人事の最適化に役立つ『ピープルアナリティクス』を取り入れる

19.08.27
ビジネス【人的資源】
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会社で働く従業員のさまざまなデータを集積・分析し、その結果を組織づくりに活かす手法である『ピープルアナリティクス』。
従来よりも、効率的に組織づくりを行うことができるため、GoogleやMicrosoftなどの世界的大企業でも取り入れられています。
今回は、この『ピープルアナリティクス』について、実例と共にご説明します。
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人材のビッグデータを分析し最適解を導く

多くの企業が市場の動向や、顧客のニーズを掴むために、さまざまなデータを収集・分析し、商品開発やサービスの向上などに役立てています。
これらのデータは『ビッグデータ』と呼ばれ、今や、企業の業績を伸ばすためには欠かせないものになっています。

このノウハウを自社の人材管理に役立てる『ピープルアナリティクス』は、いわゆる人材マネジメントの一つです。

これまでは、社員の評価や育成、社員の配置・異動や昇進などはもちろん、新規人材の発掘や離職の予防から、従業員の満足度の向上や研修内容の最適化まで、すべての人材に関する決定を人事部やその部門の上長などが担ってきました。

当然、これらの決定の際には、その対象となる社員の経験やこれまでの成果なども加味されますが、判断するのが人間のため、どうしても『感情』や『勘』などの不確かな要素が入り込んでしまいます。

それらを取り除き、AIなどを使用して、純粋に自社の人材にまつわるビッグデータだけで客観的に判断できるのが、『ピープルアナリティクス』です。

この手法を導入することで、ある事業に関して、これまで埋もれていた最適な人材を見つけることが容易になったり、個人に最適な研修や人材育成を行ったりすることができるようになりました。


企業の『ピープルアナリティクス』導入例

ここで『ピープルアナリティクス』を導入している企業の例を紹介します。

たとえば、Googleでは以前は、各自が好きな席に座って仕事をしていました。
しかし、『ピープルアナリティクス』の導入後、全社員のデータを分析してみると、それぞれのプロジェクトを手がけているチームごとに集まって仕事を行ったほうが効率がよいという結果が導き出されました。
これに沿って、各チームで集まって仕事を行うようになったところ、チーム間のコミュニケーションが増え、結果として各チームがよりよいパフォーマンスを生み出すことができました。

また、Microsoftでは、従業員のキャリア形成に『ピープルアナリティクス』を利用しています。
従業員の能力にはばらつきがあるため、それぞれのレベルに応じたサポートが必要になってきます。
そこで、人材にまつわるビッグデータを分析し、個々に合わせた育成・研修を行い、それぞれに無理のないキャリア形成のサポートを実現しています。

日本でいち早く『ピープルアナリティクス』を導入したのは日立製作所です。
日立製作所では、2016年から人材の新規採用の現場において、社内の優秀なエース社員や過去の採用のプロセスなどのデータを分析し、自社にふさわしい“社員像”をつくり、それに沿った新卒採用を行いました。
つまり、ビッグデータを分析し、自社に必要な人材を明確にすることで、迷うことなく人材の確保を行えたというわけです。

このように、国内外を問わず、現在、多くの企業がこの手法を導入しています。
分析するためのデータは、社員の年齢やこれまでの勤怠、業績はもちろん、社員へのアンケート結果や性格などの人事データを基本に、メールのやり取りやネットの接続記録などのデジタルデータ、社員の位置情報や健康状態などの行動データ、さらに、会社の財務や営業データ、生産性にまつわるデータ、SNSなどの外部データなど、多岐に渡ります。

これらのデータを集約し、分析するのは、専用のAIソフトや、専門のコンサル会社です。
また、『ピープルアナリティクス』の協会や団体も発足し、それぞれで研究が盛んに行われていますし、専門の書籍もたくさん出ています。
まだ発展途上の分野ですが、今後の人材にまつわる意思決定の場において、主流となるのは間違いなさそうです。

科学的、効率的、客観的な組織づくりを行うためにも、『ピープルアナリティクス』の導入を検討したいところ。
まずは、導入のきっかけとして、専門の書籍を読んだり、各団体が開いているセミナーや講習会に参加したりして、理解を深めてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年8月現在の法令・情報等に基づいています。