『借地権』の種類と相続の際の注意点

23.02.27
業種別【不動産業(相続)】
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相続に関わる権利として、『借地権』があります。
借地権は土地を借りる権利のことで、故人が借地権を有していた場合、財産などと同様に相続の対象となります。
しかし、相続に際して、地主との関係などによってはトラブルが発生する場合があり、注意が必要です。
今回は借地権の相続において、相続人や遺贈を受けた方が覚えておきたい内容について解説します。
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土地を借りる権利である借地権

借地権とは、建物を所有する目的で第三者が所有する土地を借りる権利のことを指します。借地権にはいくつか種類がありますが、主なものは以下の3つです。
(1)『普通借地権』
普通借地権は契約の更新ができる借地権で、存続期間は30年以上とされています。契約によって30年よりも短い期間を定めた場合、法的には無効となります。契約は正当事由がない限り更新され、更新後の存続期間は最初の更新時は20年、それ以降は10年とされます。

(2)『一般定期借地権』
一般定期借地権は定められた存続期間の経過によって終了する借地権で、存続期間は50年以上とされています。契約の更新ができないことが特徴で、契約期間の満了後に土地を明け渡す必要があります。

(3)『旧借地権』
一般に旧借地権と呼ばれるのは、現行の『借地借家法』が施行された平成4年8月1日以前の、『旧借地法』のもとに設定された借地権で、現行法の下でも有効とされています。存続期間が現行法と異なり、堅固建物は30年以上、非堅固建物は20年以上とされています。正当事由がない限り更新される点は、現行法の普通借地権と同じです。


相続方法によって対応が変わる借地権の相続

借地権も権利の一種なので、相続の対象となります。
ただし、借地権を相続によって取得したか、遺贈によって取得したかによって、地主への対応が変わります。

(1)法定相続人が借地権を相続した場合
法定相続人が借地権を相続した場合には、建物の所有名義を相続人に変更するだけでよく、地主の承諾は不要です。土地の賃貸借契約書の名義を書き換える必要も、地主に譲渡承諾料を支払う必要もなく、地主に対して相続によって借地権を取得したことを通知すればよいとされています。

(2)法定相続人以外の者が借地権の遺贈を受けた場合
法定相続人以外の者が借地権の遺贈を受けた場合は、まずは地主に借地権の遺贈があることを通知し、承諾請求をします。地主の承諾を得られたら、建物の所有権移転登記を行いますが、譲渡承諾料が必要です。譲渡承諾料の目安は、借地権価格の10%程度とされていますが個々の事情などに応じて具体的な金額が決定されます。地主の承諾を得られなかった場合には、家庭裁判所に借地権譲渡の承諾に代わる許可を求めることができます。

(3)相続した借地権を売却したり、建物を増改築する場合
相続した借地権の売却や建物の増改築は可能です。しかし、地主の承諾と承諾料の支払いが必要になります。地主の承諾を得ず売却や建物の増改築をすると契約違反となり、地主から借地権の明渡請求を受けることになります。


借地権の評価方法は借地権の種類による

では、実際に借地権を相続するときには、どのような計算で評価額を出すのでしょうか。

普通借地権の相続税評価額は、自用地評価額に借地権割合を掛けて算出します。自用地評価額とは、土地の更地価額のことです。借地権割合とは『財産評価基準書路線価図・評価倍率表』に記載されている割合のことで、国税庁のHPで閲覧することができます。ただし実際に売却する際の価格は、これを目安にしつつ、売却先や地代、地主との関係で変わってきます。

定期借地権などの相続税評価額は、原則として、課税時期被相続人の死亡日または贈与による財産取得日の課税時期において、借地人に帰属する経済的利益やその存続期間を基準に評価します。『定期借地権等の評価明細書』からも評価できます。


借地権に関する地主とのトラブル

このように借地権の相続については煩雑なこともあり、相続の際に地主とのトラブルにつながることもあります。

たとえば、親の名義の借地に子の名義の建物を新築したい場合、地主の承諾を得ずに建物を建てると、土地賃貸借契約書の『無断転貸禁止条項』違反を理由に、地主から契約を解除されるリスクがあります。
この場合、子名義で新たな借地契約を結んでもらい、そのうえで、親子の共有名義の建物を新築することの承諾を得る方法があります。
あるいは、地主に対し、まずは親の借地権を子に転貸することの許可を求め、次に、転借人となった子が借地上に建物を新築することの許可を求めるという方法もあります。

また、地主が亡くなった場合は、地主の相続人が貸主の地位を相続することになるため、借地権は影響を受けません。
しかし、貸主の地位を相続した地主が土地を第三に売却した場合、新たな地主から土地を明け渡せといわれてしまうと、借地権を登記しておくか、建物に借地人の登記がなされ、かつ、その建物が借地上に存在していなければ、これに対抗することができません。

借地権を保有している場合は、相続における不要なトラブルを防ぐためにも、今一度こうした相続に関わる権利について確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年3月現在の法令・情報等に基づいています。