適材適所を実現するために知っておきたい『人事異動』のやり方

24.06.11
ビジネス【人的資源】
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事業者には労働者の採用や昇進、異動や解雇などを決める『人事権』があります。
この権利に基づいて、企業の人事担当者は従業員を必要な部署に配置する『人事異動』を行いますが、その際に注意したいのが従業員と配属先のミスマッチです。
もし、人事異動によってミスマッチが起きてしまうと、組織の生産性が下がるだけではなく、従業員の離職につながってしまう可能性もあります。
ミスマッチを起こさず、人材の適材適所を実現できる人事異動の方法を考えていきます。
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人事異動の第一歩は従業員情報の収集から

企業は事業目標に基づいて組織編成を決める必要があるため、人事異動も来期の事業目標が決まる決算期に合わせて行うことがほとんどです。
3月決算の企業であれば3月や4月、9月決算の企業は9月や10月に人事異動が行われる場合が多い傾向にあります。

人事異動は人材育成や人材配置の最適化、組織開発などを目的に行われるもので、事業目標を達成するためには欠かせない取り組みでもあります。
しかし、人事異動を行なった結果、従業員が異動先の雰囲気や業務に馴染めないと、モチベーションの低下を招き、逆に生産性が下がってしまうかもしれません。

また、望まない異動によって、フラストレーションが溜まり、最終的に離職してしまう可能性も考えられます。
人事異動はこうしたリスクがつきものですが、配属先のミスマッチを起こさずに適材適所を実現するためには、どうすればいいのでしょうか。

人事異動を行ううえで、最初に行なっておきたいのが、従業員に関する情報の収集です。
社内でどんな人間がどんな業務に従事しているのかをまず知らなければ、適切な人員の配置はできません。

勤続年数や雇用区分といった基本的なことはもちろん、個人が持っているスキルや資格、実績や配属経歴などから、将来のキャリアプランに異動希望の有無まで、従業員ごとの詳細な情報を集約させておきましょう。
従業員情報は労務管理や労働環境の改善などにも使うものなので、日頃から一元化して管理しておくことをおすすめします。

少人数の事業所であっても、従業員情報の管理は手間のかかる作業です。
場合によっては、従業員の能力や特性を数値で評価する『人材アセスメントツール』などの導入を検討してみてもよいでしょう。

当事者の意向をくみ取りながら調整を進める

従業員情報が管理できれば、組織の抱えている問題の解決や、力を入れていきたい事業などに応じて、必要な人員の配置を行なっていきます。
このときに大切なのは、本人と現場の意向をくみ取りながら、調整を進めていくことです。

人事異動は事業計画や経営方針に沿って行うものですが、人材の流動性が高まっている昨今においては、従業員の意向を完全に無視することはできません。
会社側の意向だけではなく、本人の考えているキャリアプランに合わせた人事異動を行うことで、異動先でも高いモチベーションで働いてもらうことができます。

逆に、「家族の介護で今の職場を離れられない」「子どもが小さいので地方勤務がむずかしい」などの事情で、異動を希望しない従業員に対しては、個別の事情を考慮したうえで対応しなければいけません。
会社側は人事権に基づいて従業員に人事異動を命じることができますが、異動を希望しない従業員に転居を伴う異動を命じると、思わぬ労使トラブルに発展したり、離職につながったりする可能性もあるので、注意してください。

また、現場の声に耳を傾けることも大切です。
特にサービス業や製造業などにおいては、現場の人間にしかわからないことも少なくありません。
どんな問題が発生していて、どんな人材が足りていないのか、現場の責任者にヒアリングを行なったうえで、適切な人員を配置しましょう。

人事異動で注意したいのは、ポストが空いたからといって連鎖的に従業員を異動させる、いわゆる『玉突き人事』を行わないことです。
玉突き人事であっても、うまくマッチすれば従業員の成長を促したり、問題の解決を図れたりはしますが、適性や本人の希望を考えていないため、だいたいの場合はミスマッチが起きてしまいます。

事業計画や経営方針に基づいた人事異動だったとしても、当事者に対して、なぜ異動を決めたのか、どういった活躍を望んでいるのかといったことを事前にしっかりと説明しなければいけません。
企業側の意図や考えを伝えることで、従業員は不信感を抱かず、納得感を持って新天地で働くことができます。
従業員に、より高いパフォーマンスを発揮してもらえるよう、適切な人材配置や事前と事後の丁寧な説明を心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。