違法な処分に注意! 従業員に減給を課す際に知っておきたいルール

20.07.07
ビジネス【労働法】
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自社の従業員が問題行動を起こした場合に、懲戒処分としてその従業員の給与を減らす、いわゆる減給を行うことがあります。 
しかし、減給してよい金額や減給できる期間など、詳細を知る経営者は少ないのではないでしょうか。 
これらのルールを守らないで減給した場合には、違法とされ、懲戒処分が無効になる場合もあります。 
そもそも減給についての要件を知らないと、懲戒処分に該当しないケースなのに減給してしまっているという可能性もあります。 
そこで、従業員に減給を課す場合に知っておかなければならないルールを説明します。
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問題社員に課される四つの処分とは?

そもそも減給などを含む懲戒処分は、どのような状況で従業員に課すことができるのでしょうか。

懲戒処分とは、問題行動を起こした従業員に対する制裁の意味合いがあり、企業の秩序を守るためのものです。
しかし、実際に懲戒処分を課すには、さまざまな制約やルールがあります。
そのため、それらの条件を全て満たしていないといけません。

簡単に説明すると、懲戒処分を課すには、懲戒になる理由(懲戒事由)と該当する懲戒の種類などの規定を就業規則に定めていなければならないのです。
そのうえで、従業員に課す処分が客観的合理性と社会一般の常識に適っている必要があります。

ちなみに、従業員の問題行動とされるのは、機密情報の漏洩や故意の設備破損など、多岐にわたります。
会社側は、『この問題行動を起こした場合にはこの処分』というように、懲戒処分に紐付けた懲戒事由を就業規則などに定めておかなければいけません。

懲戒処分は軽い順から、従業員に始末書を書いてもらう『けん責』、賃金を減額する『減給』、一定期間出社させない『出勤停止』、会社と従業員間の労働契約を解消する『懲戒解雇』などがあります。
このほかにも口頭で注意する『戒告』や、役職を下げる『降格』などの処分もありますが、基本的には、『けん責』『減給』『出勤停止』『懲戒解雇』の四つの中から処分を選べば問題ありません。

会社はどの問題行動に対して、四つのうちのどの処分を課すかをあらかじめ決め、従業員に就業規則で周知させておく必要があります。


減給の限度額や期間とは?

では、賃金を減額するとなった際、どのぐらいの金額が適当なのでしょうか。
実は『減給』の額などは『労働基準法第91条』で定められています。
原則として1回の問題行動に対して、平均賃金1日分の給与の半額くらいが限度だとしています。
たとえば、問題を起こした従業員の月給が30万円の場合の1日の平均賃金は10,000円になりますので、1回の減給処分で5,000円くらいしか差し引くことはできません。
つまり、いくらその従業員に反省してもらいたいからといって、いきなり平均賃金1日分の給与の半額を大きく超えて減給することはできないのです。

また、期間については1回の問題行動で減給処分を課せるのは1回だけと定められています。
つまり、3カ月間や半年間、1年間の減給などはすることができません。

従業員が減給処分に定められた問題行動を起こした場合には、平均賃金1日分の給与の半額を差し引き、そこで処分は終わりにしましょう。
これらの期間や金額を超えての減給処分はトラブルのもとで、裁判に発展するケースもあるので、注意してください。

このほかにも、減給を課す際に注意したいのは、従業員の問題行動と減給という懲戒処分が釣り合っているかどうかです。

本当は減給ではなく、それよりも軽い『けん責』が適切であるなど、会社側の処分が重すぎることで従業員との間でトラブルになることは多くあります。

実際、過去の裁判では従業員の問題行動に対して、減給は重すぎるという判決が何例も出ています。
判決によって、処分が無効とされてしまうケースも少なくありません。
また、過去には減給の金額が高すぎたので、差し引かれた額を従業員側が請求してくるケースも存在しました。

ただ、これはあくまで一般の従業員の場合です。
取締役などの会社役員に関しては、労働基準法は適用されませんので、平均賃金1日分の給与の半額を大きく超える金額を数カ月に渡って差し引くような処分も可能ですし、自ら厳しい処分を受けることもできます。

会社側が従業員を減給するなどの懲戒処分を課す場合には、非常に慎重になる必要があります。
その問題行動に対する処分は減給でよいのか、減給額は法に則った正当なものであるのかなど、よく考慮してから、決断を下すようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。