一度手放した不動産を買い戻せる『買戻特約』の登記とは?

23.10.31
業種別【不動産業(登記)】
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土地や建物などの不動産を購入する場合は、売主と買主の間で売買契約を結びます。
この売買契約に『買戻特約』という特約を付帯させておくと、売主は不動産の代金や売買契約にかかった費用を買主に返すことで、売買契約を解除して不動産を取り戻すことができます。
不動産の所有権が売主から買主に移ると、通常は所有権移転登記を行いますが、買戻特約を付帯させるときは、所有権移転登記と同時に買戻特約の登記を行う必要があります。
買戻特約の登記を抹消する方法なども含めて、売主と買主、両方の立場から買戻特約の登記について説明します。
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買戻権があれば第三者にも権利を主張できる

所有している不動産を担保に借入を行う場合など、将来的にその不動産を買い戻すことを前提としている売買契約には、買戻特約を付帯させることがあります。
民法579条に規定されている買戻特約は、売主は買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額)および契約の費用を返還することで、売買契約を解除することができる、というものです。

通常、買戻特約を付帯させずに不動産を売った場合、売主が買主から一度売った不動産を再び取り戻すことは非常に困難です。
買戻特約をつけると、売買契約を解除する『解除権』を保留したことになるので、不動産を一旦手放しても、期間が満了を迎えるまではその不動産を買い戻すチャンスがあります。

そして、この買戻特約に効力を持たせるためには、当事者同士の合意だけではなく、買戻特約の登記が必要になります。
買戻特約の登記を行っておけば、たとえ買主が不動産を第三者に売ってしまったとしても、売主には『買戻権』という買い戻す権利があることを立証できるため、第三者に対しても権利を主張することが可能になります。

このように売主にしかメリットがないように見える買戻特約ですが、実は買戻特約の登記のついた不動産は買主が見つかりづらいというデメリットもあります。
買主からしてみれば、せっかく購入した不動産を買戻特約によって返さなければならない可能性が生じるからです。

また、売主が不動産を買い戻す金額は原則として売買したときと同じ金額でなければならず、買い戻す際に物価が上昇していれば、その差額分、買主は損をします。
そして、物価が下落していた場合には、売主が不動産を買い戻さないというリスクもあります。
買主にとって不利になりやすい買戻特約の登記がついた不動産は売るのがむずかしく、一般的な相場よりも低い売値になることがほとんどです。

買主は単独でも買戻特約の登記の抹消が可能

前述した通り、買戻特約は不動産を担保にする際などに使われます。
しかし、近年は公的機関が不動産の転売や用法違反などを防ぐために付帯させるケースもあります。

地方公共団体や住宅公社、都市再生機構などの公的機関が行う不動産売買は、広く社会一般の利益になるようなものでなければいけないと定められています。
したがって、利益を目的とした転売や、風俗営業などの用法違反などが発覚した際には、売主である公的機関がいつでもその不動産を買い戻せるように、買戻特約を付帯させておくのです。
公的機関から買戻特約の登記がついた不動産を購入する買主は、所有権移転等の制限や用途の指定など、定められた条件をしっかりと確認しておく必要があります。

ただし、買戻特約にも期限があり、売主が買戻権を行使できるのは、最長で10年と決められています。
買い戻しのできる期間は10年以内で自由に設定できますが、設定しない場合は5年が経つと買戻権が消滅します。

気をつけたいのは、買い戻しのできる期間が過ぎて買戻権が消滅したとしても、買戻特約の登記は残るということです。
買戻特約の登記が自動的に消滅することはなく、この登記が残ったまま相続登記を行い、所有者が変わってしまうケースも少なくありません。
買戻特約の登記を登記簿から消すには、登記の抹消を行う必要があり、これまでは原則として、現在の不動産の所有者(買主)と買戻権を持つ買戻権者(売主)が共同で申請する必要がありました。
しかし、買戻権者が不明だったり、権利が実体的に消滅していたりすることも多かったため、不動産登記法の改正によって、2023年4月1日以降は売買契約から10年が経過している買戻特約の登記に関しては、不動産の所有者による単独での登記の抹消が可能になりました。
この法改正により、抹消の登記の際には、買戻権者である公的機関の交付する書類が不要になります。

不動産の売買契約を解除できる買戻特約は、売却した不動産を取り戻す予定のある売主には便利な制度です。
しかし、買戻特約を付帯させるためには、所有権移転登記と買戻特約の登記を同時に行う必要があり、買戻特約の期限などについても留意しておくべきです。
買戻特約を付帯して不動産の売買契約を検討している場合、不明点は管轄の法務局か司法書士に相談してみましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。