近年増加している『改葬』を、スムーズに進めるポイント

22.12.20
ビジネス【法律豆知識】
dummy
墓地や霊園に埋葬されている遺骨を別の墓地や霊園に移し替えることを『改葬』といい、近年、さまざまな理由から増加傾向にあります。
改葬の際に注意したいのは、親族や墓地を管理している寺院とのトラブルです。
今回は、トラブルを防ぎ、スムーズに改葬を行うためのポイントを解説します。
dummy
大切なのは、親族の同意を得ておくこと

「墓が遠方にあるため、お墓参りがしづらい」「複数ある墓を一つにまとめたい」「転居に伴い、墓も引っ越したい」など、改葬を行う理由は人それぞれです。
近年ではこういった墓の管理の都合上、改葬をしようという人が増えています。
改葬を行うと決めたら、最初に行うべきなのが、親族の同意を得ることです。

通常、墓を購入する際には、寺院や霊園などの墓地の管理者に『永代使用料』を支払い、墓の土地を使用する権利である『永代使用権』を取得します。
永代使用権は永代に渡って受け継がれ、その時点で永代使用権を所持している人が墓地の一区画の使用権利者になります。

使用権利者は墓に関しての決定権を有しており、改葬などを親族の承諾なしに進めても、法律上の不都合はありません。

しかし、墓には先祖代々の遺骨が納められているため、親族それぞれの思いがあります。
「墓参りができなくなる」「墓を移動させるのに心理的な抵抗がある」などの理由から、親族のなかには改葬に反対する人がいるかもしれません。
今後も親戚づきあいを続けていくのであれば、まずはよく話し合い、親族全員の同意を得たうえで、改葬を進めることをおすすめします。

親族で合意ができ、改葬が決まったら、移転先の墓地を確保すると同時に、移転先の墓地の管理者に『墓地使用許可証』か『受入証明書』を発行してもらいます。
続いて、現在の墓がある移転元の自治体から『改葬許可申請書』を取り寄せ、必要事項を記入し、移転元の墓の管理者に署名と捺印をしてもらいます。
これが改葬に必要な『埋蔵証明書』または『収蔵証明書』です。
管理者から別途発行してもらうこともありますが、改葬許可申請書と一体のものがほとんどです。

これらの書類を移転元の自治体に提出し、『改葬許可証』を発行してもらうと、遺骨の取り出しが可能になります。
あとは、移転先で手続きを済ませて、納骨をすれば、改葬が完了します。


寺院から高額な離檀料を請求された場合には

墓地の管理者が寺院の場合、ごくまれに住職などの墓地の管理者から改葬に難色を示されることがあります。
場合によっては、『離檀料』を求められることもあります。
離檀料とは『お布施』のようなもので、一般的には3~20万円ほど(お布施1回の金額)が相場といわれていますが、離檀料に法的な根拠はなく、あくまで檀家の『気持ち』として支払われるものだとされています。

しかし、過去には寺院から高額な離檀料を請求され、拒んだ結果、「遺骨を渡してもらえない」「改葬許可申請書に署名をしてもらえない」「埋蔵証明書を発行してもらえない」などのトラブルに発展する事例もありました。

こうしたトラブルにならないためにも、改葬を決めた段階で寺院に出向き、改葬したい旨を説明して、理解を求めておきましょう
同時に、長年管理をしてくれた感謝を伝えたうえで、金額に納得できれば、これまで先祖供養をしてもらったお礼として、離檀料を支払うのもよいでしょう。
ただし、離檀料の金額を決めていない寺院も多く、そもそも離檀料を受け取らない寺院もあるので、事前に確認しておく必要があります。

そして、もし寺院とトラブルになってしまった場合には、冷静に根気強く話し合いを続けることが重要です。
場合によっては、檀家をまとめる檀家総代などに間に入ってもらうことも一つの手です。
また、国民生活センターや自治体の消費生活センター、改葬や墓じまいなどの問題を取り扱う弁護士や行政書士などに相談するという方法もあります。

改葬は『墓地、埋葬等に関する法律』によって定められているため、適切な手続きを行えば、寺の改葬許可を得ずとも、自治体から改葬の許可が出る可能性もあります。
法的には、寺院が正当な理由なく改葬を拒否することはできません。
それでも、改葬の際には寺院側の考えや想いなどもくみながら、お互いが納得できる方法を探っていくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。