介護現場における『週4日正社員制度』の導入は有効?

20.06.30
業種別【介護業】
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高齢化社会に伴い、介護業界の人手不足も深刻な問題となっています。
そのため、『働き方改革』のなかで、長時間労働の是正が推進されているにもかかわらず、残業せざるを得ない状況にある従業員の労働時間を調整することや、希望に沿った出勤シフトを組むことが困難になっています。
しかし、だからこそ、正社員に対して週休3日や4日という勤務形態を取り入れることによるメリットは大きいのです。
今回は、介護業界では難しいと思われがちな、『週4日正社員制度』について考えてみましょう。
週4日
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勤務時間の短縮も難しい現在の介護業界

労働基準法では労働者の労働時間について『1日8時間、1週40時間』までと定めています。
そのため、正社員は1日8時間で週5日勤務する『フルタイム勤務』が大半です。
しかし、法律で定められているのは所定労働時間の上限であり、正社員の勤務時間を何時間にしなければならないというルールは存在しないため、週に3日や4日の勤務であっても、会社が定めた正社員の基準に合致するのであれば、『正社員』として働くことは可能です。
最近では、2019年4月に施行された『働き方改革関連法』の後押しもあり、短時間勤務や週4日勤務等の勤務形態を認め、多様な働き方制度を導入する会社も増えてきました。
しかし、そういった柔軟な勤務形態は、介護業界ではまだまだ普及しているとは言いがたいのが現状です。

厚生労働省の『平成31年就労条件総合調査の概況』によると、全企業を対象にした週休制の取り方について『何らかの週休2日制を採用している』と答えた会社は82.1%ですが、完全週休2日制となると44.3%にとどまっています。

では、この結果を福祉・介護サービス業界に絞って考えてみるとどうでしょうか。
現状の介護施設では、利用者の増加傾向や従業員の業務量の多さなどから週休2日制にするのは容易ではありません。
慢性的に介護スタッフが不足しているため、パート従業員などが休みのときは、正社員が業務をカバーしなければならず、「どのスタッフも十分な休みがとれていない」というのが大半ではないでしょうか。


忙しいからこそ、多様な勤務体制が功を奏す

介護業界は他の業界と比較すると有給休暇の取得率も低い傾向にあり、その理由としては、「仕事量が多くて休みづらい」や「周囲に迷惑をかけるから休めない」という声があがっています。
正社員に負担が集中する勤務体系が続くのでは、『ストレスによる精神的な疲弊』や『モチベーションの低下』などが原因になり、退職者の増加を促すだけで労働条件の改善には一切つながりません。
正社員に負担が集中した結果、退職者が増加し、残された正社員にさらに負担が重くのしかかるという悪循環にはまることも考えられます。
そのような状況を避けるためには、根本的な制度改革が必要です。
その一つが、『週4日正社員制度』などの多様な働き方を推奨する制度づくりです。

特に若手の介護スタッフのなかには結婚・出産を機に一旦離職している方も多く、多様な働き方を推奨することにより、「フルタイムの勤務は難しいが週3~4日程度なら勤務できる」という方の採用を促進できる可能性が広がります。
長時間勤務の従業員の負担を減らすためにも、一人あたりの稼働時間を短縮して人材を増やすことも、働きやすい職場づくりの一つといえます。
このように週4日正社員制度には、『プライベートの充実』『生産性や質の向上』『離職率の抑制』などの効果が期待できるのです。

新型コロナウイルス感染局面が終息に向かうなか、介護現場では施設の利用希望者も増え、介護スタッフの早急な確保が必要となるでしょう。
その対策の一つとして正社員の『週4日正社員制度』などの根本的な働き方改革を検討されてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。