海外法人が日本に進出する際の形態はどれを選べばよい?

20.03.31
業種別【不動産業(登記)】
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Appleやマクドナルドなど、海外に本社を持つ法人が、日本でビジネスを展開するために日本に拠点を置くケースは数多くあります。 
実は、一口に海外法人が日本でビジネスを展開するために拠点を置くといっても、『駐在員事務所』『外国会社の営業所(支店)』『日本法人』という3つの方法があるのです。 
そこで今回は、それぞれの手順をはじめ、特徴やメリットなどを紹介します。
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海外法人が日本に進出するための3つの方法

(1)駐在員事務所
海外から日本に進出する際、営業活動に適した地域に拠点を持つことは大切です。
また、工場や倉庫を持って営業活動をするような事業の場合は、拠点との動線も考えなければなりません。
さらに、日本での事業がうまくいかなかった場合は、早期に撤退できるようにしておきたいところです。
このように、トライアルの意味で日本に拠点を置くのに適しているのが駐在員事務所です。
これは、日本において継続取引に該当しない範囲で活動を行うため、法令に規定のないビークルです。
ビークルとは、本社や主たる事務所が外国にある会社等が、日本で企業活動を行うために設置または設立する事業体を指します。

駐在員事務所の活動として許容されるのは、
1.本国の会社等への報告等の情報提供活動
市場調査や営業活動前の基礎研究
本国の会社等のための資産購入、保管など
と解されています。
駐在員事務所は、企業にとって、マーケティング等の日本進出の事前準備をするためのものなのです。

駐在員事務所の登記は例外なく必要ありません
また、届出は原則必要ありませんが、従業員の給与を日本で支払う場合、税務署に『給与支払報告書』を提出する必要があるなどの例外はあります。
なお、撤退や移転も身軽にできます。
ただし、駐在員事務所の名義では銀行口座の開設やオフィスの賃借契約締結などはできません。
駐在員事務所の役割としては、あくまでも外国会社の営業所や日本法人の設立に向けての準備段階といえます。

(2)外国会社の営業所(支店)
日本法人を設立すると別法人になりますが、外国会社の営業所を設立する方法もあります。
外国会社の営業所を作るときには登記が必要ですが、法人の設立に比べると手続きも簡易ですみます。
また、駐在員事務所と違って支店名義で銀行口座も開設することができますし、不動産の賃借も可能です。

(3)日本法人
海外法人とは別個の法人格を持ち、単独で意思決定を行いながら日本で活動するのであれば、日本法人が適しています。
日本法人を設立する際には、会社法に定められている形態に従って合同会社・株式会社・合資会社・合名会社の中から法人形態を選ぶことになります。
この際、有限責任である株式会社と合同会社が選ばれることがほとんどのようです。


外国会社の営業所と日本法人の違いとは?

日本でビジネスを展開していくためには、外国会社の営業所(支店)を設立するか日本法人を設立するかの2つの選択になります。

この2つの大きな違いは意思決定の主体であるかどうかです。
この違いが各種違いに派生します。
駐在員事務所や外国会社の営業所は、本国の会社等として直接責任を負いますが、日本法人の場合は、本国の会社等は、株主や出資者等として責任を負うにとどまり、具体的にどの程度責任を負うかは、設立する日本法人の種類に拠ることとなります。
また、PE(Permanent Establishment=恒久的施設)認定がされなければ日本で課税されることもありません。

一方、日本法人は海外法人とは別の法人格を持って活動します。
デメリットとしては『日本で法人税などが課税される』『海外法人とは別に会計処理が必要になる』など煩雑なことが増えることがあげられます。
しかし、『日本法人を設立したほうが許認可を取りやすい』『日本でのビジネスがやりやすくなる』などのメリットがあり、業種によってはメリットがデメリットを上回ります。
そのため、業種や許認可の有無、意思決定の主体など、さまざまな観点から外国会社の営業所にするか、日本法人にするかを選択する必要があります。


登記の際の手続きとは?

それでは、登記手続きを行うにはどうすればよいのでしょうか。

まず、駐在員事務所に関しては、そもそも登記は必要ありません。

次に、外国会社の営業所は独立した法人格を持っていません。
そのため、設立時には定款の認証などの手続きは必要ありません。
ただし、海外法人が存在しているという証明は必要となります。

営業所設置の登記申請には、次の書面を添付しなければなりません。
(1)本店の存在を認めるに足りる書面
(2)日本における代表者の資格を証する書面
(3)外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面
(4)公告方法の定めがあるときには、これを証する書面

これらの要件を満たす書面として以下があげられます。
・海外法人の定款
・任命書や契約書など、日本における代表者の資格を証明する書類
・設立証明書
・登記証明書
・公告方法についての定めを証明する書類
・宣誓供述書
・上記の書類の日本語訳文
など

また、登録免許税として9万円以上の金額がかかります。

最後に、海外法人が日本法人を設立する場合については、基本的に通常の日本法人の手続きと同じ書類が必要となります。

海外法人が日本に拠点を作る際には『駐在員事務所』『外国会社の営業所』『日本法人』といった方法があり、それぞれに特徴があります。
顧客の企業がどのようなビジネス展開を望んでいるのかをリサーチしたうえで、提案するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。