部下が上司を威圧! 会社は『逆パワハラ』をどう防ぐ?

26.08.11
ビジネス【労働法】
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職場でのハラスメントといえば、一般的には上司から部下に対して行われるものをイメージしがちです。
しかし、部下から上司に対する威圧的な言動も、パワーハラスメントに該当する場合があります。
2026年4月には、大阪府内の市役所で部下が上司を大声で責め立てたり、机をたたいて威圧したりする行為がパワーハラスメントとして認定され、懲戒処分が行われました。
厚生労働省の指針でも、部下の言動がパワーハラスメントに該当し得ることが示されています。
事業者は、いわゆる部下から上司への「逆パワハラ」について、理解を深めていきましょう。

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役職上の上下だけではない優越的な関係とは

企業におけるハラスメント対策は、年々強化されています。
現在、企業にはパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント、育児・介護休業等に関するハラスメントなど、さまざまなハラスメントに対して、雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられています。
これらは企業規模を問わず、すべての事業主が対応しなければならない課題といえます。

さらに、改正労働施策総合推進法によって、2026年10月1日からはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策や、求職者等に対するセクハラ対策も事業主の義務となります。
企業は、こうした社内外における多様なハラスメントから労働者や求職者等を守るための体制づくりを進めなければなりません。
しかし、企業の対策から漏れてしまいがちなのが、部下から上司に対して行われるパワーハラスメント行為、いわゆる「逆パワハラ」です。
なお、「逆パワハラ」は法律上の正式な用語ではなく、部下から上司に対するパワーハラスメントを示す一般的な呼称です。

ハラスメント対策の研修などでは「上司が部下に気をつけるべきこと」に焦点が当たりがちですが、実態はそれだけではありません。
2026年4月には、大阪府内の市役所において、上司を厳しく責め立てるなどのパワーハラスメントを繰り返したとして、部下の職員が懲戒処分を受けるという事案が公表されました。

職場におけるパワーハラスメントの定義は、「優越的な関係を背景とした言動であること」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること」「労働者の就業環境が害されること」の3つの要素を満たすものと定められています。
一見すると、部下から上司への行為は「優越的な関係」に基づいていないように思えます。
しかし、職務上の地位だけが優越的な関係を決定づけるわけではありません。

厚生労働省の指針では、同僚や部下による行為であっても、優越的な関係が成り立つケースを明確に示しています。
その一つとして、部下が業務上必要な知識や豊富な経験を持っており、その部下の協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難である場合があげられます。
たとえば、専門性の高い部署などで、特定の技術を持つ部下が、異動してきたばかりで実務に不慣れな上司に対して「こんなこともわからないのか」と威圧的な態度をとるような状況などが、これに当てはまります。
上司は業務を進めるためにその部下を頼らざるを得ず、力関係が逆転してしまうというケースです。

また、同僚や部下が集団で行う行為で、抵抗や拒絶が困難な場合も優越的な関係に該当し得ます。
たとえば、部下たちが結託して特定の上司の指示を無視したり、情報を共有しなかったりするケースです。
このように、知識や経験、あるいは人数の多さといった要素が、職務上の地位を超えた事実上の優位性を生み出すことがあります。

ハラスメントの要件をあらためて周知する

逆パワハラを防ぐために、企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。

まず、業務上の指示や注意、指導の経緯を客観的に記録することが重要です。
上司が部下を指導した際の日時、場所、指導内容、そして部下の反応などを客観的に記録しておくことで、のちに双方の主張が食い違った場合でも、事実関係を確認するための材料になります。
ただし、記録は部下からの申し立てに反論するためだけではなく、指導の内容や方法が業務上必要かつ正当なものであったかを検証する目的でも活用することが大切です。

また、社内規程を整備する際にも、逆パワハラの可能性を考慮しましょう。
加害者が上司に限定されないこと、部下から上司への不適切な言動も事実関係や行為の程度によっては懲戒処分の対象になり得ることを明確に記載し、全従業員に周知します。

同時に、社内研修の実施も欠かせません。
研修を通じて、ハラスメントは役職に関係なく発生し得るものであるという共通認識を社内に浸透させます。
部下には「自分の言動もハラスメントになり得る」という自覚を促すとともに、上司には「部下からのハラスメントに悩んだら我慢せずに相談してよい」と伝えましょう。
また、業務上必要かつ相当な指示や指導まで、直ちにパワーハラスメントになるわけではないこともあわせて説明する必要があります。

上司は立場上、「部下のことで相談するのは恥ずかしい」「自分のマネジメント能力を疑われるのではないか」と悩みを抱え込んでしまいがちです。
相談窓口を設置し、役職にかかわらず誰でも利用できること、相談者や行為者等のプライバシーを保護すること、相談したことを理由とする不利益な取り扱いを行わないことを周知し、上司が一人で問題を抱え込んで孤立しないような環境をつくることが求められます。

相談を受けた後は、一方の主張だけで判断せず、関係者への聞き取りや記録の精査を行い、迅速かつ公平に事実関係を把握することも重要です。
パワーハラスメントが確認された場合は、就業規則等に基づいて適切に対処するとともに、被害を受けた労働者への配慮や再発防止措置を講じましょう。

労働施策総合推進法上、事業主には職場におけるパワーハラスメントを防止するため、必要な措置を講じる義務があります。
ハラスメントは上司から部下への一方向にのみ起こるものではないという認識を持ち、全従業員が安心して働ける職場づくりを進めましょう。


※本記事の記載内容は、2026年8月現在の法令・情報等に基づいています。