コピーライターの技を、日々のビジネスに活かす。「1行の力」について。その3

16.08.12
ビジネス【マーケティング】
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広告主の方はコピーライターに対して、よくこんな要望をします。 

「高級な商品なんだから『高級』と書いてくれ。本物の味わいある商品を作ったのだから『本物』と書いてくれ」 

しかし、一般的には“書いてある”ということと“伝わる”ということとは別なのです。

多くの場合、「高級」や「本物」というコピーでは、伝えたいことは伝わりません。
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岡本欣也さんは「“売り言葉”と“買い言葉”~心を動かすコピーの発想~」という本の中で、このことを「“伝える”と“伝わる”はずいぶん違う」と書いています。

そして、多くの人は「どう伝えるか」は考えるけれど、本来の目的である「(人を)どう動かすか」という発想をしていない、と記しています。 

さらに、人を動かすためのコピーは、2つのタイプに大別できると主張します。それは、「売り言葉」と「買い言葉」です。 

岡本さんによれば、「売り言葉」とは、売り手側の目線に立ち、主に他商品との「違い」を表現した言葉のこと。この目線に立ったヒット作は、今までに多数存在します。 

例えば、「うまい。やすい。はやい(吉野家)」「目の付けどころがシャープでしょ(シャープ)」「スカッとさわやかコカコーラ(コカコーラ)」など、往年の名作ぞろいです。 

この「売り言葉」のコピーを考える際には、4つのタイプに分けて考えてみましょう。

まずは、呼びかけ型。「お正月を写そう(富士フィルム)」「そうだ、京都、行こう(JR東海)」「朝マックしよう(マクドナルド)」など、頻繁に用いられる手法です。 

次に、事実そのままコピー型。商品そのものにニュース性があるなら、あえて“表現せず”、ストレートに伝えます。「お湯をかけて2分でできるラーメン(日清チキンラーメン)」「最高金賞のうまさです(サントリー プレミアム・モルツ)」「英語を話せると、10億人と話せる(英会話のジオス)」など。 

そして、もう一つのタイプは、「買い言葉」。買い手側=ユーザー側の目線に立ち、「(あなたと)同じである」と伝え、共感を武器にしようとします。

高額商品やプレミアム商品、そしてファッション系など、「売りづらい商品をいかに売るか」の解決策として使われてきました。 

「安いものはほしくない。安くなったものがほしい(デパートのバーゲン)」「帰ったら、白いシャツ(全日空沖縄キャンペーン)」「恋は、遠い日の花火ではない(サントリーオールド)」「きれいなおねえさんは、好きですか?(松下電工)」などで、中には流行語になったものも少なくありません。

コピーライターの作家性が強く表れたものが多く、ここからヒントを得るのは簡単ではないかもしれませんが、ご興味があれば、ぜひ、チャレンジしてください! 

そして最後に紹介するコピーのタイプは、「売り言葉」と「買い言葉」の両方を兼ね備えたものです。

「うまいんだな、これがっ(サントリーモルツ)」「あいててよかった(セブン‐イレブン)」「一生も 一瞬も 美しく (資生堂)」「年賀状は、贈り物だと思う(日本郵政)」などがあります。 

お店や商品についてのコピーを考えるときや、コピーライターからの提案を検討するとき、次回からは、それが「売り言葉」なのか「買い言葉」なのかについても、思いをはせてみてはいかがでしょうか? 

さて、次回も、「1行の力」について、解説していきたいと思います。 

次回は『コピーライターの技を、日々のビジネスに活かす。「1行の力」について。その4』です。


佐藤達郎の今すぐ使える!マーケティング手法 


[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 


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