人件費削減のため、他業務をスタッフに兼務してもらうには

20.06.30
業種別【歯科医業】
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新型コロナウイルス感染症により長く続いた緊急事態宣言に伴う休業や短縮営業の影響もあり、人件費を削減して経営を安定させたい歯科クリニックは多いのではないでしょうか。
そのためには、歯科衛生士などの専門職スタッフであっても、窓口業務やレセプト、さまざまな雑務などを兼務してもらう必要も出てきます。
そのような状況下で揉めないためにも、スタッフに幅広い業務に従事してもらうことについて、最初の雇用契約できちんと明記しておくことが大切です。
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特に対応に注意!職種限定契約の職種

新型コロナウイルス感染症の影響により、歯科業界でも収益が減収しました。
なかには、経営方針を見直すクリニックも存在します。
人件費削減を考慮して、これからは歯科クリニックとしても、職場の限られた人員で協力し合い、経営をサポートできる体制をつくっていけるとよいでしょう。
歯科クリニックは専門職スタッフの多い職場ですが、歯科衛生士などの有資格者であっても、診療所内の掃除、物品の在庫管理、時には窓口対応や患者への働きかけなど、業務を助け合うことで、よりよいクリニックづくりができます。
経営者である歯科医師にとっては、そうした業務内容が前提であっても、雇用される側にはそのつもりがない場合も多々あります。
歯科衛生士のような有資格者は、専門職としての自負をもって入職するので、「雑用をさせられる。こんなはずではなかった」と不満を持つ場合も少なくありません。

特に、配置換え(職種変更)となると、法的トラブルに発展しかねません。
雇用者の『権利の濫用』と見なされてしまう可能性があります。
入社の時に職種を限定して労働契約を結んだ場合には、本人の同意がない限り他の職種への職種変更命令はできないとされています。
歯科衛生士も、最初の労働契約内容によっては『職種限定契約』と判断されてしまいますので、募集や面接時の段階で、クリニック内のさまざまな仕事を担ってもらう旨を明確に説明しましょう。
 
たとえば、労働条件通知書などの『就業場所および従事すべき業務について』に幅広い業務を明示してあれば、それが労働契約時の条件となるので、被雇用者は受け入れざるをえません。 
ただし、その書面が、雇い入れ後に交付されたものであると、「面接時に口頭で確認した内容が本来の労働条件だ」と、被雇用者が主張できる可能性が出てしまいます。
そのため、面接時の段階できちんと仕事内容を説明し、情報提供することが重要なのです。
あらかじめ労働条件を書面化しておき、被雇用者と共有しましょう。


『労働条件通知書』を作成しておこう

『労働条件通知書』とは、賃金、労働契約の期間や、就業の場所、従事する業務の内容などの労働条件を書面にして労働者に交付した書類です。
会社と労働者双方が署名・捺印したものが『労働契約書』『雇用契約書』であるのに対し、『労働条件通知書』は労働者の署名および捺印は必要ありません。
しかし、記入する労働条件は同一の内容です。
労働条件通知書は、採用後のトラブルを防止するためにも、大切な書類です。
2019年の労働基準法改正により、従業員が希望する場合には、雇用者がその書面をFAXやメール、SNSで送信することも可能になりました。
 
労働条件通知書の書式は自由ですが、下記の事項を明示しましょう。
歯科クリニックにおいて幅広い仕事に従事してもらう場合、(2)を確認しあうことがもっとも大切になります。

(1)労働契約期間
(2)就業場所および従事すべき業務について
※従事すべき業務の内容については、限定するような書き方を避けましょう。
具体的な業務内容は口頭で説明したとしても、明文化においては幅を持たせた書き方が望ましいといえます。
記載例:診療業務・補助やその他の雑務
(3)始業・終業の時刻、休憩時間
(4)休日について
(5)休暇について
(6)賃金について
(7)退職について
(8)その他
※社会保険の加入状況、雇用保険の適用の有無、労働者に負担させるべきものに関する事項、安全および衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項、表彰および制裁に関する事項、休職に関する事項等を、制度として設けている場合に記入します。

雇用入れ時に口頭で労働条件を取り交わし、あとから『言った言わない』の揉め事に発展するケースもあるそうです。
きちんと明文化することで揉め事を未然に防ぎ、スタッフが気持ちよく働けるクリニック運営を目指しましょう。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。