突然、生活に困窮したら……? 生活保護制度について知っておこう

21.05.11
ビジネス【法律豆知識】
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昨今、コロナ禍の長期化などの影響で、失業や収入減に見舞われ、生活保護を受給する人が増えているといわれます。
『生活保護制度』は、会社に勤める人にはなじみがないかもしれませんが、突然何らかのトラブルに見舞われ、生活に困窮することがないとは言い切れません。
今回は、生活保護制度の概要と、生活保護受給中の収入の取り扱いについて解説します。
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生活保護制度とは、どのようなもの?

生活保護制度は、生活に困窮する人に必要な保護を行い、自立を助長するためにある制度で、保護を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

●預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などは売却して生活費に充てること
●働くことが可能であれば、その能力に応じて働くこと
●年金や手当など制度で給付を受けられる場合は、まずそれらを活用すること
●親族等から援助を受けられる場合は、援助を受けること

これらを満たしたうえで、世帯収入が最低生活費(厚生労働大臣の定める基準で計算される)に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。


生活保護受給中は収入申告をする義務がある

生活保護受給者に収入があった場合には、必ず自治体への連絡が必要です。
これは、生活保護法63条で定められている『費用返還義務』によるものです。

生活保護法63条(費用返還義務)
『被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。』

仮に、不正受給と判断された場合には、返還義務よりも強い、徴収がなされる可能性があります。
生活保護法78条1項によると、不正な手段で生活保護を受給した場合、自治体は不正受給者から生活保護費相当額を徴収できることとなっています。


交通事故による慰謝料は、収入にあたる?

では、たとえば交通事故による慰謝料は『収入』にあたるのでしょうか?

結論からいえば、YESです。
厚生労働省の『生活保護による保護の実施要領について』によれば、災害等によって損害を受けたことで臨時的に受ける補償金など、自立更生のために充てられる額以外は収入として認定されます。
つまり、交通事故の慰謝料は自立更生のために充てられる額には該当しないということになり、慰謝料を受け取ったら生活保護費相当額は自治体に返還しなければなりません。

とはいえ、受け取った金額の全額を返還する必要はありません
前述の生活保護法63条に『受けた保護金品に相当する金額の範囲内において、保護の実施期間の定める額を返金』とあります。
つまり、賠償金が少額だった場合(生活保護相当額のほうが賠償金よりも高額だった場合)は、受給した生活保護費の範囲内で返還するので、事故の慰謝料全額を返還するわけではありません。


生活保護の廃止・停止は慰謝料の額による

次に、多額の慰謝料を受け取った後も、生活保護が受け取れるかを考えてみましょう。

これは、受け取る金額の状況によっても変わってきますが、おおまかにいえば、生活保護費の半年分以上の金額を受給した場合は、生活保護がストップになる可能性が高いと考えらえます。
生活保護法の26条では『被保護者が保護を必要としなくなったときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し』としています。

生活保護費相当額の半年分以上でしたら廃止、そこまでに至らない場合が停止という見方が一般的です。
しかし、自治体によって異なりますので、住んでいる自治体に確認する必要があります。

これを読んでいる方は、生活保護の適用を受けることになる可能性は大変低いでしょう。
しかし、国の設けている制度を知っておいて損はありませんので、これを機会に生活保護制度について理解を深めておきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年5月現在の法令・情報等に基づいています。