介護職員の高齢化対策として、若年スタッフを雇用する方法とは?

19.12.03
業種別【介護業】
dummy
少子高齢化が進み、介護を必要とする高齢者がますます増える一方、介護現場の人材不足が深刻化しています。
さらに問題視されているのは、介護職に就く若者が少なくなり、スタッフの間でも高齢化が進んでいるということです。
このまま放っておくと、10年後、20年後の高齢者は介護サービスを受けられなくなる可能性があり、介護業界で働く人にも、そうでない人にも、深刻な問題です。
若年スタッフを雇用し、人材不足を解消するには、どうしたらよいのでしょうか。
dummy
60歳以上の介護スタッフは2割超え

公益財団法人介護労働安定センターが実施した『平成30年度 介護労働実態調査』の報告結果によると、介護サービスの人手に関して『大いに不足』『不足』『やや不足』と答えた事業所は全体の67.2%でした。
この数字は5年連続で増加しており、多くの事業所で人手不足が深刻化しているという実態が窺えます。
さらに、同調査では、65歳以上の介護スタッフの割合は12.2%、60歳以上は21.6%であることもわかりました。
60歳以上の介護スタッフの割合を5年前と比べると、4.2%の増加です。
過去5年間、毎年増加を続けており、着実に高齢化が進んでいることは明らかです。
今後もますます高齢者スタッフの割合が増加すると見込まれ、『老老介護』の状態に突き進んでいるといえます。
老老介護とは、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護することで、核家族化が進行した現代社会が抱える大きな課題です。
介護現場でも、老老介護は人材不足と併せて深刻な問題となっています。


止まらない若年層の“介護業界離れ”

さらに介護現場が直面している問題としてあげられるのが、20代以下の若年スタッフの割合が非常に少ないという現状です。
『平成30年度 介護労働実態調査』の報告結果によると、20代以下のスタッフは9.6%で、全体のわずか1割程度にとどまっています。

このような若年スタッフの減少という状況に陥った原因としてあげられるのが、介護業界特有の『賃金』と『業務量』との不均衡なバランスです。
介護業界の給与水準は、ほかの業界の給与水準と比較して低いといわれています。
高齢者介護は精神的・肉体的な負担が大きい業務のため、少ない『賃金』に対する『業務量』の多さという現状が若年スタッフの不満やストレスにつながり、介護業界離れに大きな影響を与えているのではないかと指摘されています。
この対策として、厚生労働省は介護スタッフの賃金の改善のためにお金を支給する『介護職員処遇改善加算』を実施するなど、少しずつ改善は進んでいるようです。
しかし、ほかの業界の給与水準と比較すると、まだまだ低い部類から抜け出せているとはいえません。

時間外労働が常態化するなど『業務量』が多く、さらにいえば、年次有給休暇や休日がまともに取りにくいという点も大きな問題ではないでしょうか。
人材不足に苦しむ介護スタッフにとって、ゴールデンウイークや年末年始に、まとまった連休を取ることは簡単ではありません。
通常の営業日でも、先輩スタッフに遠慮して、年次有給休暇を申し出ることもできないという声もあります。
このような状況が続けば、若年スタッフの不満やストレスはますます募るでしょう。
その結果、中高齢介護スタッフの負担は増え続け、将来のリーダーを育成することすらできなくなってしまいます。

『介護業界の人材不足』は、非常に難しい問題です。
業界全体ではネガティブイメージ払拭に向けた宣伝活動や介護ロボットの実用化などが進められていますが、各々の事業所でも今すぐできることはあります。
たとえば、曖昧になりがちな仕事のフローを明確にすることで、生産性が上がって業務負担が減少する効果が期待できます。
また、教育体制を整備することで、若年スタッフが段階的にキャリアを積み、介護業界に将来像を描くことも可能になります。
ストレスケアとして、若年スタッフが悩みを相談できる場を設けることも大切です。
必要に応じて、面談や産業医の診察を受けてもらうことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

人材不足に手をこまねいて日々の業務に忙殺されている現状を打破するためには、少しずつでも改善していく姿勢が大切です。
若年スタッフが将来に希望を持てるような、魅力ある介護事業所を目指してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。