相続発生 遺贈や生前贈与についての『特別受益』ってなに?

22.07.05
業種別【不動産業(相続)】
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親が亡くなり、遺言書が残っていない場合、たとえば配偶者や子どもが相続人になることや、配偶者の法定相続分が2分の1であることは、知っている人も多いでしょう。
しかし、『特別受益』や『寄与分』に関しては、正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。
今回は特別受益に焦点を絞って、解説していきます。
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特別受益って何のこと?

たとえば親から子への相続の場合を例にみていきましょう。
子どもは、小さい頃からたくさん、親からの経済的な利益(日々の食事、オモチャ、習い事、学費など)を受けてきたことと思います。
ただし、こういった利益のすべてが、特別受益にあたるわけではありません。

民法903条1項には、特別受益とは、『遺贈』または、『婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本』として受けた贈与がそれにあたるとしています。
遺贈は、遺言によって自己の財産を贈与することで、自動的に特別受益に含まれます。

しかし、ここで複雑なのは『婚姻若しくは養子縁組のための贈与』と『生活の資本のための贈与』に何が含まれるかということです。
これは、一概に決めることはできず、実際には、その家庭の生活水準に照らして、個別に判断していくことになります。
たとえば、平均的な生活水準の家庭をモデルにして考えてみると、結婚式の費用については、一般的な結婚式であれば、その費用が特別受益に当たることは難しいとされています。
他方で、高額な結納金や支度金といったものは、『婚姻のための贈与』として認められやすいといえます。
また、大学進学費用についても、一般的な国内の大学であれば特別受益に含めることは難しいでしょう。
一方、高額な海外留学費用や医学部への進学費用を出してもらったのであれば、特別受益と認められやすくなるのです。


特別受益の計算方法とは

では、特別受益の金額が確定した場合、どのように個々の具体的な相続分を計算すればよいのでしょうか。

まず、遺贈以外の特別受益を、相続開始時の財産に加えます(特別受益の持戻し)。
この加えた財産を『みなし相続財産』といいます。
この時、遺贈については、もともと相続財産に含まれているので、改めて加える必要はありません。

民法の規定通りに分けるのであれば、このみなし相続財産に、それぞれの法定相続分を乗じて、みなし相続財産を前提とした相続分を計算します。
特別受益を受けた人については、この相続分から特別受益を控除した分が、具体的な相続分になります。

なお、特別受益を控除した際にマイナスになってしまう(特別受益が相続分を超えてしまう)場合、相続財産の取り分はなくなりますが、超過分を返還する必要はありません。
また、特別受益の持戻しについて、被相続人が、特別受益にあたる贈与を相続分の算定に含めない旨を遺言書に記載しているなど、持戻し免除の意思表示をしている場合には、特別受益の持戻しの計算をしないケースもあります。

このように特別受益に関しては、そもそも何が特別受益にあたるかという点が争点になり、仮に裁判で争うとなると、丁寧な主張・立証が必要となります。
被相続人の生前に贈与を受けたことのある人は、相続開始後にあわてないよう、その贈与が特別受益に該当するかの確認をしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年7月現在の法令・情報等に基づいています。