「リスクと機会」の着眼点リスト

経営の財務側面とは、要するに決算書の「数字」で表せることです。

売上、費用、利益、等々、およびそれらの数字を足し算・引き算・掛け算・割り算を駆使して算出する様々な指標。決算書の「数字」から読み取れること、とも言えます。

 

非財務側面とは、決算書の「数字」で表せないことです。

決算書の「数字」は価格(Price)を表していますから、非財務側面に含まれるのは価格がつけられない(Priceless)事柄、ということになります。

 

今や古典的ともいえるクレジットカートのキャンペーンを思い出してみてください。

「プライスレス。お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで」

 

価格がつかないほど価値がない、ではなくて、価格をつけられないほど価値がある大事なこと、ですね。

家を想像してみてください。どんなに壮麗な家でも、土台が脆弱だったり腐っていたりしたら、いずれ傾いたり崩壊したりしますね。会社経営の土台(組織)にあたるのが非財務、業績(決算書)に当たるのがその上に建てられる家、と理解するとわかりやすいでしょう。

ただ、その土台は通常、外からは見えません。そこをどう評価するかとなると、共通の尺度・物差しがありませんでした。そこで登場したのがESGです。

 

ESGとは、経営の非財務側面を

・Environment(環境)

・Society(社会)

・Governance(ガバナンス/企業統治)

3カテゴリーに分けて、それぞれの頭文字を並べたものです。

 

この3カテゴリーのうち、環境と社会(ES)は、伝統的には会社の収益に関係しないこと、「外部不経済」として市場の外で起きている不都合なこと、という扱いでした。「会社は慈善事業じゃないんだよ」といった発言・考え方に象徴されます。

外部不経済の典型例が公害です。1960年代までは、公害は起きているかもしれないが企業が対策や救済すべきことではなく、行政の領域、というのが「正論」でした。

 

しかし、日本では、1967年の公害防止対策基本法(現在の環境基本法の前身)、そして1970年、公害関係14法が成立した「公害国会」以降、公害防止は企業が取り組むべきこと、となりました(「外部不経済の内部化」といいます)。

 

社会の問題も、2000年代~CSR(企業の社会的責任)という考え方により、明確に内部化されてきました。そのころまで、会社は株主のために存在するという考え方が「正論」でしたが、今はステークホルダー資本主義という考え方に代わってきていますね。

 

さて、環境や社会(ES)の問題を内部化するということは、会社経営において、そのために費用を支払ったり、担当部署を設けたり、進捗管理をしたりという費用・組織・業務が発生します。これをどうマネジメントするかというのがガバナンス(G)、ということになります。

 

そういうわけで、ESとGがセットになってESGになっているわけです。

ちなみにESGという概念が定式化されたのは、2004年の“Who Cares Win”という報告書です。このタイトル、直訳すると「配慮するものが勝つ」ですが、世界のアセット・マネジメント会社をメンバーとするWGの成果物でしたので、「勝つ」とは、投資が成功することです。

 

---タイトル・サブタイトル(日本語は拙訳)---

Who Cares Wins:Connecting Financial Markets to a Changing World

Recommendations by the financial industry to better integrate environmental, social and governance issues in analysis, asset management and securities brokerage

配慮するものが勝者となる:金融市場を、世界の変革に結びつける

環境・社会・ガバナンスの問題を、(企業)分析、資産運用、証券会社(の業務)によりよく統合するための金融産業からの提言

---

つまり、ESGは投資の成功(=企業価値の向上)につながる重要成功要因(KSF)だ、という考え方が、このタイトルに表れているのではないかと思います。

 

その後、2006年に国連が打ち出したPRI(責任投資原則)以降、ESG投資のための評価指標・評価指標の整備が進められてきました。ESGにも20年ほどの歴史があるわけですね。

 

実は私たちが納めた年金の運用をしている「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、世界最大のESG投資機関です。そのESG投資の成果を通じて、私たちの人生とESGはすでに分かち難くつながっていることを知っておきましょう。

 

さて、ESGの3文字はカテゴリーであり、概念にすぎないわけですが、実際の企業評価においてはより詳細な取組項目に細分化されたチェックリストが様々開発され、使われています。詳細なものは数百項目にも及ぶので、正直言って、私も全項目に精通している、というわけにはいきません。

 

サステナビリティ開示という話題になると、時価総額の大きなプライム上場企業だけの話、かもしれませんが、非上場・中堅・中小企業は無縁かというと、そうでもありません。

 

つい先日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックが終わったばかりですが、組織調達における持続可能性の「配慮」が体系的・制度的に行われているのがオリンピックです。

 

■東京2020オリンピック・パラリンピック「持続可能性に配慮した調達コード」

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

 

■大阪・関西万博「持続可能性に配慮した調達コード」

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

 

東京オリパラ、大阪・関西万博では、入札参加者は事前に調達コードのチェックリストをつかって自己評価を提出する決まりとなっていました。

したがって、東京オリパラ、大阪・関西万博で仕事を受注した会社はこの自己評価を一度は行った経験がある、ということになります。当然、上場企業だけではないですね。

そして、東京オリパラ、大阪・関西万博に、地方公共団体の調達における持続可能性の配慮が制度化されたのが、東京都の「社会的責任調達指針」です。

 

■東京都「社会的責任調達指針」:2024年7月策定、2025年度~適用開始

東京都財務局

 

オリパラ・万博の主催組織はあくまで民間ですが、東京都は行政機関です。今後、こうした調達が他府県にどのように波及していくのか注目しておく必要があるかな、と思っています。。

 

チェックリストの内容はリンク先を見ていただいた方がよいですが、基本的にはESGのフレームで構成されています。
・環境:E
・人権と労働:S
・経済:G


わが社にはそんなの関係ないよ、だって入札の仕事やらないし、という立場も、もちろん、アリです。

ただ、こうしたチェックリストは、「いまどきの社会において、会社に何がどこまで求められているのか」、公的機関があらかじめ整理して示してくれているという点で、規定演技の採点基準のようなもの、と考えることもできます。

入札するしないにかかわらず、チェックリストを使って自己評価してみることで、まず、自社が取り組むべき経営課題(リスク?機会?)を明確化することができます。

「事業の性質上該当しない」というチェックボックスもあるので、これにチェックが入るならば、それはリスクでも機会でもない、ということになります。

あなたの会社は、規定演技がどのくらいできていますか?

地方自治体によるSDGs宣言等制度は、2025年10月時点で105団体で導入されています。また、金融機関によるSDGs診断やSDGs宣言サポートは、多くの地銀や有力な信金で商品化されています。
両方の制度合わせて、筆者推測で、5-10万社程度が、レベルや詳細さは様々ですが、ESGの観点からのチェックリストを活用した自己評価を行っているのではないかと思われます。
まだでしたら、あなたの会社の所在する自治体、お取引のある金融機関のサービスを調べてみてもよいでしょう。