厚労省の経営改善例を参考にした、医療経営の収益アップ方法

21.03.02
業種別【医業】
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コロナ禍により、医療経営をとりまく環境に厳しさが増すなか、少子高齢化を踏まえた介護事業への進出や、地域連携を活かした在宅医療への取り組みなど、赤字経営から脱却するための独自の経営改善策が求められています。
今回は、厚生労働省で公開されている、各病院の具体的な経営改善例を紹介しながら、病院の黒字化の施策について解説していきます。
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国内の病院全体の3分の2が赤字経営

厚生労働省による『医療施設動態調査』によれば、2019年10月時点での日本の医療施設数は病院だけで8,300施設以上にもなります。
都道府県別に見てみると、東京都が638施設でトップとなり、北海道、大阪と続きます。

一方で、病院の数に対して医療従事者の数は少なく、特にコロナ禍においては医療従事者不足が深刻な問題となっているのが現状です。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3団体による『新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査』(2020年度第2四半期)では、加盟する全病院(4,410病院)を対象としたメール調査の結果、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、赤字の病院はますます増えていることがわかりました。
赤字でなくとも、ギリギリの経営を強いられている病院は多く、病院経営者にとっては、病院の経営改善による黒字化が喫緊の課題となっているところも存在します。

しかし、経営改善といってもどこから手を付ければよいかの判断は、なかなか難しいものです。
医療経営コンサルタントに頼るという方法もありますが、成果を確約するものではありませんし、余計なコストをかけたくない場合もあるでしょう。

そこで参考になるのが、厚生労働省が取りまとめた『中小病院における経営改善事例』です。


黒字化の実例を参考に病院の未来を考える

厚生労働省では、病院経営を取り巻く環境が厳しくなってきていることを踏まえ、地域における医療ニーズへの対応、収益性・事業性の確保、医療サービスの質の向上といった視点から、過去の中小規模の病院における黒字化の成功事例を公表しています。

事例は、全て厚生労働省の研究事業などで調査した結果ということで、信頼性もあり、また、厚生労働省のホームページで簡単に誰でも閲覧することができます。

たとえば、地方のある病院の事例では、地域の高齢化に合わせて、介護療養病床を全て個室・ユニットケア化。
さらに社会福祉法人を設立し、医療法人とは別に特別養護老人ホームとケアハウスの運営をはじめました。
医療と介護の一体的提供を行う一方で、地域のニーズに合わせ、高齢者向けの医療や介護事業に特化させたことが紹介されています。

また、都市部のある病院の事例では、急性期病院としては病床過剰であるため、154床から49床へ大胆な病床削減(ダウンサイジング)を行いました。
地域の在宅医療へ進出したり、ダウンサイジングで余った土地に特別養護老人ホームを開設したりするなどの取り組みを行い、その結果、収益アップを成功させました。

ほかにも、独自のアイデアを打ち出して介護事業を拡大した事例や、専門分野への特化により差別化した経営改善の取り組み事例など、さまざまな経営改善案が紹介されています。

これらの黒字化の成功事例から見えてくるのは、少子高齢化社会を見据えた介護医療や在宅医療への転換、地域や状況に合わせた医療体制の改革などが、今後は重要になってくるということではないでしょうか。

厚生労働省の経営改善事例には、環境の変化に合わせて病院をよりよく経営していくためのヒントが詰まっています。
今現在の病院経営と照らし合わせながら、どのような施策が自分たちの病院に合っているかを考えてみてもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。