採用難時代を生き残るのは、人を育て、人を大切にする企業

16.12.16
ビジネス【人的資源】
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「企業は人なり」「人は育てるものなり」と、日本の企業は人を大切にすることを誇りにしてきました。
ただしその戦略は、内側に厚く、外側ほど薄くなっています。
正規雇用と非正規雇用、定期採用と中途採用、学歴や性別でもきめ細かく区別し、差をつけていることが多かったのです。

現在では、業績悪化によるリストラの進行や、行き過ぎた成果主義、長時間残業の強制等で、社員を使い捨てするかのような企業さえ見受けられます。
しかし、現代のような採用難時代になると、1人でも多くの人材に戦力になってもらうことが必要です。

では、何をしたらよいのでしょうか?
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戦力化には人材育成が欠かせません。
企業の人材育成は、企業の力、ひいては経済全体の力を底上げするでしょう。

人手不足であればあるほど、「1人でも入社してくれれば」「あれもこれもやってほしい」と気が急いてしまいがちです。
しかし、新しい人材を入れる目的は、組織の能力を向上させるためと同時に、従業員の能力を向上させることでもあるのです。
それゆえ、新人については、その働きに期待していることを十分伝えることはもちろん、仕事能力をどのようにつけていくかという青写真を示すことが大切です。 

企業によって、必要とする仕事能力は千差万別です。
現代の企業でしか通用しない能力もあれば、どのような業種のどのような企業でも通用する能力もあります。
汎用性のある能力といえば、昔でいう読み書きそろばん、今でいうと情報処理能力です。
このようなスキルをベースに、テクニカルな仕事能力を向上させることは、従業員にとっても望ましいことです。 

新入社員に対しては、入社何年目の段階で何を教わり、どのレベルまで仕事を任せてもらえるようになるのか、できるだけ具体的な青写真を描いて提示してあげるとよいでしょう。
すると、新入社員は今後の社内での働き方をイメージできるようになり、やる気を出して業務に励むようになります。

情報関係のある上場企業の事例を挙げます。
未上場で従業員が少なかったころ、社長は毎週、係長以上と交代で昼食会を行い、今後の会社のビジョンを伝え、それに対して社員にどのようなことを頑張ってほしいのか伝えていました。

多忙な社長の考えは、同業の付き合いなどを極力排して、従業員との接触を大切にするというもの。
さらに世間並み以上の給料を支払おうという方針でした。
この昼食会を10年以上かけて続けたことで「人を育てよう」という社長の思いが全社に浸透し、今では新卒の採用に困る年はないそうです。


●プロフィール● 
佐野陽子 さの・ようこ 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 

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