レストランのレシピの権利について知っておくこと

22.02.01
業種別【飲食業】
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近年の飲食業界では、レシピをコンテンツとして発信する『コンテンツビジネス』を手掛ける会社が増えており、飲食店においてもコンテンツビジネスに力を入れる店舗が増加しています。
YouTubeでは『人気シェフのうちレシピ』というカテゴリーの人気がありますが、それらは著作権に触れている場合、訴訟に発展する可能性もあります。
そこで今回は、レシピの権利関係について解説します。
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“レシピ=資産”という意識を持つ

料理本やインターネットなど、さまざまなメディアで料理のレシピ情報が多数公開されています。
なかには、『有名飲食店Xの秘伝レシピ!』など、作ってみたくなるキャッチコピーで紹介されているものもあります。
実は、料理のレシピ自体は“著作権の対象ではない”と考えられています。
しかし、本やブログなどで紹介されたものをコピーして第三者が無断で情報展開すると、著作権侵害に当たる場合もあるので注意が必要です。

飲食店にとってレシピは、集客や利益を左右する非常に重要な“資産”の一つです。
しかし、どんなに時間をかけて考案しても、それが著作物と認められない限りは損をしてしまうケースもあります。
たとえば、まったくの他人がレシピの詳細を知り、SNSなどで不特定多数へ発信してしまえば、最初にレシピを投稿した店舗にとっては“自店ならではのレシピ”とはいえなくなってしまいます。
仮に、店長Aが考案したレシピを自身のブログでPRし、集客を狙ったとします。
そのブログのレシピを見た第三者のBがアイデアを拝借し、自分の言葉を使ってSNSで同じ料理を発信したとしても、責任は問えないのです。

なぜなら、店長Aが表現する“ブログの文章”は著作物として認められるものの、レシピのアイデア自体は著作権の対象にはあたらないためです。
ただ、法的にはとがめられないにせよ、トラブルに発展するケースはあります。
自分が考案したレシピを守るという視点と同様に、他店のレシピの取り扱いについても配慮が必要です。


スタッフ個人が自店レシピを公開するのは?

材料や料理法を明記しただけのレシピが法的な保護対象にならない一方で、『レシピ動画』や『レシピ写真』は著作物として扱われます。
仮に、スタッフAが個人的にYouTubeで『Xシェフの一品』と題し、自店のレシピを基に調理している動画を撮影し、完成写真のみXシェフが実際に作って撮影した写真を使用したとします。
この場合、“Xシェフの”と知名度を利用しながらも、動画内で調理しているのはスタッフAであることから、視聴者に誤解を招くという危険性があります。
また、無断でXシェフの著作物である料理写真を動画内で使用しているという点にも注意が必要です。

法的責任が問われる場合、民事上では差止請求や損害賠償請求、不当利得返還請求を受ける可能性が高まります。
さらに、最悪のケースでは、告訴された場合、刑事上の法的責任として10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金を科せられることにもなりかねません。
他店のレシピを自店のサイトにアップする場合も、同様のリスクが生じます。
ルールが契約書の範囲外で法的な問題が発生せずとも、レシピ考案者を尊重し、道徳的な判断を行えるスタッフ教育も重要です。


『特許』や『商標登録』を適用する手順

料理人にしてみれば、売上につながることを期待して時間をかけて考案したレシピが、瞬時にSNSで拡散されてしまったとしたら残念な気持ちになるはずです。
そのようなときに泣き寝入りをしないためにも、レシピを守る“特許”や“商標登録”についてきちんと理解しておきましょう。
1つのレシピを工場で大量生産する食品会社では、特許を出願することは珍しくありません。
もちろん、小さなキッチンで調理する町の飲食店でも特許化は可能です。

レシピが特許取得できる条件は、3つあります。

(1)誰が作っても同じものを作れる発明であること(再現性)
(2)世界中に、今まで知られていないレシピであること(新規性)
(3)創意工夫が高いレベルであること(進歩性)

さらにメニューを商標登録する場合は、テイクアウト商品であることが求められます。
店舗で提供するメニュー名には、商標登録が適用できません。
日本には、『きりたんぽ』(特許4391390)や、『寿司』(特許3059694)など、さまざまな料理の特許があります。
これらはすべて、特許期限というものがあり、20年程度で無効になる特許もあります。
申請する際には、その点もふまえておきましょう。
『特許情報プラットフォーム』で検索すると、さまざまなジャンルの特許情報が閲覧できます。

SNSの発展により、どんな情報も拡散されやすい時代です。
レシピの権利について理解を深め、自店の味はもちろん、他店の権利を尊重した行動をとっていきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。