期間延長された中小企業に対する税金の優遇制度とは

19.04.11
ビジネス【税務・会計】
dummy
2018年末に公表された平成31年度税制改正では、設備投資のための税制、法人税率の特例などの制度が延長されることに決まりました。 
これらの制度には、中小企業の経営の安定化を図るという目的があります。 
今回は、中小企業の経営者や経理担当であれば知っておきたい『税金の優遇制度の延長』について、ご紹介します。
dummy
税制改正で中小企業の法人税率の特例が延長 

平成31年度税制改正において、中小企業の経営者が最も注目したのが、『法人税率の特例の延長』ではないでしょうか。 
法人税とはその名の通り、法人が、何らかの事業を行って得た、各事業年度の所得に課税される税金のことです。 

税率は会社の規模によって異なり、資本金が1億円を超えるいわゆる大企業や、資本金1億円以下の中小企業であっても年800万円を超える所得があれば、税率は23.2%になります。 

また、中小企業において、年の所得が800万円以下であれば19%に定められています。しかし、現在は法人税率の特例によって、この19%が15%に減額されており、さらに今回、この特例の適用期間が2021年3月31日まで延長されることが決定しました。 
中小企業は所得を800万円以下にしておけば、15%の課税で済むというわけです。 

ちなみに、個人事業主に年800万円の所得があった場合は、所得税率が23%になるので、所得税と法人税だけを見れば、法人化してしまったほうがいいことになります。ただし、法人の場合はほかにも、地方法人特別税や法人事業税、法人住民税なども課せられるので、複合的な判断が必要になります。 


設備投資で税額控除か特別償却を受けられる 

さらに今回は、企業が設備投資を行った場合に、取得価額の30%の特別償却か、もしくは7%の税額控除を受けられる『中小企業投資促進税制』も2021年3月31日まで延長されることになりました。 

この税制は、中小企業における生産性の向上を目的とした設備投資を促す狙いがあり、対象は資本金1億円以下の中小企業か、もしくは従業員数1,000人以下の個人事業主に限られます。 

また、対象の設備にも条件があり、たとえば機械であれば1台160万円以上や、測定工具や検査工具であれば、1台120万円以上か、もしくは複数合計が120万円以上かつ1台30万円以上という金額面の取り決めがあります。 

しかし、これらの条件さえクリアすれば、税制の優遇を受けることができます。 
個人事業主や、資本金が3,000万円以下の中小企業であれば、30%の特別償却か、もしくは7%の税額控除を選ぶことができ、資本金が3,000万円超の中小企業であれば、30%の特別償却のみとなります。 

特別償却とは、通常の償却限度額に、その設備の基準取得価額の30%相当額の『特別償却限度額』を加えることができるというもので、設備の購入資金の多くを経費として計上できるというメリットがあります。 


まだまだたくさんある! 延長された優遇制度 

ほかにも、設備投資に関する優遇制度の延長がいくつかあります。 

商業やサービス業に従事する中小企業が、経営改善指導などに基づいて1台60万円以上の建物付属設備や、1台30万円以上の器具や備品を購入した際に、取得価額の30%の特別償却か、もしくは7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人または個人事業主のみ)を受けられる『商業・サービス業・農林水産業活性化税制』も延長が決まりました。 

また、『中小企業等経営強化法』に基づく『経営力向上計画』の認定を受けた設備投資について、1年で全額を損金に計上できる『即時償却』か、もしくは特定経営力向上設備等の取得価額の7%相当額(特定中小企業者等においては10%)の税額控除のどちらかが適用される『中小企業経営強化税制』なども延長されることになりました。 

さらに、設備投資以外でも優遇措置の延長が決まっています。 
『中小企業技術基盤強化税制』は、中小企業における試験研究費の12%にあたる額を法人税から控除するという制度ですが、試験研究費を一定の割合で増加させた場合には、最大で試験研究費の17%を上乗せ措置できます。この上乗せ措置の適用が、2021年3月31日まで延長されることになりました。 
さらに、法人税額の控除の上限に対しても、25%だったものが、試験研究費の増加割合が8%を超えた場合は、控除の上限を10%上乗せすることが可能で、こちらの上乗せ措置も、2021年3月31日まで延長されます。 

多くの優遇措置が延長された今回の税制改正。そこには中小企業への設備投資や経営強化を促すという狙いがありました。これらの制度をうまく利用し、強固な経営体制を築いていきましょう。 


※本記事の記載内容は、2019年4月現在の法令・情報等に基づいています。