広告に口コミを掲載する際、どんな内容でもOK?

21.08.10
ビジネス【企業法務】
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インターネットで簡単に情報収集ができるようになった現代では、消費者が何かを購入するとき、必ずといっていいほど口コミをチェックします。
企業の広告よりも、同じ立場の消費者からの口コミのほうが信用できると感じてしまう人も多いでしょう。
そこで、そのことがわかっている企業側が、口コミを自社製品の広告に掲載するケースも多くみられます。
しかし、口コミを広告に掲載するにあたっては、守らなければならないルールがあります。
今回は、口コミ広告の規制について説明します。
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『言いたいことを口コミに言わせる』のは危険

一般的に、商品の品質等について消費者が誤解して不利益を被らないように、広告表現にはさまざまな規制がされています。
代表的なのは、『景表法(景品表示法)』と『薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)』です。
これらの法律は有名なので、企業の担当者の方も、法律を守る必要性があるということは当然認識していることと思います。

ですが、口コミについてはどうでしょうか?
広告表現については規制を守らないといけないけれど、口コミについては何を書いてもOKと思っている担当者の方は少なくないようです。

というのも、企業の広告部分ではきちんと規制を守った表現を用いている一方、口コミ部分になると、とたんに明らかに違法な表現を多用する広告主がかなり多いのです。
どうやら、薬機法の制限があるからあまり攻めた表現を使うことができない(「2週間でアトピーが治ります」などといえない)というジレンマを、口コミの形で解消しようとしている(「2週間でアトピーが治りました!」と消費者にいわせる)と考えられるのです。

このような形であれば、消費者が勝手にいっているだけだから問題ない、と考えているのかもしれません。


口コミも規制の対象であることに注意!

では、口コミというのは、本当に何を書いても問題ないのでしょうか。
答えは完全にNOです。

自社製品の広告に掲載する口コミというのは、当然にその広告の一部になっているので、ほかの部分と同様、法律の制限を受けます。
たとえば、化粧品や健康食品といったものについての広告は、医薬品と同様の効果があると誤解されては、消費者の健康等に危険を及ぼす可能性があるので、薬機法等によって規制されています。

さらに、“信用されやすいけれども主観的な感想に過ぎず、効能効果等の客観的裏付けにはなり得ない”という口コミ(使用体験談)の性質を踏まえて、化粧品等の適正広告ガイドラインでは、化粧品等の効能効果や安全性についての使用体験談の掲載を禁止しています。
つまり、通常の広告であれば認められる範囲での表現(化粧品の効能効果の範囲内)であっても、口コミの形で表現することは禁止されているのです。

いかがでしたでしょうか?
実は口コミは、何を書いても許されるどころか、通常の広告よりも厳格に表現の範囲が規制されています。

景表法も薬機法も、違反すれば厳しい制裁(措置命令、課徴金、懲役、罰金等)が科されるおそれがありますから、企業の担当者の方は、「口コミならOKだろう」という思い込みをまずは捨てましょう。
「むしろ口コミこそ危険」と認識したうえで、法律やガイドライン等を遵守して、適切な形で口コミを利用することが大切です。

消費者と広告主がそれぞれの立場から適切に口コミ広告に接し、消費者が本当に必要としている商品が、消費者の元に届くことが理想です。


※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。